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わたしが挫折したときのこと

2015.11.09 公開 ポスト

第1回 芥川賞作家・羽田圭介

(後編)
人生はコントロールできない。だからコントロール可能な部分を見極め、突き詰める羽田圭介

 芥川賞作家・羽田圭介さんに「挫折」にまつわるお話をうかがった前編。冒頭から「挫折とは自分ではなく他人が決めるもの」という、この連載の根底が覆るような指摘を受けたが……その言葉の根底には、「コントロール不可能な部分はあっさり受け入れ、可能なところに関してはストイックに調整していく」という羽田さんの哲学とも言うべき考えがあった。(構成:清田隆之 撮影:菊岡俊子)

自分にも他者にも「とにかく怠慢が許せない」

『スクラップ・アンド・ビルド』を読んでいると、そのストイックな視線が他者に向くケースが目につく。例えば主人公の健斗は、恋人の亜美に対し、その“ぽっちゃり体型”を「イケる口」と自認しているにも関わらず、「ぽっちゃりな身体を作ってしまう豚のようなメンタリティは心底嫌い」と厳しい眼差しを向けている。ここにはドキッとする女性読者も多そうだが……。

「とにかく怠慢が許せないんですよ。それは自分に対してもだし、他者にもついそういう視線を向けてしまう。女の人を見ていると、遠回りになってもエスカレーターに乗る人って、いるじゃないですか。あれって逆に面倒くさくないのかな、とか。月イチ会員でジムに通ってるくせに、目の前の階段は上らないとか、そういうのを見ると『何かなあ』って思います。内実が伴ってないというか。逆に、例えば武田真治さんの『優雅な肉体が最高の復讐である。』には、誰にも求められていないのに一人で黙々と肉体の訓練に励む様子が描かれていますが、そういう、何のためにやってるかわからない努力をしている人は信頼できるなって思います」


孤独を満たそうとしたときに生じる面倒くささ

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羽田圭介

1985年東京都生まれ。明治大学卒業。2003年、「黒冷水」で第40回文藝賞を受賞してデビュー。08年『走ル』、10年『ミート・ザ・ビート』、14年『メタモルフォシス』で芥川賞、14年『盗まれた顔』で大藪春彦賞の候補にそれぞれなる。

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