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裏・わしズム

2005.08.01 公開 ポスト

第40回

vol.120わしズム編集部

 

 わしズム15号は、いよいよ幻冬舎から出る最終号!

大特集は「戦後60年を0に戻す」。

先般『沖縄論』を問い、世の視線を南に釘付けにしてる

編集長の「ゴー宣EX.」は、な、なんと今度は

北方領土の最北端「占守島の戦い」を取り上げて、

日本の戦後に挑戦状を叩きつける!

西部邁氏の戦後60年早分かり時評

「還暦の戦後日本」も読みごたえあり!

新鋭・室積光氏の「戦争未亡人」はしみじみ泣かせます。

富岡幸一郎氏の「戦後文学」は日本人ならぜひ読んでおきたい

戦後の代表的小説のよきガイド。

他にも編集長の“2大対論”「台湾どうなる座談会」

「8・15直前、日中対談」もそれぞれ台湾人、中国人と

白熱の議論で目が離せない。

もうボルテージ上がりっぱなしの充実企画、満載!

 

 

 

7月15日(金)

 

【シギー】

 さて今回「裏わしズム」も最終回。スペシャル版でお届けしようと前回、思ったが、とくにアイディアが思いつかなかったので、通常どおり進めます。俺と管野と阿部が座談会やって思い出を語ってもしかたないしね。

 最近、編集長に外国メディアからの取材の申し込みが多い。今年になってから、もう十数件はあると思う。なぜだか、とくにフランスが多い。編集長がフランス料理好きだからだろうか。きょうもテレビ局からの取材をひとつアレンジする。

 鈴木デザインから『靖国論』本文の校正をピックアップする。次第に完成に近づきつつある。

 

【阿部】

『靖國論』の鈴木デザイン室分、文字ページのデータ待ち。

 昼、中央精版の中西さんから電話。「靖國論、ハガキはいかがでしょうか」……忘れてた! 慌てて原稿を作って、入稿。中西さんありがとうございます!

 夕方、最終の文字校正がFAXで送られてきたので確認していたら、章タイトルにものすごい誤植を発見。原稿の段階でもチェックしていたのに見落とした! それも特殊な字を作ってもらったから簡単には訂正できない!! うぎゃー!!! 慌てて鈴木デザインへ訂正FAX&電話。「まずいですね……」と低い声で唸られる。超ギリギリ最後の最後の予定をとりあえずお伝えして平謝る。

 そして夜、ついに無事デザインアップ。なんと、夕方にパニックになっていた文字誤植も、見事に直っていた。……マジックだ。深く深く感謝。ピックアップ後すぐに入稿準備をする。中央精版は休日返上での仕事らしい。明日の朝イチから製版作業にとりかかるとのこと。

 

 

7月16日(土)

 

【シギー】

 夕方出社。晩、よしりん企画へゲラのお届けもの。『靖国論』徐々に徐々にできあがっていきます。

 

【阿部】

『靖國論』で急遽漫画ページを確認する必要ができたため、漫画ページのみの出校をお願いする。夕方出社したらすでに机の上に出校されていた。面付けされたものが大きな紙のまま出てきたので、本の形になるように折って、切って、昨夜アップした文字ページのプリントアウトを貼り付けていく。「1時間あればできるかな~」なんてタカをくくっていたら、3時間もかかってしまった。さらに、またまたタイトル部分に間違い発見。私の目は節穴か! 節穴だ!! 副編に渡し、本日の仕事は終了。

 

 

7月17日(日)

 

【シギー】

 14:00ちょいと四谷の紀尾井ホールへ行く。イギリス人のフルート奏者で、オランダのロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団の首席であるエミリー・バイノンと、その妹のハープ奏者キャサリンのデュオ・リサイタル。エミリー・バイノンのフルートは美音で知られるが、噂に違わぬ音色はまさに夢心地。技巧も超絶的。いいもん聞かせてもらったなあ。入場料4000円が安い、と感じました。

 そのあと出社。いろいろと作業をやりました。

 

【阿部】

 久々の休日。さっそく映画「スター・ウォーズ エピソ-ド3 シスの復讐」を観る。じつはエピソード2を観ずにここに来てしまった。でもHPの情報や4、5、6,1のストーリーで、不自由はしなかった。

 ラブありアクションありCGあり復讐ありの、盛りだくさんな内容。最初は「あと2話くらいかけてじっくり繋げたほうがしっくりくるんじゃないかな」と思っていたけれど、結末が分かっていても目が離せなかったのは、その過剰ぎみな盛りだくさんぶりによるものかと思い、納得。全ての流れがここでがっちりと繋がる爽快感がなかなかだった。ただ、余りに精緻なCGと迫力と事件が次々と起こるめまぐるしさで、見終わるとどっと疲れが出た。もうトシじゃのぅ。

 

 

7月18日(月)

 

【シギー】

 きょうが休日だと昨日はじめて知る。14:00から打ち合わせ、19:00から打ち合わせ。ひとつは単行本の、もうひとつは秘密のビッグプロジェクト(笑)のもの。どちらも、まだまだ序の口の打ち合わせなので、先は遠い。

 

【阿部】

 映画「姑獲鳥の夏」を観る。イメージ通りの人も、イメージとちょっと違う人もいたけれど、役者さんがみんな上手だったので、良い感じにまとまっていたと思う。季節的にもぴったり。ただ、映像に凝りすぎて、画面をぐるぐる回したり、スポットライトを当てたり、敢えて画面を傾けたりしていたのがひっかかった。暑さもあって眩暈を起こしてしまったくらい。ややチープな雰囲気も否めない。やはり京極作品の原作の字面の緻密さ・端整さを出すのは難しい。でも次回作もきっと観るだろうな。

 

【管野】

 銀座博品館劇場に、「大銀座落語祭 熱海殺人事件」を観に行く。刑事役を落語家の柳家喬太郎、犯人役を劇団ひとり、婦警役を前日結婚発表したばかりの小川範子が演じる。落語祭、ということなので、爆笑の連続かと思いきや、意外や意外、ほろりと涙ぐんでしまった。それにしても柳家喬太郎はうまかった。初舞台ということだったが、声は通るし、迫力がある。彼が登場すると安心できるのだ。落語家の多才ぶりに驚く。まだ落語を観たことはないが、むくむくと興味が湧いてきた。

 その後、目黒の雅叙園で、弊社雑誌「パピルス」の長谷川京子さんインタビューに立ち合う。長谷川さんを喫茶店の前で待っている私の前を、次から次へと、手をつないだ若いカップルが通り過ぎてゆく。幸せそうだな、と羨む気持ちをなんとか押し殺す。

 

 

7月19日(火)

 

【シギー】

 先日、発表し秋に刊行する小社アウトロー大賞の受賞者氏と打ち合わせ。顔合わせは初めてだが、なかなかの、いい男。作品もかっこいいし期待大。秋に出る「アウトロー大賞受賞」の小説です。気にしていてください。

 アウトローつながりで、もうひとつ。8月に刊行される文庫、石原伸司『愛の極致』の見本があがった。刑務所の中、男女の囚人同士が文通して愛が芽生え、会えないまま獄中結婚し、さらに会えないまま時を経て、女が先に出所し、面会を重ね、ようやく7年経ってお互いに触れることができた、という壮絶な愛の奇跡。どうしようもない人たちの、どうしようもない話なんですが、かなり感動します。ぜひ読んでみてください! 8月5日(金)発売。

 

【阿部】

『靖國論』最終紙焼きが出る。ようやく漫画と文字が合体され、すべて揃った形での確認。漫画も文字も別々に何回かチェックはしているのでそれほど赤字は多くないけれど、この期に及んでびっくりするような誤植があった。なぜいままで見落としていたのか自分が信じられない。節穴ぶり再認識。歯ぎしりしながらも厳重に見直し、責了。

 

【管野】

『1リットルの涙』の著者との打ち合わせのため、豊橋へ。新幹線が大好きなので、わくわくする。隣に誰も座らないことを祈る。昔、保健体育で「パーソナルスペース」(他人に侵略されると不快になる空間、なわばりみたいなもの)という概念を習ったが、おそらくそれが大きいのだと思う。電車で座っているときに、誰かが前に立つのもイヤだし、隣の人と密着すると気分の悪くなるときもある。年々これがひどくなっている気がする……。隣の席は空席のまま、無事豊橋へ到着。打合せを終え、夜会社へ戻る。ゲラ作業で、午前帰り。

 

 

7月20日(水)

 

【阿部】

『靖國論』カバーの、箔つきの色校が出る。慣用句とおり、まさに「箔がついた」見事な装幀。今までの「スペシャル」ものは、「新ゴーマニズム宣言SPECIAL」や、「戦争論」の影の部分に箔が使われていたのだが、今回のはばっちりタイトル「靖國論」そのものがぴかぴか光っている。紫の地の上に煌々とかがやく「靖國論」の文字はほんとうに荘厳で貫禄がある。そして帯に端然とたたずむよしりん。ぜひ書店でご覧になって、レジへ持っていって買ってください。

 

 

7月21日(木)

 

【シギー】

『わしズム15』の見本があがる。編集長は海外取材中なのでお届けは後日。これで15冊。最後の号。

 橘玲『永遠の旅行者』(上/下)の見本もあがる。

 晩、2つを持って鈴木デザインに届けにいく。

 

【阿部】

 夜、『わしズム15』の見本が届く。幻冬舎にとって最後のわしズム。いろいろ感慨深いけれど、その前にとりあえず大きなミスなどないかを確認。ないようでほっとする。

 

【管野】

 担当していた本がドラマ化されるため、テレビ局の人と今後の宣伝展開について打ち合わせをする。

 テレビ局の人のフットワークの軽さと、いい意味での強引さに驚く。

 夜、ローソンの冷やし中華を食べながら、もくもくとゲラ作業をしていると、中央製版中西さんの声が聞こえてきた。『わしズム15』の見本があがる! いつものような興奮とともに、最終号のせいか切なさも感じる。

 

 

7月22日(金)

 

【阿部】

 8月刊行予定の単行本を責了。これは余裕のある進行なので、ゆっくり2日かけてチェックをする。その合間に、とっちらかっていた机周りの整理。ゲラなどを括っていると、あっという間に1メートルの山が2、3個できる。休み休みやりながらも、途中でギブアップ。会社の片づけはそれでもまだ頑張ってできたけれど、自宅のちらかりぶりが目に余る。本や衣類がとっちらかっているのは当然で、チラシや買い物の袋や書店で巻いてくれたカバーが床に散乱していて滑ったりもするので腹が立つ。家に帰るのが憂鬱になるのだ。

 

【管野】

 何人かに協力してもらい、『わしズム』の発送作業。送り状を書くのもこれで最後だ。

 

 

7月23日(土)

 

【シギー】

 夕方の地震で家の中がぐちゃぐちゃになる。俺のアパートは14階にあるので、よく揺れるのだ。おもしろいほど、ぐちゃぐちゃになった(笑)。

 ぐちゃぐちゃをそのままほっといて千駄ヶ谷の津田ホールで林峰男のチェロ・リサイタルを聴く。地震で交通網が麻痺し客の集まりがよくなかったので開始は30分以上遅れた。

 曲目はショスタコーヴィッチの2曲のピアノ三重奏曲とチェロ・ソナタ。なかなかよい演奏で初めて聴くピアノ三重奏とても楽しめた、とくに第1番。

 

【阿部】

 私用で多忙な一日。用事と用事の合間に3時間ほど時間があいたのでお茶でも飲みながら読み途中の『東京タワー』(リリー・フランキー著)を読もうと、行きつけの紅茶専門店に向かったところ、試飲会のためにティールームが閉鎖されていた。無料だしせっかくなので、試飲会に参加する。夏摘みダージリンや新しい烏龍茶など、約20種類のおいしいお茶をタダで飲めるなんて、却って得した気分。「これもう一度ください」なんて50g4000円近くするお茶でもおかわりまで自由だし。ところがその時、地震が起こった。半地下だったのでそれほど揺れたとは感じなかったのだが、携帯の「号外速報」に次々と入る速報と電車不通のニュースにびっくりする。

 夜、家に帰り、地震による被害を確認しようとしたが、もともとあらゆるものが散乱していたので、まったく変化が分からなかった。

 

【管野】

 暑さと寝不足のせいか、昼頃起きたがその後、ソファに寝転び、夕方までごろごろしてしまった。「くだらない」と思いつつ、グルメ&旅番組を観ていたところ、遠くから地響きのようなものが聞こえてきた。これは、どこかの大軍(?)が押し寄せてきたに違いない、とぱっと身を起こすと、大きな揺れが。地震速報を気にしながら、広尾に用事があったので、電車で向かう。渋谷に出るも、山手線ストップのため、東横線で中目黒へ出て、日比谷線で広尾へ向かう。

 用事を終え、家に帰り、その後、またくだらないと思いつつも「25時間テレビ」を朝の5時まで観てしまった。潤いも文化もないこんな生活で果たしていいのだろうか、と悶々としながら眠る。

 

 

7月24日(日)

 

【シギー】

 18:00出社。こまかい作業をいろいろ。

 

【阿部】

 映画「皇帝ペンギン」を観る。ペンギンがカップルになって子供を産んで、海に戻るまでのできごとを、物語調で進めていく内容。雄ペンギンには男性のセリフを、雌ペンギンには女性のセリフを、仔ペンギンには子供のセリフをそれぞれあてていく。

 ペンギンの生態を知るにはとても勉強になった。卵が無事に孵ることがいかに難しいことか、仔ペンギンがおとなになることがいかに難しいことか、ペンギンが卵を暖めている間の苛酷な状況なども、よく分かった。

 そして、仔ペンギンはやっぱり非常に可愛らしかった。

 ただ、ロマンスタッチのナレーションが、あまり好きになれなかった。普通の解説的なナレーションで観てみたかった。

 

【管野】

 19:00出社。9月に出る美容本の目次を作ったり、8月末出版の手紙をまとめた本の、章タイトルを考えたりする。

 

 

7月25日(月)

 

【シギー】

『わしズム15』発売。昨日の実売データが早くも入ってきている。よく売れている。書店で見ても表紙がなんとなく、さびしげでもあり、俺たちの気分を表している。

 

【阿部】

 7月刊行の本が出そろい、多くが本日の搬入。本日発売の「わしズム15」も本屋さんで見かけた。

 しばらくは余裕のある日々。

 

 

7月26日(火)

 

【阿部】

『靖國論』のカバー見本が届く。「カバー見本」というのは、本来の見本日(だいたい搬入日の1週間前くらい)に、本が出来上がっていない場合の緊急措置である。「せめてカバーだけでも取次に持っていって、どんな本かを理解してもらう」というもので、ここで本物の見本を出せないということは結構恥ずかしく、営業の人が頭を抱える状況なのだ。

『わしズム』は、一度もちゃんとした見本を出すことができず、いつもカバー見本だった。最初は中央精版にちゃんとした見本の出るスケジュールを切ってもらうくせに、守ったためしがないどころか、ぎりぎり、もっとぎりぎり、さらにぎりぎり! のスケジュールを何度も出し直してもらう始末。申し訳ありませんでした。

 

 

7月27日(水)

 

【阿部】

 先輩(だけど同じ歳)の武口さんが、コンビニでヨーヨーつき復刻版炭酸飲料を買ってきた。昔の、ガラス瓶でできたスプライトやファンタグレープやコカ・コーラを見て、「懐かしい!」という言葉が出るのは、30代からということが判明。おまけについてきた「スーパーヨーヨー」(もしくはこっちが本命で飲み物がおまけ?)を手に、男性社員が盛り上がる。ヨーヨーが上手く操れるのは、30代後半からということが判明。しかし、周りで一番上手かったのはなんと出版局長の新実さん(43歳・男性・既婚)だったということがさらに判明。

 

 

7月28日(木)

 

【シギー】

 晩『靖国論』の見本ができた。美本である。すぐに編集長に届ける。ページをめくると参拝しているような気分になる仕掛けがほどこされている。編集長も満足そうで一安心。緊急出版だったが、なんとかなった。

 これで『靖国論』『わしズム15』『永遠の旅行者』(上/下)『愛の極致』の5冊が出る怒濤の7月を乗り切った。俺、頑張りました。合計ページ数1300ページのビッグな月間だった。

 

【阿部】

 昨日、出版局内ベストヨーヨーイストとなった新実さんに、その技を披露してもらう。さすが、ヨーヨーの上下のスピードや軌道からして安定感が違う。難易度のやや高い「いぬのさんぽ」も余裕で拍手喝采。ひきつづきヨーヨーで盛り上がる。ちなみに私は最初の糸を巻くことすらうまくできませんでした。

 夜、『靖國論』の見本が届く。とにかく「出来た~」という感慨よりもまず先に「なにか事故やミスはない!?」とドキドキしてしまうのは、出版局の習性なのだろう。特に大きな問題はなさそうで安心する。一連の、怒涛の仕事がついに終了。ほっとしたような、寂しいような。

 

 

7月29日(金)

 

【シギー】

 きょうでこの「裏わしズム」もおしまいです。だいたい「裏わしズム」は、インターネット上で「わしズム」本誌各号の目次が検索できるように、ということで始めました。だから目次が主で、こちらの日誌のほうはどうでもいい付録でした。でも、ときどき「読んでるぜ」という方もいて、それはそれでとてもありがたく思っています。でも、いつもいつもクオリティが低くてすいませでした。

 われわれはこれからも本を出していきますので、今後とも、よろしくお願いします。では、さようなら。

 

 

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裏・わしズム

2002年5月の創刊以来、存在自体を社外秘という厚いベールに包まれた編集者集団<わしズム隊>。総責任編集長の小林よしのりを頂点に置き、その指示のもと、ベストセラー・ムックシリーズ『わしズム』の編集作業に東奔西走する4人の編集者たちの、知られざる怒濤の日々が、ついに白日の下にさらされる!! 衝撃の編集日誌、連載開始!

※本連載は旧Webサイト(Webマガジン幻冬舎)からの移行コンテンツです。幻冬舎plusでは2005/08/01のみの掲載となっております。

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