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2015.06.06 公開 ポスト

第5回

意外と知られていない薬の話石井光

昔病院で処方された薬はのんではいけない

昔病院でもらった薬は、のんではいけません。薬は化学物質ですから、一般家庭の保管では温度湿度の管理が一定しないので、長期間経過すると変質します。一般に自宅で保管してのんでも大丈夫な期間は、およそ半年と考えてください。それ以上経過した薬をのむと変質して作用が低下するどころか、重大な副作用が出やすくなるので注意してください。

手軽に購入できるOTC。長期服用に注意

市販薬に「スイッチOTC」というのがあります。OTCとはOver the Counterの略で薬局を意味します。ロキソニンやガスター10がその代表で、もともと医師が処方する医薬品をその成分量を半分――効き目は若干犠牲にして安全性を優先し、薬局で誰でも購入できるようにした薬の総称です。

スイッチOTCは、あくまでも医師の責任でなく自己責任で服用するので効き目は限定的です。しかし、長期間服用すると副作用が出やすくなるので注意が必要です。

例えば、ロキソニンは長期間服用すると胃潰瘍、十二指腸潰瘍が発生しやすくなりますが、ロキソニン自体が鎮痛剤なので胃痛が起きません。そのため、貧血で初めて胃潰瘍や十二指腸潰瘍が起きていることに気が付くことがあります。ガスター10は、長期間服用すると胃の粘膜が萎縮して発がんしやすくなります。いずれも半量とはいえ長期間服用すれば、副作用が出てくる可能性が高くなります。医師の処方とは違い自己責任ですから慎重に服用してください。

医師の処方箋でしか買えない薬の代表に抗生物質があります。風邪を引くと薬局で薬を買い求めますが、それは総合感冒薬と言って十数種類の薬が調合されていますが、抗生物質は入っていません。

風邪は一般にアデノウイルスの感染症です。ウイルスは抗生物質で効きませんから感冒薬の方がいいでしょう。しかし、咳が長引いたり黄色い痰を伴う咳が続くようなら、細菌感染が疑われます。そのような時は早く医者に診てもらった方が肺炎にこじらせることなく治るでしょう。

 

ジェネリック薬の原料のほとんどがインド・中国からの輸入品

ジェネリック薬は、ほとんどが海外で製造されています。主にインド、中国です。それでは、よくテレビCMで紹介される衛生的な工場では何をしているのでしょうか。

日本のジェネリックメーカーは、バルク(半完成品の粉末)をインド、中国から輸入して自社工場で錠剤にしたりカプセル化して販売しているだけです。一から製造する体力も技術も持ち合わせていません。最近週刊誌でジェネリック医薬品批判の特集記事が出ていますが、医師仲間ではとっくにその問題点を指摘されていました。血中濃度が一定でないため効き目が不安定で狭心症の発作が出てしまうとか、思うように降圧効果が得られないとか、血糖降下作用が不安定であるとかさまざまな問題点があります。厚労省は先発薬と全く同じと言いますが、同じならそのような副作用は起こらない筈です。

某大手製薬企業がインドのジェネリック薬の世界最大製薬企業を買収しましたが、その後手放してしまいました。いい加減なやり方に愛想が尽きたからです。

数年前、日本人駐在員が痛風発作で中国上海の有名な診療所に駆け込んで、薬をもらって飲んだという人がいました。診療所でもらった薬を服用してから1週間もしないうちに耐えがたい腹痛が出現。慌てて帰国して私のクリニックで胃カメラを受けました。「これをのんで腹痛が起こりました」と差し出された薬のボトルには、『ザイロリック』というプリントがありました。中身を見るとどうもおかしいと思い、日本のザイロリックと比べたら大きさが異なりました。

ザイロリックはグラクソの商品名ですから、世界共通でサイズはひとつです。ニセのザイロリックであることが分かりました。

このようなニセ薬を平気で製造しているメーカーからジェネリック薬のバルクが送られてくるのだと思うとゾッとします。中国は冷凍餃子だけでなく薬でも例外ではないのです。

ジェネリック薬で医療費は削減できない

最近の報道によると、国はジェネリック薬を90%まで引き上げて医療費を削減したいといいます。本当に医療費を削減したいのであれば、調剤技術料を値下げすべきです。

ジェネリック薬を調剤すると調剤技術料が先発薬より跳ね上がるので、調剤薬局は積極的に患者に勧めるのです。しかし、患者の窓口負担は増加するだけでなく、ジェネリックを選んでも国民医療費はそれほど節約できないのです。

ジェネリック薬の使用によって国民医療費を下げるよりも、病気予防に注力するほうが重要です。病気を火事に例えるのはおかしいかもしれませんが、ボヤの内に消し止めれば全焼を防げるのと同じように、病気も健診等で早期発見して早く治せば医療費も安くすみ命を失うこともありません。

でもそれは早期発見であって予防ではありません。21世紀医療のメインテーマは治療でなく予防です。私は、病気予防こそ重要であると考え魚皮コラーゲンの臨床研究によって食品の機能性表示を取得しました。その内容は血管のプラークコントロールです。これについては、又の機会にお話ししましょう。

関連書籍

石井光『医者の嘘 医者は自分の都合でウソをつく』

それでもあなたは医者を信じますか? 「毎日患者に接しているうちに、医者の嘘がいかに多いのか思い知らされました。同業者の悪口をいうのは敵を作るだけですから、私は気が進みませんでしたが、野放図に増え続ける国民医療費は、もしかしたら医者の嘘も原因のひとつではないかと考えました。患者が賢くなれば、増え続ける国民医療費を削減することが可能になるのではないか--」 (「はじめに」より)

石井 光『医者の罪と罰』

知らなかったではすまされない、がん治療の真実 日本の医療は迷走を続け、時代遅れで無駄遣いの部分が非常に多い、と著者は語ります。本作では、長年医療の現場に携わってきた経験を元に、現代のがん治療の嘆かわしい現状を訴えています。患者の無知に付け込んだ「がんビジネス」の存在や、新薬の問題点など、私たちが知っておくべきがん治療の真実について取り上げています。前作『医者の嘘』で日本の医療に警鐘を鳴らした著者が、再びがん治療の現状に切り込みます。

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それでもあなたは医者を信じますか? 現代医療に溢れる“嘘"を暴く話題作『医者の嘘』を出版し、最先端がん治療の第一人者である著者が明かす、あなたが医療と関わる上で為になる具体策を紹介します。

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石井光

新日本橋石井クリニック院長。医学博士。 長年、プラセンタによるがん予防の研究のほか、コラーゲンによる萎縮性胃炎の治療、骨密度上昇、軟骨再生、豊胸、アテローム性粥状動脈硬化症の改善などの研究を行う。がん治療であるANK免疫細胞療法の症例数は全国トップクラスを誇る。著書に『血管が若がえれば健康寿命はのびる』『がんと診断されたらANK免疫細胞療法』『一生がんにならない体をつくる』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『医者の嘘』(幻冬舎)、『若がえり13の法則』(万葉舎)がある。日本がん免疫学会、一般社団法人日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本がん分子標的治療学会 会員。 https://anktokyocancer.jp/

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