1. Home
  2. 暮らし術
  3. 名コラムニストが明かす、文章の「3つの基本」
  4. 文章のレベルが即アップする推敲のポイント

名コラムニストが明かす、文章の「3つの基本」

2016.01.02 公開 ポスト

第6回

文章のレベルが即アップする推敲のポイント近藤勝重(コラムニスト、ジャーナリスト)

 新聞や雑誌で長年健筆を振るい、端正な文章に定評があるコラムニスト・近藤勝重氏。早稲田大学大学院ではジャーナリズムコースの学生を相手に「文章表現」を教える授業を担当しています。そんな近藤氏が新刊『必ず書ける「3つが基本」の文章術』(幻冬舎新書)に自らのメソッドをまとめました。ここでは本書の内容を、試し読みとしてちょっとだけ公開いたします。
 今回は「特別編・推敲の重要3ポイント」から「(1)簡潔な文章であるか」をご覧いただきます。残りのふたつ、「(2)読みやすい文章であるか」「(3)味わい深い文章であるか」は、ぜひ本書をご確認ください。

 

 

 特別編 推敲の重要3ポイント

(1)簡潔な文章であるか

「私」の追放

 主語がなくても意味が通じるのが日本語の特徴です。主語を削ると、いい文章になるのも日本語です。
「山路を登りながら、こう考えた」とは夏目漱石の『草枕』の書き出しです。これに「私は」と入れると、どうなるでしょう。雰囲気まで壊れてしまいそうですね。「私」など、自分を指す人称代名詞は極力削ってください。

接続語や副詞を削る

「ので」「~が、~」「だから」でつないでいる文章、けっこう多いんです。伝えたいと思うあまり用いるのでしょうね。

夕食のとき、ご飯をこぼしたので、父に叱られたが、その父もおかずをこぼしたもんだから、気まずい空気になった。

この文章から「ので」「~が、~」「だから」を取り除きます。

夕食のとき、ご飯をこぼした。父に叱られた。その父もおかずをこぼした。気まずい空気になった。

 接続語を削ると、ずっとよくなるでしょ。
 ついでに「そして」「しかし」「おそらく」「さらに」……など、削れるものは削ってください。接続詞、接続助詞、副詞は筋道の通った文章を書き進めていくときには役立ちます。でもそのぶん、説明、報告調の冗長な文章になりがちです。読み直していらないと思えるものは削り、すっきりした文章にしてください。
「そんな」「こんな」とか、「そのような」「このような」が何度も出てくる文章もあります。「とされる」「としている」「と言える」なども多用されると、文章全体が堅苦しくなるばかりか、あいまいな印象になってしまいます。「私としては賛成しないことにしている」は、「私は賛成しない」でいいんですね。

言葉の重複チェック

「必ず必要」の「必ず」は重複です。必ず取ってください。「あとで後悔する」の「あとで」も要りません。「いまだ未解決」。強調して、そう書きたい気持ち、わからないでもありません。でも「いまだ」は重複です。「連日暑い日が続く」は「暑い日が続く」でいいのです。連日などとこれ以上、暑苦しくしないでください。
文章の手直しは削る、加えるといった方法で行いますが、削るを中心に見直すのがいいと思います。同時に誤りやすい表現や慣用句のチェックもしてください。

 頭をかしげる → 首をかしげる
 上にも置かぬもてなし → 下にも置かぬもてなし
 笑顔がこぼれる → 笑みがこぼれる
 公算が強い → 公算が大きい(*「公算」は確率・確実さの度合いをいうもので、一般的に大小で表現される)
 舌の先の乾かぬうち → 舌の根の乾かぬうち
 常軌を失する → 常軌を逸する
 食指をそそる → 食指を動かす、食欲をそそる
 雪辱を晴らす → 雪辱する、屈辱を晴らす、雪辱を果たす
 ……

『毎日新聞用語集—2013年版—』(毎日新聞社)からピックアップしたのですが、切りがありません。昨今、誤用が増えています。そのことを念頭に入れて……、じゃなかった、念頭に置いて見直してください。 

関連書籍

近藤勝重『必ず書ける「3つが基本」の文章術』

10万部突破のベストセラー『書くことが思いつかない人のための文章教室』著者が新たにおくる、一流の文章が書けるコツ。文章を書くのは苦手ですか?簡単に書くコツは「3つ」を意識すること。これだけで小論文や仕事の報告書、ブログ記事などどんな文章も短時間で、しかも他人が唸る内容に仕上げることができます。

{ この記事をシェアする }

名コラムニストが明かす、文章の「3つの基本」

 長年健筆を振るってきた名コラムニストが、自らのメソッドを明かした新刊『必ず書ける「3つが基本」の文章術』。ここでは試し読みや著者からのメッセージなど、本書がより楽しめる情報をお届けします。

バックナンバー

近藤勝重 コラムニスト、ジャーナリスト

毎日新聞客員編集委員。早稲田大学政治経済学部卒業後の1969年毎日新聞社に入社。論説委員、「サンデー毎日」編集長、夕刊編集長、専門編集委員などを歴任。毎日新聞(大阪)の大人気企画「近藤流健康川柳」や「サンデー毎日」の「ラブ YOU 川柳」の選者を務め、選評コラムを書いている。10万部突破のベストセラー『書くことが思いつかない人のための文章教室』、『必ず書ける「3つが基本」の文章術』(ともに幻冬舎新書)など著書多数。長年MBS、TBSラジオの情報番組に出演する一方、早稲田大学大学院政治学研究科のジャーナリズムコースで「文章表現」を担当してきた。MBSラジオ「しあわせの五・七・五」などにレギュラー出演中。

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP