北里研究所病院糖尿病センター/センター長で日本における糖質制限のトップドクターである山田悟先生監修の『おいしく、楽しく食べて、健康に ロカボバイブル』。この本には、目からウロコの糖質制限の基礎知識と、今すぐ手に入る食品情報から、日々の生活での上手なロカボとの付き合い方など、最新情報が満載!
7月15日の発売以来、大きな反響を呼んでいる書籍より、糖質制限の基礎知識をご紹介します。山田先生が推奨する、意外と簡単に始められる「ロカボ」とは? 特別連載最終回です。
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朝は血糖値が上がりやすい時間。
「脳のために」と朝から糖分補給
これが一番危険です
ほかには、「白いものより、黒いものが健康的」という考え方もありますね。「白米より玄米」「うどんよりそば」「小麦粉より全粒粉」など、これらも糖質制限食ではすべて誤解です。確かに食物繊維は多く含んでいますが、わずかな違いですし、同じように高糖質です。健康にいいと大量に食べていたら、あっというまに糖尿病予備群です。
「鶏もも肉より、鶏むね肉の方がヘルシー」、これも大きな間違い。部位によって変わるのは脂質やカロリーの量であって、糖質量は同じです。さらに言えば、豚肉、牛肉、鶏肉、どれも糖質量はほとんどありません。これは魚でも同じ。しかも、肉や魚の脂質が心臓病予防に効果的なことは、日本やヨーロッパ、オーストラリアで研究報告がなされています。豚バラ、牛ロース、鶏もも、マグロのトロや赤身……etc .好きなだけ食べていただいて結構です。
低糖質甘味料は健康に良くないと考える人がいますが、適切な使用量を守れば楽しい食生活につながります。例えば、「シュガーカットゼロ」の成分であるスクラロースの上限摂取量は、体重60㎏の人が、毎日1ホールの低糖質ケーキを食べる量に相当します。まずありえない話ですよね。実際、本書で紹介しているスウィーツには、プロのパティシエが人工甘味料に工夫をこらして作っているものばかりです。天然の甘味料である「エリスリトール」にいたっては、摂取の上限量を設定する必要すらないと、アメリカ医薬品庁が認めています。
一方で、「脳には糖分が必要」というのは正解です。しかし、だからといって、脳のために糖分を摂取するのは間違い。なぜなら、たんぱくや脂を摂取すると肝臓が糖を作り出し、それを脳に送ってくれるからです。脳は肝臓が作った糖なのか、口から摂取した糖なのかを区別しません。さらにうれしいのが、たんぱくを摂ると基礎代謝が上がるということです。同じカロリーのたんぱくと炭水化物をそれぞれ摂取した結果、エネルギー消費量が、たんぱく摂取時の方が高いという実験結果が出ています。肉や魚、卵などからたんぱくを摂れば、あえて脳のために糖分を摂る必要はないのです。しかも基礎代謝アップのおまけまでついてきますし。
「脳と糖分」の誤解で一番怖いのが、朝から糖分補給をすること。朝は、血糖値を上げる成長ホルモンやステロイドホルモンの分泌が最も激しい時間帯です。そもそも血糖値が上がりやすいところに、「脳を目覚めさせる」と大量にジャムを塗ったトーストなどを食べれば、血糖値は急上昇します。
巷にある都市伝説には、半分だけ正しいものから、まったくのデタラメまで様々です。それらに惑わされず、正しい知識のもとにロカボライフを楽しんでください。