「セックスレス、私の場合」　vol.19アラサー女子研究所

 恋愛やセックス特集の取材中に必ず聞こえてくるのが、アラサー女子たちに蔓延するセックスレスについての悩み。パートナーがいるにも関わらずセックスレス状態に陥り、妊活ストレスや女としての自信崩壊など、心や体のバランスを崩してしまうケースも多発している。この連載では、セックスレス当事者やそのパートナー男性への取材をもとに、現代のセックスレスに実態をレポート。アラサー女性たちが抱える知られざるセックス・クライシスに迫ります。

取材＆原稿
楠 真由美

くすのき・まゆみ。恋愛・結婚・セックス企画ひとすじ15年のベテランライター。40才。アラサー女子やメンズへのインタビューは1000人以上。セックスレスが原因で、精神的に追い込まれている女性たちがあまりに多い実態を知り、今回、アラサー・セックスレスについての本格的リサーチを開始した。特技はアラサー女子の人生悩み相談、メンズの本音座談会の司会。仕事ひとすじだったが１年前に運命の出会いから電撃結婚。

アウトドア大好き、ヘルシー美女（29才）の
セックスレス告白 後篇

今回のセックスレスさん
鈴木美奈さん（仮名）29才。
交際６ヶ月。栃木県出身。

●現在、鈴木さんは都内のメーカーにて営業事務を担当。
●紹介で知り合い、交際６ヶ月になる彼（31才）は、都内近郊の市役所に勤務。
●都内でひとり暮らし中で、彼も同じ沿線上でひとり暮らし。
●趣味は、ドライブ、スポーツ、ハイキングなど、アウトドア派。
●週末は、彼とドライブに行ったり、ハイキングに行ったり、カラダを動かすことが多い。

大学時代にできた初カレは、２つ上の憧れの先輩。念願叶って付き合うことになったものの、その初カレとのセックスの記憶がトラウマとなって、鈴木さんの心に大きな影を落としてしまった。現在、交際中の大好きな彼とは、セックス無しのまま半年が過ぎた。いまの彼とセックスできる日は来るのだろうか。

トラウマとなった理由
楠（以下：Ｋ） 大学時代の初カレのセックスが自分勝手だったって言ってたけど、具体的にどんな風に自分勝手だったのかな？
鈴木（以下：Ｓ） 最初の半年間くらいは特に問題なかったんですけど、飽きてきたのか、それとも願望を丸だししてきたのか、セックス開始とともにアダルトビデオを流すようになったんです。それで、ＡＶの女優さんがする動きをすべて私にもやれと無理強いするんです。
Ｋ なるほどー。半年経った頃からってことは、１年半くらいはそうやってセックスしてたってこと？
Ｓ そうです。ＡＶはお供でしたね。
Ｋ ＡＶを発奮材料として使うんじゃなく、その通りに動けって言われるんだよね。それって実際可能なの？ オトコ目線でオトコのために作られたようなマスターベーション用のＡＶでしょ？ 
Ｓ そうなんです。だから、私はただただ痛いだけだったり、屈辱的だったりするんです。気持ちが全然乗らないし、私の気持ちもカラダも置いてけぼりで、彼だけがＡＶ男優と同じように進んでいくんです。しかも、それを週４～５回やるんですよ。
Ｋ よく耐えられたよね。
Ｓ 好きっていう気持ちがあった最初の数ヶ月は、たまには気持ちよさも感じられたし、耐えられたんです。でも、だんだん彼に対する愛情が減っていったのか、まったく気持ちよくなくなってしまって。
Ｋ それって、鈴木さんがオーガズムに達してたのに、達しなくなったとか？
Ｓ そうなんです。同じ人としてるのに、どうしてこんなにも変わるんだろうって思いました。セックスって、100％気持ちが反映されるんだなって、自分のカラダで学びました。
Ｋ 彼の束縛するところとか人間性を嫌いになっていったのが先？ それとも彼の身勝手なセックスによって、どんどん彼のことを嫌いになっていったの？
Ｓ それが、私を束縛するようになったのと、セックスが身勝手になっていったのが同時期なんですよ。
Ｋ 彼の中で、なにかキッカケがあったのかなぁ。鈴木さんにオトコの影があって愛情を疑うようになって、独占欲がでてきたとか。急に束縛し出す場合、嫉妬からきたりするからね。その独占欲があらぬ方向にいってしまった可能性もあると思うんだけど。
Ｓ オトコの影…、友達は多かったですけどね。もしかしたら嫉妬とかあったのかもしれないですね。独占欲や嫉妬心が強いかどうか、付き合うときに見抜けたらいいのに。若気の至りですよね。
Ｋ いやいや、若かったことが救いだよ。もっと大人になってからそんな目に合うほうが凹むと思うなぁ。
Ｓ でも色んな経験を積んでいる人は、すぐ見抜けたかもしれない。無知で、男性のことを知らなさすぎたからこんなにまで引きずってしまうことになったんだと思います。

悪夢の恐怖
Ｋ 今後もまだ引きずってしまいそう？ 
Ｓ そうですね。男性恐怖症というか、セックス恐怖症というか…。どんなに素敵だなって思う人が現れても、元カレとのトラウマが頭をよぎって、胸が苦しくなるんですよ。
Ｋ でも、いまの彼と出会ったことで前進してるよね。付き合えたワケだし。トラウマを乗り越えたいって思うほど彼のこと好きでしょ？
Ｓ いまの彼は、強引なところが少しもなく、ゆっくり進もうとしてくれるんです。だから、時間をかけて徐々に会話が増えていって、会う回数が増えていって、彼と一緒にいることが自然になれたんですよね。こんな人、もう二度と現れないかもしれないって思うと、早くトラウマを乗り越えたいって思うんですけどね。
Ｋ 素敵な彼だね。元カレのことを簡単に忘れろ！って言って解決するようなことじゃないし、軽く言うなって思われるかもしれないけど、信頼できる誠実なオトコの人と付き合って、幸せなセックスをすることでしか、鈴木さんのトラウマは払拭できないんじゃないかな。いまの彼のことはまだ信頼できない？
Ｓ すごく信頼できる人なんです。穏やかで優しくて、私のことも理解してくれてます。でも、だからこそ怖いんです。
Ｋ こんなに大好きな人とのセックスが嫌な感じだったらって？
Ｓ はい。怖いんですよね…。万が一今度の彼も身勝手なセックスをするタイプだったとしたら、２回連続ってことになりますよね。トラウマはもっと深いものになっていく気がして。せっかく半年も育んできたのに、すべてが台無しになってしまいそうで。
Ｋ 鈴木さんのなかで、“よしっ！”って思えるまでは、無理して焦ることはないと思う。彼も理解してくれてるんだと思うし。でも、受け身でいることはやめたほうがいいと思うな。受け身でいるとオトコの出方次第になってしまうから。元カレのときも、初めてのことでわからなかったのは理解できるけど、嫌なことは嫌だってもっと早い段階で話してみるべきだったと思うの。受け身でいるから、男性本位の関係が築かれてしまうと思うから。
Ｓ ホントにそうですね。私がそもそも尽くしすぎて甘やかしちゃった部分もあると思うんです。セックスも積極的に参加しなかったし。私がマグロだったから彼は工夫しようと思ってＡＶという手段を取ったのかもしれないって思うんですよね。

彼との未来
Ｋ 年齢的に結婚願望もあるんじゃない？
Ｓ いま結婚願望がマックスなんです。去年の11月から２月まで、４ヶ月連続で友達の結婚式が続いたんですよ。これはかなりこたえました。友達がどんどん家庭を作っていって、自分の居場所が決まっていくワケで、私はいつまでひとり暮らしのアパートにいるんだろうって。
Ｋ ４ヶ月連続はキツいね。誰でも結婚したくなるよ。
Ｓ 友達が幸せになっていく様を目の当たりにしたので、自分のこと、これからのこと、真剣に考えましたね。いまの彼と結婚できたら幸せだろうなぁって。
Ｋ 仕事は充実してるの？
Ｓ 仕事は楽しくないワケじゃないんだけど、仕事が充実していてもプライベートが充実してないと、埋められないココロのすき間みたいなのがどんどん大きくなっていく気がして。
Ｋ 29才って、気持ちがぐらぐらする時期だよね。焦ることは全然ないと思うけど、いつかこの人とならって思ったとき、自分から「セックスしよう！」とか「結婚しよう！」って言うくらい、積極的に幸せを掴んでいってほしいな。

今回の鈴木さんのようなケースを知ると、女性にとっての初セックスはいかに重要か…改めて思い知らされた。男性観やセックス観がそこで決まってしまって、未来の自分へ幸せなバトンを渡せなくなるのかもしれない。でも、いまの彼が新たな幸せのバトンを目の前に差し出してくれたなら、勇気を出してそのバトンを受け取り、幸せな未来へとつないでいってほしいと、心から願わずにいられない。