3/15(火)緊急発売!!『巨人への遺言 ~プロ野球 生き残りの道』(広岡達朗著)からの試し読み最終回。再びの巨人・賭博事件に揺れながらも、3/25(金)の開幕を控えるプロ野球界。他にも様々な問題を抱える日本野球界に、広岡氏の愛のムチが飛ぶ―――。
2015年のパ・リーグは、新監督・工藤公康が率いるソフトバンクがブッチギリで連覇し、日本シリーズでも圧勝した。前年の日本シリーズで阪神に圧勝したことでも分かるように、チームはすでに出来上がっている。だからペナントレースの優勝が決まった時、私は工藤に「今年の勝利は元監督の王貞治や前監督の秋山幸二が苦労して強力なチームを作ってくれたおかげだと思え。インタビューで勝因を聞かれたら、そういえよ。お前は2年目、3年目で選手のことをよく見て育てなさい。それでお前の評価が定まるのだから」と伝えた。
もともと素直な工藤は「分かりました。そうします」といっていたが、工藤が監督として真価を問われるのは2年目だ。球団が豊富な資金力を生かして有効な補強を続け、王や秋山が鍛え上げたV2ホークスを、工藤がいかに工藤らしく進化させるか。勝つより守り、さらに強くさせることの方がいかに難しいか。工藤はこれから、監督としての本当の試練を受けることになる。
私は常々、「監督は、コーチや2軍監督として指導者の勉強をしてからなるべきだ」といっている。その意味では、華やかな実績とネームバリューを買われて解説者からいきなり監督になった工藤も、監督としてのあるべき姿ではない。しかし1年生監督として彼なりの工夫と努力はしたはずだ。
明るい性格の彼は、メディアに対しても「僕はバッティングは分からないので、担当コーチに任せています」と語っていたが、私が注目したのは3番から6番までを固めたことだ。「3番・柳田悠岐、4番・内川聖一、5番・李大浩、6番・松田宣浩」で、5年目で27歳の柳田は首位打者と3割、30本、30盗塁のトリプルスリーを達成した。
しかし4番の内川はシーズンを通して打撃不振に苦しみ、最終的には・284、ホームラン11本に終わっている。それでも最後まで4番をはずさなかったのは、内川の地力とチームリーダーとしての存在感を重視した監督の意志だったと私は思う。こんなことは、打撃コーチの一存でできることではない。