最新作『オルゴールワールド』が発売されてから2ヶ月が経ちました。本当に評判も良く、ありがたいことにニ度ほど重版もかかりました。しかし、まだまだ。
本に限らず、作品は「生み出して終わり」ではありません。お客様に届かなければ、その作品はこの世に生まれてこなかったことになってしまいます。せっかく産まれてきた我が子を見捨てるようなマネだけはしたくありません。「とにかく売らねば!」
「新刊が発売になりましたー!」とテレビやインターネット、紙媒体で宣伝して、「あとは祈るのみ」という時代はもう終わったということを踏まえた上で動こうと思いました。
景気が傾いて、娯楽がこれだけ多様化された時代に、大衆に向けての網漁のようなCMは時代錯誤。きっと今は「1対1」でモノを売る時代なのだと思います。販売の原点回帰ですね。
だからと言って、現代のツールを使わないということではありません。ツイッターだってモーレツに利用します。ただ、その使い方が「ツイッターで告知して終わり」ではなく、告知した後にエゴサーチをかけ、『オルゴールワールド』について呟いている人を探し、「作者の西野です。絶対に感動させますので是非。取扱店は…」と自分からアクションをかけ、1対1でやりとりをします。そういった個人のツイッターのやりとりは、この2ヶ月でザッと2000件以上させていただきました。発売直後からは携帯電話にヘバリつく毎日。しかし、これで買ってもらえるならラッキーです。
足繁く本屋さんにも通い、店員さんにご挨拶。まずは置いてくださったことに対する感謝の気持ちをキチンとお伝えして、サイン本を頼まれれば何冊でも。
出版元である幻冬舎さんに「あのお店は返本が多いのでサインを入れられると…」と渋い顔をされようが、おかまいなし。
自分の本を大々的に展開してくださっているお店さんの頼みを断るようなことができるハズありません。本が余れば自分で買い取ればいいだけの話だぜと、サインを書き書き。そしたら、「絶対に返本いたしません。必ず全部売ります」と、そのお店。
そうだよな。本来、「モノを売る」って、そういう信頼関係と覚悟だよな。
テレビやラジオ、ホームページやツイッター、紙媒体や本屋さん…そこで、どれだけ告知しようが、そういったところにアンテナを立てていない人もたくさんいらっしゃいます。「そういう人達に届けるにはどうしたらいいのやら?」とアホなりに考えます。
とにもかくにも、「買う、買わない」の前に『オルゴールワールド』の存在を知ってもらわなければ話になりません。「こうなりゃ、足を使うっきゃない!」思い立ったら即行動。担当の袖山さんに電話。
「『オルゴールワールド』のチラシを1万部作ってください。僕、それ全部配ります」
僕は大酒呑みなのですが、腹が出るのが嫌なので、ジョギングを日課としております。それを利用しない手はありません。年明けからジョギングついでに『オルゴールワールド』のチラシを配り始め、現在までで8000部配り終えました。ジョギングの暇潰しにちょうど良いので、あまり苦になりません。
そのチラシの効果がどれほどあるのかは知りませんが、「効果がなかった」と知れるだけでも次に繋がります。
今回、チラシを配る時も、僕的には『オルゴールワールド』を必ず置いている本屋さんに誘導するような内容にしたかったのですが、「ウチの地域で他の店に客が流れるような告知はあまりしてほしくない」という“本屋さんのテリトリー”なるものが存在していることを知りました。なんとお粗末な企業努力。
「本が売れなくなっている背景にはこういうこともあるのだなぁ」と知れただけでも収穫でした。だったら、そこの抜け道を探すまで。
とにかく、「出版不況」は考えられる全ての可能性を試した人間だけが口にしていい言葉です。僕はまだまだ試せてません。
発売から2ヶ月経ちましたが、きっとまだまだやり方があるのだと思います。僕はその方法を探して、『オルゴールワールド』が一人でも多くの人の手に渡るようエンヤコラ。
自分の作品を自分で宣伝するのは少し恥ずかしいですが、作品が世に出るまでに一緒に汗を流してくださったスタッフさんのことを思うと安いもんです。
それに、腹を痛めて産んだ我が子の成長を後押しして見届けるのは、親として当然の務めです。誰が何と言おうと、ウチの子が一番なんです(笑)。