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気仙沼ミラクルガール通信

2016.03.03 公開 ポスト

実話を元にした『気仙沼ミラクルガール』オヤジ書評家が涙腺崩壊した3つの理由。

気仙沼のアイドルグループ「SCK GIRLS」をモデルにした五十嵐貴久さんの新刊『気仙沼ミラクルガール』。早速読んで、涙腺崩壊したという書評家・佐々木克雄さんが、その理由を熱く綴りました!

イラスト・平沢下戸

 アイドル──好きですか? 応援していますか?
 歌、芝居、バラエティに一生懸命な彼・彼女。そして応援するファンたちによって、アイドルは今日まで続き、これからも続くのでしょう。近年はAKB48など多人数のグループが主流となり、またゲームやアニメなどの二次元とコラボするなど、様々なアイドルが登場しています。それらの共通項は、彼らが元気を届けてくれている、ということでしょう。

「震災から立ち上がり、地元気仙沼に活気と元気を取り戻そう」
 そんな思いで結成されたのが、本書『気仙沼ミラクルガール』に登場するアイドルグループ「KJH」です。小説ですからフィクションです。でも実在のモデルがいます。このことは本作を語るにあたってとても大事なポイントになりますので要チェック。(詳細は後述)

 では、一足先に読ませていただいた者として、「読んでみようかな」とか「どうしようかな」と思っておられる方々に、「だから読んで欲しい!三つの理由」を、あらすじと共に紹介しましょう。
 

理由1:思いが熱い!

 物語の舞台は、震災から半年たった気仙沼。
 高校に行かず、仮設住宅でゴロゴロ生活を続けている女の子、詩織が一人目の主役です。「行かなきゃまずいってわかってた。でも無理。高校へ行ってどうなるの?」と思う彼女は親しい人を震災で亡くしています。「卒業して、大学、就職という道があっても、車に轢かれて死んじゃうかもしれないでしょ? そしたら意味なくない?」──言い訳だとわかっていても、彼女は引きこもります。
 もう一人の主役はミュージシャンの夢破れ、三年前に東京から気仙沼に帰ってきたリュー。彼もまた震災で家族を失い、「どうにもならない。何やってもうまくいかない」とぼやきます。
 思うようにいかない現実に立ちすくむ二人の若者──彼らが語り部として入れ替わりで登場しますが、本当の主役はこの二人ではなく、リューの高校の先輩、サトケンさんなのです。
 彼を知っている地元民なら絶対にかかわりたくないというお方。そんな彼に運悪くつかまってしまったリュー……。サトケンさんは言います。
「気仙沼にアイドルグループを作る。アツいぜ、こいつは」
「今、おれのハートが燃え上がってる。大炎上だ。今なんだよ。うずうずしてる。走りてえんだ。考えてる暇なんかない」
 リューは「KJH」のスタッフとなって曲を作り、母親の勧めで応募した詩織も「応募者全員合格」でメンバーの一員に……。サトケンさんの「熱い思い」で地元アイドルが誕生します。
 

理由2:成長してる!

 アイドルを応援する醍醐味は、彼らの成長がオンタイムで見られることでしょう。「KJH」も仮設商店街スペースでのレッスン、11月の初ステージと成長を見せてくれます。
 けれど、順風満帆なワケではなくバッシングが始まります。歌がヘタ、ダンスがダサい、震災の被害者ヅラしたインチキアイドル……それでもスケジュールが入れば活動を続けるしかない。義務感、責任感が彼女たちを支え、そんな健気な姿を見ていた周囲も、いつしか応援するようになっていくのです。ここでもサトケンさんは熱い。
「続けてりゃ、夢は現在進行形で続いてく、死ぬまで追いかけりゃいい」
「人間はな、諦めなきゃ負けねえんだ」
 そんな言葉にリューは励まされ、詩織も二代目リーダー候補として厳しく育てられていきます。
 

理由3:実在するモデルがいる!

「KJH」は活動の幅を広げ、ご当地アイドルとして全国的にも名前が知られるようになっていく──というストーリーなのですが、モデルとなったのが、「産地直送気仙沼少女隊SCK GIRLS」という実在のグループです。
 彼女たちを知った著者の五十嵐貴久さんが現地に行って話を聞くと、すごいドラマがありました。
 この物語は実在する人物、実際の出来事を踏襲して書かれたものなので、「ああ、あれがあの人で、あの出来事がこんな風に書かれたのだな」と読了後に確認することができます。(全国区のアイドルプロジェクトに移籍した、あの子のモデルも出てきますよ)
 仮設商店街でのレッスン、心ないネットでのバッシング、それでも頑張る彼女たちを応援する人々、そして熱い男サトケンさんのモデル……実話を知ったとき、復興に向けて立ち上がろうとする気仙沼の心意気がビシビシと伝わってきて……もう、涙腺崩壊は間違いないですよ。

 アイドル──好きですか? 応援していますか?
 夢を追って目を輝かせている彼女たちがそこにいて、元気をもらっている自分もいるはずです。
 気仙沼で輝く彼女たちを、実話と重ね合わせて読み、応援し、元気をもらってください!(佐々木克雄/書評家)
 

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