『かわいくおごられて気持ちよくおごる方法』の発売を記念し、アラサーの男女2人で2010年代の「食事デートの流儀」を語り合う本対談。前編では、TheStartup代表取締役で東京カレンダーWEBプロデューサーの梅木雄平さんが「食事デートのスタイルは相手との関係性や目的によって変えるべき」ということを強調されました。後編では、男女の微妙なニーズの相違はありながら、「デートにおいて食事を重視する度合いは10割」と一致したお二人のこだわりある食事デート論が展開されます。
(構成:皆本類 撮影:牧野智晃)
◆可愛くてもリアクションが薄い女性はNG
はあちゅう 相手との関係性や目的によってデートにかけるコストは変わるとおっしゃいましたが、梅木さんは女性には食事代を含め「おごる」というスタンスですよね。最近は女性におごるのはもったいないというような男性の空気もありますが、それについてはどう思いますか?
梅木 僕は女性に払わせたことはほとんどないので、「おごらない男性」については、単純に引いてしまう。現在、雑誌『東京カレンダー』のウェブメディアのプロデュースを行っていることもあり、とくに会食の場では同席者をがっかりさせたくないというプライドもあります。
はあちゅう それに梅木さん自身、恋愛における食事デートの占める重要度が高いのではないでしょうか? 私は10割なんですけど、まったく気にしない人だっていますよね。
梅木 僕も10割です。だから、合コンの食事にもケチケチしたくない。あまり行かないものですから、最近の合コンの相場がよく分からないのですが、客単価7、8千円のお店を選んだところで結局「まずかった」と言われる方が僕にとってはリスクです。それならば、客単価1万5千円ぐらいまで上げて、確実に雰囲気がよくて美味しいものが食べられるようなお店を選びたい。そこで女性の分は全部おごると考えると男性側の予算は1人3万円。そうなると、経営者クラスしか誘えないのが現実ですがね。
はあちゅう 1回の合コンで予算3万円は男性にとっても結構な散財だと思うのですが、それでもおごってよかったって思える女性ってどんな人ですか? もちろん、おごられることを当然と思わず感謝するということが前提ですが。
梅木 いや、一番は「可愛い」のが前提です(笑)。ただ、いくら可愛くても、人に興味がないのか僕に興味がないのか、食事中すごく大人しくて料理に対するリアクションも薄いと一緒にいてあんまり面白いとは思えなくて。逆に、「食レポーター」並みに、リアクション上手な女性はいいですね。男はバカですから、「美味しい~!」みたいにわかりやすく、多少オーバーな反応の方が、頑張ってお店を選んでよかったと思うものですよ。
はあちゅう 男性に対しても、料理に対してもリアクション大きくしてほしいということですね。女性の自意識としては「わざとらしい」と思うぐらいの反応がちょうどいいのかもしれません。
梅木 そこのバランスが結構難しくて、わざとらしくない程度にリアクションが大きいとか、ツボを突いたリアクションができる人がいいんだと思います。不自然な喜び方だとさすがに男も見抜くので。
はあちゅう 絶妙にリアクションな上手な女性って、食事デートでいいお店に行き慣れている人が多いと思うんです。そういう方と食事に行ったときに、このお店に明らかに前にも来たことがあるなとわかってたりしたら、嫌な気持ちになったりします?
梅木 僕はちょっとドMで、自分より“レストラン偏差値”が高い相手との勝負を望むんですよ。自分の手持ちのコマの範囲内で戦える子には興味はなくて、「めちゃくちゃコイツいい店知ってる!」みたいな女性を相手に頑張るのが好きですね。
◆「好きなレストラン」で相手の“レストラン偏差値”が分かる
はあちゅう デート相手のレストラン偏差値ってどうやって測っているんですか?
梅木 すごくシンプルに、好きなレストランを聞きます。踏み絵的なレストランってあるんですよ。わかりやすいところで言うと、南青山の「L’AS」でしょうか。20代のキラキラ系OLで偏差値58以上の女性あれば一度は行ったことがある、ないしは知っているであろうというレストランがいくつあるんですよ。「この前、『L’AS』に行ったんだけど、クリスピーサンドが美味しかった」みたいなことを言っていると、「この女、偏差値60はあるな」とかね。
はあちゅう 「L’AS」に行ったことがあるか、ないか。そしてその人にとって「L’AS」が偏差値いくつのお店かってところで、同じ位置にいないと、一緒にご飯に行っても少なくとも「ご飯」の話題では盛り上がれないですよね。
梅木 レストラン偏差値62ぐらいの見定めとして西麻布の「ラ・ボンバンス」。創作和食のお店なんですが、メニューが謎解きになっていて、それを紐解いていくと料理の裏コンセプトがわかるって仕掛けがあります。話題がとぎれても、メニューの話に逃げることができるので、ファーストデートにもおすすめ。
はあちゅう では、偏差値65以上の強敵が出てきたらどういった提案をされますか? そういった方たちは高級なレストランに行き慣れていると思うんですけど、あえての大衆路線の戦略をとったりしますか?
梅木 僕は大衆的なお店には弱いので、そういう女性にはストレートに新店で勝負をかけます。ここ半年ぐらいにオープンしたところであれば、まだ行っていない確率の方が高いので。たとえば、あまりにも有名な新店にはなりますが、11月にオープンした恵比寿の「ユーゴ・デノワイエ」。「ロブションが認めた世界一の肉屋」という触れ込みで、とにかく予約が取れない。そんなお店の予約が取れたときには「一緒にいかがですか?」と誘いやすいですよね。
はあちゅう 新店を一緒に開拓してくれる人はいいですよね。それから、「食べログ」は一つの目安だけど、食べログの評価に振り回されすぎて冒険心がない人は苦手です。世間的には有名な超高級店だけど私は値段的にも、サービス的にもイマイチで、「過大評価でしょ」と思うお店がいくつかあって。そこを崇めて得意げにインスタに載せている人を見たりすると、「そっちの人ね」って思っちゃいます。自分の評価ではなくて、他人の評価で動く人。
梅木 わかる、わかる。この店の○○でそんなに感動するのって、その人の価値観や人生経験が透けて見えてしまう。
◆千円で「おごり・おごられ」がチャラになる?
はあちゅう それと、いいレストランを知りすぎて、男性にとって「可愛くない女」になっている人っていて、そういう人はすごく残念に感じます。私もネットの印象ではその一員に見えているのかもしれませんが。たとえば、うなぎの産地による味の違いって、普通の人はわからないと思うんですよ。でも、うなぎの食べ比べができるお店に行き慣れることでそれを知っちゃったりすることがあって……。味の違いを本当にわかってるのかどうかはさておきそういう「知りすぎてしまった女」が、食事デートにおいて、傲慢な奴だと思われないようにするための振る舞い方があったら教えてほしいです。
梅木 今回の本にあったけど、「ご馳走様は最低4回言うべし」というのはいいアイディアだと思いましたよ。まともな男なら女性に多少はおごると思うけど、おごられるのが当然だとは女性に思ってもらいたくはない。
はあちゅう でも、「ご馳走様」だけでチャラにしていいのかなっていう罪悪感も正直あります。相手はお金を払っているのに、こっちは言葉でいいものかと(苦笑)。
梅木 お金でいうと、たった千円でも賢い使い方ってあるんですよ。これをされていいと思った! と友人に聞いた話ですが、食事デートのときに、チョコレートとか千円程度のプレゼントを買っておいて、店を出た後に男性に渡すんです。別に千円分徴収したいってわけじゃなくて、事前にこんなものを用意してくれていたんだという気遣いが嬉しい。それで、男に「出来た子だなぁ」と思わしてしまえば、女性としては非常にコストパフォーマンスの高い投資だと思います。
はあちゅう 梅木さんの食事デートメソッドは1冊本が書けそうなぐらいですね。ちゃんと論理的だし(笑)。お話できて楽しかったです、今日はありがとうございました!
(おわり)