営業局Sです。
前職は角川書店(現KADOKAWA)編集部のアルバイトでした。大学を卒業して4月に入社。その部署には当時編集局長だった現幻冬舎社長の見城、アルバイトの先輩に現幻冬舎営業局長の花立がいました。歳を重ねるごとにキレと深みとスゴミを増す見城。しかし20年前はキレッキレのキレキレで、姿を視界に捉えるだけで、自分が真っ二つに切られるような気がしたものです。
ある時にコピーを頼まれ、今より輪をかけてとんちんかんだったわたしは20枚綴りを10セット作らなければならなかったところ、それぞれを10枚コピーしたまでは良かったのですが、同じページをホッチキスで止め、それを20セット作ってしまいました。あまりの馬鹿さ加減にキレキレ見城の怒る気も失わせる始末。心底あきれられ、半笑いで「お前な…」と何もわかっていない子どもにコピーの取り方を教えてくれたのでした。その日の帰り道、自分の頭の悪さにひどく落ち込み、駅の改札を出てから徒歩10分の家までずっと鼻血(普通の人の場合は涙)を出し続け、鼻をハンカチで押えながらトボトボ帰ったのは、つい昨日のことのようです。
思えば20年前から今までずっとそんな日々の連続だったような気がしますが、自分は大したことがない、マイナスだ、と身をもって受け止め、それを前提に動けるようになったことはとても大切な経験でした。
現在の営業局には入れ替わりながらアルバイトが10人ぐらいいて、営業総務経理的なことが本職のわたしは彼らとの関わりが深いのですが、他部署の人から「まとめるのが大変なのではないか」と時々言われます。が、何年かかけて見城をはじめ先輩方にかけてもらったたくさんの言葉を、その時に応じてヤングたちに伝えていると、やはりそれは彼ら彼女たちにも腑に落ちる言葉のようで、皆納得し、かつわたしの足りないところを補いわかりやすく後輩たちに伝えてくれて、まとまっていくのです。
そのアルバイトを決める面接を何年も続けています。始めた頃から変わらない基準は「やりとりが出来るかどうか」。電話もよく鳴り常にバタバタしている現場なので、とにかくぱっとわかりやすいやりとりがしたい。面接時に多少声が小さくても、入ってから「こういうわけで声をしっかり出してね」と伝えると、たいてい皆、いい具合になってきます。面接で「この人はやりとりが出来るな」というのがわかると、あとの数分はどんな人かを知る時間。
ある時に芸術大学を卒業したばかりの可愛らしい女の子が、自分の作品のスクラップブックを持って来ていて、それを見せてもらいました。営業局のアルバイト面接に絵…。その時はお互いに全く関係ないものを見せ、見ているわたしたち…と思っていたのですが、これが後々大きな化学変化を起こすということに、わたしは全く気がついていませんでした。そのスクラップブックにはとてもきれいな色使いのやさしい絵がたくさん。こんな絵を描く人と一緒に働きたいなーと思い、採用を決め、今でもTちゃんは後輩をやさしくまとめ、まわりへの気遣いもしつつ、働き続けてくれています。
<後編へ続く>