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インタビュー「来年の目標は、365日のうち1日か2日、いい日があれば」

2014.12.06 公開 ポスト

むき身の生き方インタビュー

来年の目標は、365日のうち1日か2日、いい日があれば大宮エリー(作家 / 脚本家 / 映画監督 / 演出家 / CMディレクター / CMプランナー)

“むき身のエリー”とまわりの方から評されるという大宮エリーさん。自分を取り繕うことなく、生身のままで仕事にも人にも向き合う姿勢がそう名付けられた理由のようです。脚本、エッセイの執筆、CMディレクターに映画やミュージックビデオの演出など多才に活躍する大宮さんは、さぞ自信に溢れる方なのかと思いきや、実際は、求められることをただただ率直に誤魔化すことなく表現しつづけている方でした。「大きな目標を掲げない」「でも、まずはやっている」という大宮さんの話に来年につながる生き方のヒントが見えてきます。(構成:小西樹里)


逃げることも自分を守ること

撮影:網中健太 

——トークがうまくて、いつも話題が豊富。伝えたいことがたくさんある人なのだろうという印象ですが、去年は体調を悪くされていたんですね。

 去年10月頃に体調を崩して、精神的にも抜け殻のような感じになって、パソコンを開いても文字が頭に入ってこなくなってしまいました。初めての経験でした。それで創作はしばらく休んでいたんです。
 私、さぞかし想いを伝えたがりなんだろうと思われているかも知れないけど、その都度、依頼に応えるかたちでありがたくやらせていただいているので、「何かを表現したい」というのは全然ないんですね。昔いじめられっ子だったのもあって劣等感が強いのか、期待されたり必要とされたりすることがありがたくて、やりすぎてしまったのかも。たとえば、携帯のバッテリーがゼロになってから充電するとなかなか完了しないみたいに、人間って出しすぎるとちょっと休んでも全然治らないみたいで、気力だけでは体が動かなかった。休むって、すごく重要なんだなとわかりました。今年7月頃から本を出してライブや個展をやってとまたバリバリ働いているので、もとに戻っているんじゃないかという気もしていますけど(笑)。

——落ち込んでいたときにはどのように過ごしていたのでしょうか?

 ある人に「自分を大事にしないとダメだ、自分のことを大事にできない人は人のことも大事にできない」と言われました。それまでは自分のことを考えるってわがままなことだと思っていたけど、30歳も後半になって、自分を愛するとか大事にするってどういうことなんだろうと悩んじゃいました。これといった趣味はないし、旅行は好きだけど、いつも次に行きたいところがあるわけではない。わりとお風呂が好きかなと思ったので、ゆっくりつかるようにしたり、バスオイルを選んでみたり、ボディクリームをいただいたのでお風呂上がりに塗ってみたりと初歩的なことからはじめました。
 自分を大事にするって自分にしかできないから、自分が自分を守ってあげないといけないですよね。この体験をもとに『思いを伝えるということ展』という個展で「逃げることは自分を守ることだし、うしろ向きは前向きなことなんだ」と書いたのですが、それを見て泣いている人がいました。私と同じように身を粉にして働いている人とか、いつも人の気持ちを優先しちゃったりしている人ってきっとたくさんいるんですよね。そういう人を見ると、話を聞かなくても、つらいんだろうなということが伝わってぐっときちゃうんです。

ライブの場がひとつになる感覚が忘れられない

——12月13日の一夜限りのステージ『物語の生まれる場所 at銀河劇場』は、これまでに発表してきたことの集大成になるのでしょうか?

 体調を悪くして、どうやったら気力が戻ってくるのかと悩んでいたとき、ミュージシャンの友だちから「小さなライブをしてみたら? 元気が出てくるんじゃない」と言われたんです。
 個展は私がその場にいないこともありますが、ライブは来てくれた人たちと場を作り上げる空間ですよね。それじゃあ試しにと40人くらいの前で、『思いを伝えるということ展』や『星空からのメッセージ展』の中から私が朗読をして、おおはた雄一君が音楽を演奏するというイベントをやらせてもらいました。そしたら泣かれている方が多くて、気持ちがすっきりしたとか、悩んでいたことが晴れたというふうにおっしゃってくださった。そのことが自分の心の掃除にもなったし、場がきゅっとひとつになる感覚が忘れられなくて。おおはた君の曲を聴きながら即興で物語を作るときのハラハラ・ドキドキ感や、来てくれた人たちがいなかったらできなかったことができたというおもしろさで、自分の気持ちも癒されました。
 それから朗読と音楽のセッションライブを200人くらいの規模で何度かしたんですけど、チケットが完売で取れなかったと言ってくれた人もいたので、もう少し大きなところでやった方がいいのかなと思っていました。おおはた君、芳垣安洋さん、栗コーダーカルテット3/4さんとそれぞれ一緒にやらせてもらう機会があったのですが、今回のメンバーで一緒にライブをするのは初めてです。それをいろんな人に見てもらえたらいいなと思っています。

——舞台というよりもライブというイメージでしょうか?

 音楽のライブともまた違うし、照明も作り込んでいるから舞台といえば舞台だし……だから朗読と音楽のステージという感じです。おもしろいものを期待している人もいるので、漫談的なものもあったりするかも。音楽がいちばん自分の内面が出るものだと思うから、前は即興なんて恥ずかしくてできなかったんですけど、最近は音を聞くとぱっと合わせられるようになりました。これでしか表現できない、伝えられないものがある。
 朗読を始める大もとのきっかけになったことに、ブック・ディレクターの幅允孝さんの朗読イベントに出演させていただいたことがあります。それまでは朗読会ってあまり好きじゃなかった。でも自分で書いたものを朗読するときは、ここはまくしたてる感じで、ここはゆっくりでというリズムがわかっているので、やってみたら聴いてくれている人たちの気持ちが何となくわかって、私の朗読を聴いて重なる想いがあったんだということが伝わった気がしました。
 私、親が共働きだったので、石坂浩二さんの「こーじおじさんのお話袋」というレコードを聴いて育ったんです。石坂さんの朗読や音楽がある中で言葉が音声にのって入ってくるのがすごく心地よかった。言葉にはリズムがあって言葉も音楽ですよね。だから朗読は、自分の中では新表現だったというか、生のステージでお客さんの前で朗読したり、バイオリンを弾いたりするというのは、何かが循環しているという感じなんです。でも自意識過剰なのか、毎回緊張してしまって「いつになったら慣れるんだ」とウザがられるんだけど、「やだやだ」と言いながらも、みんなとぐっと一体化するのが好きなんですね(笑)。


流れやタイミングを信じている

——エッセーを読んでいると自分に自信があって前に進んでいるイメージがあったので、すごく意外な一面を知りました。

 自信があると思われることが多いみたいですけど、私、“むき身のエリー”と言われます(笑)。自分がこうなりたいというよりも、こういう場を作るのがいいんじゃないかという思いつきや、すてきなミュージシャンを知ってもらいたいという気持ちが自分を動かしています。
 流れやタイミングを信じているから計算はしない。直感を信じながらも、頭でよく考えると冷静になる自分もいます。心と現実があまりにもかけ離れているときは挑戦するときですね。思いつきが自信のなさとクラッシュして、衝撃を受けるということが日々ありますけど、多少失敗してもハラハラするほうがドラマチックでいいかなとも思っています。
 来年の目標を聞かれたときに、「1日か2日、いい日があればいいかなと思ってます」と言ったら、「目標が低い」と言われました(笑)。
 誰しも、よかれと思ってやっていたのに、はたと「自分でいいんだっけ?」と思うことがあったりしませんか。じっと諦めないでいると、あるときポンとクリアできたりする。それは元に戻るということじゃなくて、できなくなっていたAがまたできるようになったとき、AはCになっている。次のステージに行っているんですよね。やらなかったらゼロだけど、やりたいと思うこと自体大切なこと。
 今回、『物語の生まれる場所 at銀河劇場』は、朗読とライブという新しいジャンルの表現で、集まってくれた700人がぐっとひとつになったら楽しいなあと思っています。


<舞台告知>

物語の生まれる場所at銀河劇場
大宮エリーの朗読と、おおはた雄一(ギター、歌)、芳垣安洋(ドラム)、伊賀航(ベース)、栗コーダーカルテット3/4(リコーダーと吹くやつ色々)による演奏で、一夜限りのアナザー・ワールドへお連れします。

日時 : 2014年12月13日(土)
【時間】開場17:00 / 開演18:00
会場 : 天王洲 銀河劇場
料金 : 全席指定 4,500円(税込)

★チケット取扱い
◎銀河劇場チケットセンター
 03-5769-0011(平日10:00~18:00)
◎銀河劇場オンラインチケット
http://gingeki.jp(PC・携帯)
◎チケットぴあ
 0570-02-9999(Pコード627-936)
http://pia.jp/t/ellie-ginga/(PC・携帯)
◎イープラス
http://eplus.jp/ellie-ginga/(PC・携帯)
◎ローソンチケット
 0570-084-003(Lコード33883)、0570-000-407(オペレーター)
 WEB受付はコチラ 、ローソン・ミニストップ店頭Loppi
主催:J-WAVE / 大宮エリー事務所 / 銀河劇場
お問い合わせ:銀河劇場チケットセンター 03-5769-0011(平日10:00~18:00)

 

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大宮エリー 作家 / 脚本家 / 映画監督 / 演出家 / CMディレクター / CMプランナー

1975年大阪生まれ。広告代理店勤務を経て、2006年に独立。映画「海でのはなし。」で映画監督デビュー。主な著書に、『物語の生まれる場所』(廣済堂出版)、『なんとか生きてますッ』(毎日新聞出版)、『思いを伝えるということ』『生きるコント』『生きるコント2』(文春文庫)、『思いを伝えるということ展のすべて』(FOIL出版)、絵本『グミとさちこさん』(講談社)。2008年、舞台の作演出として「GOD DOCTOR」(新国立劇場)、2009年に「SINGER 5」(紀伊国屋ホール)を発表。また、2007年よりテレビドラマの脚本、演出も手がけている。「木下部長とボク」「ROOM OF KING」「the波乗りレストラン」「デカ黒川鈴木」(脚本のみ)、「三毛猫ホームズの推理」(脚本のみ)、「おじいさん先生」(演出のみ)、「サラリーマンNEO」(脚本参加)。2012年より来場者が参加する体験型個展を数々発表。「思いを伝えるということ」展(渋谷PARCO MUSEUM、札幌PARCO、京都FOIL GALLERY、せんだいメディアテーク)、2013年より「A House of Love」(表参道EYE OF GYRE) 、「生きているということ」展(渋谷PARCO MUSEUM)、「大宮エリー展」(東京gggギャラリー、大阪dddギャラリー)、「愛の儀式」(中之島デザインミュージアム)、「星空からのメッセージ展」(コニカミノルタプラザ)。2013年秋、東京スカイツリー、池袋サンシャインシティーにてプラネタリウムの演出も行う。現在、週刊誌『サンデー毎日』、雑誌『DRESS』にて連載中。J-WAVEのラジオ番組ではパーソナリティーも担当。
http://ellie-office.com/

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