1食あたりの糖質量を、一定の値に抑えて食べる「ロカボ」が、これまでの徹底的な炭水化物抜きやカロリー制限とは違い、“おいしく楽しく食べて健康になれる食事法”として、大変注目されています。
詳しくは『糖質制限の真実』(山田 悟著)を読んでいただくとして、この食事法で一番気になるのは、どれほどのダイエット効果が期待できるのかということではないでしょうか。
『糖質制限の真実』刊行記念として、著者の山田先生にお伺いしたインタビュー。「栄養学はこの10年で大きく変わった」と言う先生からは、今までの常識を覆すような驚きの話が次々と出てきました。
最終回となる今回、糖質制限にまつわる噂について聞いてみました。
(聞き手:佐藤誠二朗)
え、脳に甘いものは必要ではない?
———先生、ここまでのお話で糖質制限の素晴らしさはだいぶ分かりました。でも一方で、糖質制限に関して、良くない噂や批判もありますよね。
山田 ええ、私の耳にもいろいろ入っています。
———それらについて、先生はどう思われているのですか?
山田 糖質制限だけではなく、世の中に飛び交う医学や健康に関する情報は玉石混交です。いい加減な情報も、ネットなどであっという間に拡散してしまう時代です。糖質制限についての批判というのは、そのほとんどが根拠薄弱で、気にする必要はないですよ。
———そうなんですね。そう言い切れるのはなぜなのですか?
山田 『糖質制限の真実』に詳しく書いていますが、医学の分野では特に、“証拠”や“裏付け”と訳されるエビデンスという基準がものを言います。エビデンスは研究の方法によってレベル分けされますが、糖質制限はエビデンスレベル1や2という高いレベルでその有効性が証明されているからです。
———じゃあ、糖質制限批判というのは?
山田 すべて低いエビデンスレベルです。つまり、本来なら戦えるはずがないレベルなのに、批判してきているものばかりです。そういうピントのずれた批判も、いずれ目にしなくなると思いますよ。
———それを聞いて安心しました。と言いつつ、ひとつだけ確かめさせてもらっていいですか? アンチ糖質制限派の人はよく、「脳はブドウ糖が必要だから、糖をしっかり摂るべき」と言いますよね。私も頭をフル回転させなければならないような厄介な仕事をするときには、甘いものを食べると効率が良くなるような気がしてしまうのですが。
山田 それは錯覚ですね。脳はブドウ糖が大好物、ということ自体は間違いではありません。ただしその一つの知識から、脳のためにはたくさんの糖質、甘い物をとったほうがいいというのはとてもナンセンスな考え方です。
———そうですか? 理にかなっているような気もしますけど。
山田 人類は長い飢餓の時代を生き残ってきた種です。脳がブドウ糖を使うたびにいちいち低血糖になってしまうような人は、何百万年という飢餓の時代に死に絶えてしまっているはずなのです。
———つまり私が現代の人類である以上は。
山田 糖質制限をしながら脳をフル回転させても、まったく大丈夫です。口から糖を摂らなくても、人間の体の中では、脳と赤血球が一日に使う量のブドウ糖を作りだすからです。それにもし脳が本当に糖質不足に陥ったとしても、今度は体がケトン体という栄養素を作り出し、脳はそれを使います。これは体に備わった一種のサルベージ機能なんですね。
———じゃあ、受験生のお母さんが勉強している子どもの夜食に、甘いものやおにぎりを出すのは。
山田 愛情表現としては素晴らしいと思いますが、過剰な糖質摂取は脳の役に立つわけではありませんし、眠くさせてしまうだけかもしれませんね。
———そうなんですね。
山田 ただしその一方で、子どもには糖質制限をおすすめしません。20代以下のほとんどの人は、どんなに乱暴に食べても食後血糖値はあまり上がりません。特に10代の成長期の子どものエネルギー消費量は非常に高いので、糖質制限をする必要はないでしょう。もちろん、現代は肥満の子どもも増えていますので、過剰な糖質摂取は控えるべきですが、標準レベルの体重であれば気にする必要はないのです。
———じゃあ逆に糖質制限をするべき人というのは?
山田 摂るべき糖質の上限とともに下限を定めた緩やかな糖質制限=ロカボの食事法は、30代半ば以降のすべての方が取り入れたほうがいいと思います。日本人は欧米人に比べ、体質的にインスリンの分泌能力が低いので、食後高血糖になりやすいのです。ダイエットももちろんですが、それだけではなく、糖尿病予防のためにも、ほとんどの日本人にとって、とても意義のある食事法ということになります。
———分かりました。先生、色々とありがとうございました。
山田 具体的なロカボの食事法などについては『糖質制限の真実』にまとめてあります。是非、多くの方に読んでいただき、おいしく楽しく食べて健康になっていただきたいと思います。こちらこそ、ありがとうございました。
『糖質制限の真実』刊行記念インタビュー なぜあなたのダイエットは失敗してきたのか
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