ロザンの菅広文さんが書いた『京大芸人式日本史』 の進撃が止まりません! 受験生はもちろん、「日本史を学び直したい」と思っている大人の読者からも、「面白かった!」「日本史の流れがわかった!」との 声が届いています。続々重版を記念して、本書から一部抜粋してお届けします! まだ読んでいない人のために、ちょこっと公開。まずは、とにかく読んでみて ください!
次は、そんな貧富の差から生まれた集落を、それなりに1つにまとめた人物に会いに行きたかった。
卑弥呼さんだ。
卑弥呼さんは邪馬台国を治めた女王だ。
日本史のマンガを見ると、1巻か2巻の表紙に白い服を着た女性が描かれていることがよくあるが、あれが卑弥呼さんだ。本物もあのとおりだろうか?
さて、卑弥呼さんに会うためには、大きな問題が1つあった。
タイムマシーンの降り場所だ。
というのは、卑弥呼さんが今の北九州にいたのか、近畿にいたのか、定かではなかったからだ。
僕は自動販売機で飲み物を迷った時にするように、タイムマシーンのボタンを2つ同時に押した。自動販売機のボタンを同時に押す時、少しだけ自分の好きな方に力を入れてしまうのと同じように、卑弥呼さんにいて欲しいと自分が思った方のボタンを先に押してしまった……かも知れない。
240年に到着すると、子供の時に見たままの、図書館にあった日本史のマンガの1巻か2巻の表紙で見たままの、卑弥呼さんがいた。
やっぱり日本のマンガはすごいと思った。
「こっちにいたんですね?」
急に現れた僕に驚くこともなく、卑弥呼さんは言った。
「こっちって?」
僕は卑弥呼さんに、現代では、邪馬台国がどっちにあったのか(近畿か、北九州か)、はっきりしてないことを伝えた。
卑弥呼さんはそのことには驚き、僕に言った。
「あーそうなの? ずっとこっちにいますよ。そっちの場所は行ったことも無いわよ。戻ったら、みなさんにこっちにいるって言っておいてね」
卑弥呼さんっぽくはあるが、本当に卑弥呼さんかどうかまだ分からないので、本物かどうか確かめるべく質問をした。
「仲良くしている国ってあります?」
本物の卑弥呼さんならば、239年に魏の皇帝から「親魏倭王(僕? 僕は魏のえらいさんやけど、卑弥呼さんのことを日本のえらいさんに認定します。おめでとうございます)」の称号と印綬を受け取っているはずだった。
つまり金のハンコをもらっているはずだった。
「魏の国に、この前、使いを送ったわよ。魏は、呉と蜀と高句麗と仲が悪いから、私たちと仲良くしたいんだって」
良かった。
卑弥呼さんに間違いない。
調子に乗った僕は、卑弥呼さんに言った。
「少し前なんですけど、僕たちの時代で流行っていたギャグがあるんですよ」
僕は自分の髪の毛を両手で掴んで叫んだ。
「卑弥呼様!!」
残念ながらそのギャグをするには、僕の髪の毛はあまりにも短すぎた。
僕は左右の側頭部を押さえているだけの男だった。
ただ卑弥呼さんは爆笑していた。腹を抱えて笑っている。必死で笑いを堪えながら、卑弥呼さんは僕に言った。
「この距離でそんなに大きな声を出さなくても聞こえるわよ! 面白い人ね」
周りにいる、「男弟」と呼ばれる卑弥呼を守る男たちも、僕がやったのと同じように、一斉に側頭部を掴み《卑弥呼様!!》とやり出した。
ますます爆笑の卑弥呼さん。
「聞こえているわよ! ねえ、聞こえているわよ!」
どうやら「距離が近いのに大きな声で叫ぶこと」を、すごく気に入ってくれたみたいだ。
ウケた理由は予想外だったが、ウケたので良しとすることにした。
本記事は『京大芸人式日本史』(菅広文著)の全232ページ中24ページを掲載した試し読みページです。続きは単行本をご覧下さい。