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ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち

2015.03.14 公開 ポスト

第1回

いくつ知ってる?ティーンのSNS用語高橋暁子(ITジャーナリスト、情報リテラシーアドバイザー)

全国でネット依存の可能性がある人は421万人、中高生は51万8千人といわれています。ミクシィの誕生から10年。SNSはコミュニケーションインフラと化した一方で、若者を中心に問題が後を絶ちません。なぜ事件は頻発するのか、なぜ依存してしまうのか。その危険性と不自由さを暴くと共に、SNSを避けて通れない現状とどう付き合っていくべきかを、元教員のITジャーナリストが独自の観点で解き明かす『ソーシャルメディア中毒』。その一部をダイジェスト版でお届けします。(全5回)

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「こちゃ」「ぐるちゃ」「スタ爆」「スタ連」「ブロック大会」「ペア画」「既読スルー」「未読無視」「ふぁぼ」「りつい」……。

 皆さんは、ここに出てきた言葉をいくつご存じだろうか。すべて、中高生たちが日常的にLINEやツイッターなどで使っているSNS用語だ。彼らの日常が垣間見える用語ばかりなので、ここで簡単に紹介しよう。

「こちゃ」は個別チャット、「ぐるちゃ」はグループチャットの意味。どちらも無料通話・メールアプリ「LINE」で使われる言葉だ。ティーンの間では、LINEは無料通話ではなく、主に「トーク」というメッセージを、チャットのように素早くやりとりする使い方がされている。

「スタ爆」「スタ連」もLINEで使われる言葉であり、スタンプを大量に送る意のスタンプ爆撃、スタンプ連打からきている。スタンプは、元々メールにおける顔文字や絵文字の代わりとして使われており、主に感情表現や、リアクション表現として単体でも利用される。ティーンはスタンプを大量に送ることで、自分の感情を表現したり(驚いた顔のスタンプを大量に送ることで、とても驚いたことを表現するなど)、「電話に出ないからスタ爆してやった」など、相手からのリアクションが欲しい時に催促として利用したりする。

「ブロック大会」もLINE用語だ。たとえば、「ブロック大会やります。ブロック(ある特定のユーザーから自分の投稿やプロフィールを見えないように設定することであり、LINEでブロックされるとメッセージや通話などのやりとりができなくなる)されたくない人はスタンプ押してね」というような投稿で使われる。タイムライン上にこのような内容が投稿されると、ブロックされたくない人たちはその投稿にスタンプをする。ティーンにとって、無視をされたり反応がなかったりすることは、自らの存在の否定に等しい。このような投稿をすることによって、LINEでの人間関係を自分にとって快適なものにしようとしているのだ。ブロック大会専用の画像も多数用意されており、画像検索などをすると見つけることができる。なお、LINE同様ティーンに人気のツイッターでもこのようなことが行われており、「ブロックされたくない人はリツイート(他人のツイートを自ら再度投稿すること)してね」などという使われ方をしている。

「ペア画」とは、2つで1つになる写真やイラストのことだ。たとえば、合わせるとハートになる写真、手をつなぐと二人になるイラスト、カップル同士のキャラクター(ミッキーとミニーなど)でデザインされることが多い。ペア画は、主に仲良しであることや付き合っていることを周囲にアピールするために、プロフィールやホーム画面などの画像として利用される。この文化は昔からあるもので、プロフ(プロフィールのみのサイト。ウェブ上の名刺代わりとして利用された)などでいわゆる「2コ1(ニコイチ)」と呼ばれて、仲良しやカップルであることの確認、周囲へのアピールとして使われてきたものと同じだ。

「既読スルー」「未読無視」は、特に有名なので聞いたことがあるだろう。LINEでは、受け手がトークを開くと、送り手側に「既読」と表示される。既読がついたということは、相手がトークを見たということを意味する。それにもかかわらず返信がないことを「既読スルー」といい、ティーンに嫌われる行為なのだ。

 既読スルーされたことで相手にないがしろにされたと思い込み、いじめに発展することもある。大人なら、仕事中などでメッセージは読めても返事ができないという経験は誰でもあるものだし、相手から返事がなくても「忙しいのだろう」と考えて気にも留めない人が多いだろう。しかし、ティーンは時間が自由にならない立場に置かれることがあまりないため、相手も自分と同じと考えて、「返事がないこと」=「返事をしたくない」「返事をあえてしない」ととらえてしまい、このような問題が起きているのだ。

 では、逆に、返事ができない時は既読をつけなければいいのかというと、トークを送ったのにいつまでも既読にならないことも、「未読無視」といわれて嫌われる。ティーンは、相手が自分をどう思っているのかを確認したいという思いに常にとらわれているため、いつまでも相手の反応が確認できないことも、やはり苛立ちの対象となってしまうのだ。

「ふぁぼ」「りつい」は、ツイッターで使われる用語だ。「ふぁぼ」はフェイバリット、つまり人がつぶやいたツイートをお気に入りに登録すること。「りつい」はRT、つまりリツイートのことを指す。ティーンの間では、どちらも「同意」「賛成」など、フェイスブックでいう「いいね!」と同じ意味で使われることが多いのだ。

 ティーンは、始終つながって相手から反応をもらうことで、互いに友達・恋人であることを確認したり、相手の気持ちを確認したいという欲求を持っている同時に、自分を見てほしい、認めてほしいという気持ちがとても強いのだ。そして、認めない人、反応がない人のことは、自分の人間関係から削除・ブロックしてしまう

 ティーンにおけるSNSの使い方やコミュニケーション、人間関係が、大人世代とはかなり異なることが感じられたのではないだろうか。これらの用語の背景にある文化や心理については、また後ほどさらに詳しく分析していきたい。

 では、ティーンはSNSにおいて、具体的にどのようなサービスを使っているのだろうか。総務省情報通信政策研究所の「高校生のスマートフォン・アプリ利用とネット依存傾向に関する調査〈速報〉」(平成26年5月)によると、LINEとツイッターが二大SNSとなっている。特に、LINEは約9割の高校生が利用しており、ほとんどコミュニケーションインフラと化していることが分かる。

 フェイスブックは世界で一番使われているSNSだが、米国でも、保護者や教員などとつながりたくないティーンがフェイスブック離れを起こしている。同時に、ツイッターなどでの炎上(ネット上で多くの閲覧者から反感や批判のコメントを浴びること)が頻発したため、共有して数秒で写真や動画が自動的に消える「スナップチャット」といった、データが残らないサービスが人気となってきている。

 ティーンにはティーン独特のコミュニケーションや使い方があり、今後も新しいサービスや使い方が仲間内で広がっていくだろう。

 

※第2回「“1”か“0”かの人間関係」は3月18日(水)の更新予定です。

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高橋暁子 ITジャーナリスト、情報リテラシーアドバイザー

元小学校教員で、Facebook・Twitter・LINEなどのSNS、子どものネット・スマホの安全利用や情報モラル教育に詳しい。書籍・雑誌・Webメディアへの執筆のほか、学校での講演、社会人向けのセミナー、企業コンサルタント、テレビやラジオへのメディア出演など、活動は多岐にわたる。『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)、『ソーシャルメディアを武器にするための10カ条』(マイナビ新書、共著)など著書多数。

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