新潟に「NAMARA」というお笑い集団があります。
ワハハ本舗とも浅からぬ関係がありまして、僕を含めて多くの若手が、新潟に遠征するたびにお世話になっている事務所なんです。
「なまら」は、北海道の方言で、「たいそう」とか「非常に」という意味だそうで、いっぷう変わった芸人たちが所属しています。
今回のネタは、NAMARAの芸人さんが受けた「ある営業」に同行させていただいた時のお話です。
以前、日本テレビの「ダウンタウンDX」でこの話をしたときは、一部カットされてしまいました。放送コードに引っ掛かったのか、それとも自主規制なのか――。今回はノーカット、完全版で書かせて頂きたいと思います。
偶然、新潟に仕事で来ていた僕に、NAMARAの江口歩代表が声をかけてくださいました。
「明日、刑務所に慰問ライブに行くんだけど……。体験ノンフィクションの役に立つかもしれないから、一緒に来るか?」
刑務所?? たしかに普通に生活していたら、まず接する機会はない場所です。僕も、生まれてこの方、刑務所には御厄介になったことはありません。こんなチャンスは滅多にない。社会見学でもするつもりで同行させて頂いたのですが――。
刑務所――そこはまさに異空間、驚きの連続でした。
当日、打ち合わせのため、僕たちを呼んでくれた刑務官の元を訪れました。すると、開口一番こんなことを言われたのです。
「私どもの刑務所、レベルが高いですよ」
な、何の? 芸人一同、顔色が変わりました。
聞くと、この刑務所に収監されている受刑者は、初犯の人が一人もいないのです。
つまり――世間ではやってはいけないことを、何度も何度も繰り返し――捕まって勤めを果たしたのに、娑婆に出たと思ったらすぐ舞い戻る――。まさに、文字通り、「塀の中の懲りない、本当に懲りない面々」なのです。
「要するにですね、犯罪者としての“スキル”が高いんです」
犯罪者にスキルって。そんなカジュアルな表現でいいのでしょうか。
ともあれ、放火魔もいれば、婦女暴行で捕まった人間もいるらしく、あらゆる犯罪者が集まっている場所であることはたしかのようです。
「あと、これはルールなのですが、受刑者はどんなに楽しくても、拍手をする時も、肩より上には絶対手を上げません。こんな感じです」
刑務官はそう言って脇を締めて、体の前で小さく拍手をしました。
「なぜか、わかりますか? コンサートなどで盛り上がると、拳を突き上げて声援を送ったりすることはよくありますよね。刑務所では、一歩間違うと、感情が高ぶりすぎて乱闘に発展する可能性があります。それを防ぐために、手を肩より上に上げることは禁止しているのです」
たしかに暴動は怖い――。しかし刑務官が続けた言葉に僕は耳を疑いました。
「お願いです、受刑者を“むやみに”笑わさんで下さい」
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