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子育てが変わる親の心得

2015.06.26 公開 ポスト

第2回

ゲームに夢中な子どもに責任を教えるための3ステップ菅原裕子

長年の人材育成の経験から多くの親子をサポートしてきた著者が、37のメッセージを通して子どもと関わるすべての人へ子育てに対する心の持ち方・向き合い方を伝える書籍『子育てが変わる親の心得37』。

本連載ではこの書籍の一部を全3回のダイジェストでお届けします。第2回は第2章「しつけについて」から、スマホやゲーム機との付き合い方を通して教える、責任について。

前回の記事:子育てから子育ちへ。人材育成のプロが教える親の心得


*  *  *
 

拙著『子育てが変わる親の心得37』の第1章では、「責任を学んで人は成熟する。責任とは目の前で起こっている現実に反応する能力のことだ」とお伝えしています。目の前に起こるさまざまな問題と向き合い、それを解決していこうとする姿勢が責任です。そこには、「自分のやったことの結果は自分に返ってくる」というはっきりとした意識が育ちます。また、そう育つように導く必要があります。

水をこぼしてもお母さんが拭いてくれる。いけないことをしてもお母さんは許してくれる。お小遣いを全部使ってしまっても、頼めば追加のお小遣いが手に入る。宿題が終わらなくても親がやってくれる。このように「自分が何をしようと、そのあとは誰かが面倒を見てくれる。自分は困ることはない」と学んでしまっては、子どもに責任を教えることはできません。

 

そこで、ここ何年もの間よく相談を受ける、携帯やスマホやゲーム機について考えてみたいと思います。与えたら子どもがすっかりはまってしまって、食事中であろうが寝床であろうが、四六時中夢中になってやっているという内容です。小学生のお子さんを持つ方からは、「ゲームに夢中で、ほかのことが全く手につかず困っている」、中学生のお子さんを持つ方からは、「試験中も勉強そっちのけで成績が下がってしまった。どうしたらいいでしょうか」という相談です。私たち親は、子どもがそういった状態にならないように、子どもを守らなければなりません。それには、ゲームとの付き合い方を教えることです。

 

このような質問をされたとき、私はまず「買い与える前にどんな使用ルールを決めましたか?」と聞きます。すると、意外と多くの方がはっきりとしたルールは決めていないといいます。それでは仕方がないですね。「これは君のだから使っていいよ」と、ただ手渡せば、子どもは好きなだけ使います。使い方やルールを教えずに与え、「子どもが好きなだけ使った」と叱っても、叱られた子どもも困ります。

子どもは生まれつき、何が良くて何が悪いかを知っているわけではありません。何が正しいことかを教えましょう。「でも、中学生にもなればそんなことぐらいわかるはずだ」と思うかもしれません。もちろん彼らは、勉強せずにゲームばかりしていたらどうなるかわかっています。ところが彼らには、まだ充分に自分を律する力がありません。ゲームをやめて勉強しなければと思いながらも、気がつくと時間は過ぎているのです。

そこで必要となるのが、使用のルールです。ルールで「限界」を設定して、その枠組みのなかで楽しむことを教えます。親はゲーム機やスマホなどを与えるときの懸念をすべて言葉にして、子どもにルールを考えてもらうとよいでしょう。

たとえば、子どもがゲーム機を欲しいと言い出したら、

 

親 「ゲームを長い時間やって、宿題ができなくなると困る」

子 「じゃあ、一日30分と決める」

 

などという具合に、話し合いながら厳しすぎない使用ルールを決めるのです。ルールがあるからこそ、子どもはルールのなかで安心して自由に遊ぶことができます。

 

ルールをきちんと決めて、子どもにゲーム機を与えたという親御さんもいます。その方たちに、「ルールを守らなかったときの罰は決めましたか?」と聞くと、意外と罰を決めずに与える方が多いようです。「ルールは決めるが罰はない」というのは片手落ちです。やはり、ここは親子の話し合いで決めていきましょう。

 

親 「決めても守らなかったら困る」

子 「守らなかったら、次の日一日やらないって約束する」

 

子どもは自分で考えて、自分に対する罰も決めていきます。だからといって罰を受けるときに喜んで受けるかというと、もちろんそんなことはありません。でもここは、自分も親と一緒に決めたというのが重要です。

 

私が次に聞くことは、「ルールを決めて、罰を決めて与えたゲーム機。子どもがそのルールを破ったとき、その罰を適用しましたか?」。これに対して「はい」と答える方は少数です。「罰を決めていても、それを適用することはない」という親御さんがほとんどです。

「罰を適用する」という方にその内容を聞くと、「3日間ゲーム機お預かり」とか、厳しいところでは「スマホ解約」というのもあります。この罰はわかりやすいです。スマホを使うにあたって、親との約束が守れない場合は、そのスマホを解約され、使えなくなるのです。自分のやったことの結果が、明らかに自分に返ってきます。これを経験した子どもは、スマホを没収されたくなかったらどうすればいいかを考え、次第にうまく付き合えるようになっていきます。

ルールを破っても罰を適用しない親の子どもは、「ルールは守らなくても大丈夫だ」ということを学びます。結局親はそこまで本気ではないし、ごねれば見逃してくれることを学んでしまうのです。

 

「ルールを守らないとき、どのように叱ればいいですか?」と質問をされる親御さんがいます。叱る必要はありません。ルール違反があれば、静かに、「違反があったので預かりましょう」と言えばいいのです。子どもは反発するでしょう。そしたら再度、このように言えばいいのです。

「気持ちはよくわかる。3日間もゲームができないのは辛いよね。私も辛い 。でも、これは決まりだから預かります」

親の家は、子どもが世界とどのように付き合うかを学ぶ場です。子どもはたくさんの失敗をします。それでいいのです。親の家は失敗をする場なのです。ですから、失敗もルール違反も叱る必要はありません。親が叱らなくても、ルールが子どもを叱ってくれます。

今の時代、「パソコンもゲーム機もスマホも携帯もなしというわけにはいかない」と思われる親御さんも多いでしょう。だとしたら、それらとの付き合い方を教えることが重要です。それはまさに、子どもが「自分のやったことの結果は自分に返ってくること」を学ぶプロセスなのです。そして同時に、自分を律することを学ぶプロセスでもあります。

そうなるためには、親にも覚悟と忍耐が必要なのです。

 

親の覚悟と忍耐が、子どもに責任を教える。
親が叱らなくても、
ルールが子どもを叱ってくれる。

 

※責任意識の育み方やしつけの要点について、詳しく知りたい方は書籍『子育てが変わる親の心得37』をお求めください。

※“ステキなママのハッピーな毎日を応援する”ウェブサイト「It Mama」でも、書籍『子育てが変わる親の心得37』から、今すぐに実践できる親子のコミュニケーション方法についてご紹介いただいています!

関連書籍

菅原裕子『子育てが変わる親の心得37』

「親は子どもの才能を引き出すコーチ」大ベストセラー『子どもの心のコーチング』の著者による、厳しくも温かい子育てメッセージ。 子育てで大切なことは、子どもが自然に育つようにその子に合った環境をつくること。そのためには、子どもを変える子育てではなく、環境である親自身が変わる子育てが必要です。本書では、長年の人材育成の経験から多くの親子をサポートしてきた著者が、37のメッセージを通して、子どもと関わるすべての人へ子育てに対する心の持ち方・向き合い方を伝えます。完璧な親などいません。だからこそ、親が学んで知恵をつけることで、子育ては変わるのです。親の自己肯定感を高めることが、子どもを幸せな自立へ導きます。

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菅原裕子

NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事。有限会社ワイズコミュニケーション代表取締役。1977年より人材開発コンサルタントとして、企業の人材育成の仕事に携わる。従来の「教え込む」研修とは違ったインタラクティブな研修を実施して、社員と企業双方の成長に貢献。その後、企業の人育てと自分自身の子育てという2つの「能力開発」の現場体験をもとに、子どもが自分らしく生きることを援助したい大人のためのプログラム「ハートフルコミュニケーション」を開発。2006年、NPO法人ハートフルコミュニケーション設立。各地の学校やPTA、地方自治体で講演やワークショップ、セミナーを行い、多くの親や教育者から支持を得ている。
主な著書に『子どもの心のコーチング』『10代の子どもの心のコーチング』『お父さんだからできる子どもの心のコーチング』(以上、すべてPHP文庫)など多数。
NPO法人ハートフルコミュニケーション http://www.heartful-com.org/

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