『ザ・タワー』や、喋る人面魚育成の『シーマン』をはじめとする新機軸のゲームを作り続けてきたゲームクリエイター斎藤由多加氏と、『ニコニコ動画』の全企画を起ち上げてきたプロデューサー横澤大輔氏。この二人のカリスマの頭の中を赤裸々に公開する酒場談義発進!(構成:納富廉邦)
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はじめに
横澤 僕、斎藤さんに初めてお会いしたのは20才だから、今年で15年経つんです。
斎藤 そうかー、俺、10年くらいかって思ってた。
横澤 いや、もう結構長いんです。僕は今、34才なんですけど、19の時に着メロの会社を作りまして、ドワンゴの専属の制作会社という形で。その時から携帯が進化する過程で、待ち受け、着メロ、着ボイス、ゲームとか、そういう感じでデジタルコンテンツ畑を歩いてきてて。で、着うたが流行ると、僕が物凄く暇になるんですよ。着うたは着メロとは違ってつくりこみがない。要は楽曲の権利の取得合戦なんですね。それでコスト対効果というところでいうと制作が邪魔になってきて。それで、暇になってきて、どういうことをやろうかと考えた時に、ドワンゴの川上と次はPCで行こう、ということで作ったのがニコニコ動画なんです。そこで、ニコニコ動画の企画周りとか、生放送の立ち上げとか、政治コンテンツやイベントコンテンツの立ち上げとか、そういうドワンゴで新規のビジネスの立ち上げをやって来た、というのが、ここ十五年くらいのキャリアになります。
斎藤 なるほど。
横澤 それで、斎藤さんとお会いしたのは、斎藤さんがシーマンを作られていて、僕らが着ボイスをやっていた時でした。着ボイスは、声に特徴があって決めゼリフがある方が受けてたんですよ。そこでシーマンに目をつけて斎藤さんにオファーをさせていただいて。もちろん、シーマンの音声収録が目的だったんですけど、知見の広い方だったので、僕が触れない色んなジャンルのお話とか、飲みながら聞いたりして、そのまま可愛がってもらっている15年という感じなんです。
でも、ニコ動を立ち上げてから5年くらいは会わない時期がありましたが、ついこの間、六本木でお茶してたら斎藤さんがいらしてて、「あれ、斎藤さんだ」とか思って、声は掛けられずにうろうろしてたら目が合って、声かけていただいて(笑)。そこで再会して、近況報告とかして、お話していると、最近多い「どの会社がどーした」論ではなく、本質論を話されて。今、仕組みの上に乗ってるものについて喋る人が多いことに違和感を覚えていたので、今考えないとならないものは仕組み自体を作り替える、いわば「踊り場」にあたる時代だと思っているんですが、そのタイミングで「対談連載をやらない?」と言ってもらえたんですよ。これは、僕の本質の部分も深まるなあと思ってやらせていただくことにしました。
それが今回というわけです。
斎藤 ありがとうございました。まさにその通りです。本で言えば、はじめに、みたいな感じにまとめて下さいましたね(笑)。それで、どんな風にやろうかと考えて、「このふたりに共通する、仕事の特徴はなんだろう」と考えてみた。で行き当たったのが「余白」だったんです。
横澤 「余白」ですか?
斎藤 うん。僕がゲームの題材にするのは、SFやファンタジーではなく現実のものです。いいかえると誰もが知っているもので、でも誰も意識していないものなんです。横澤さんがこれまで作ってきた「ニコニコ動画」は、動画の余白で筆談するしくみじゃないですか。なので、この「余白」というのがふたりのキーワードではないか、とね。
横澤 おもしろそうですね。僕、そういう話題に関しては結構マニアックなんですよ。
斎藤 マニアックでいいんだよ。
スターウォーズを成功させた「余白の力」とは?
斎藤 ということで、最初はね、今、公開されて話題のスターウォーズの話から始めませんか。で、そもそもこのシリーズ、最初はただの面白い映画作品群としか見ていなかったんだけど、今回からそれが大きく変化してきた。要は映画が「プラットフォーム化」してきた。プラットフォームというのは、ユーザー側からみると、「余白」みたいなものなんだよね。意識する必要がないもの、という意味で。水や空気みたいな、とらえにくいもの、というか。
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余白の力 ~二人の異能が語る無の中に有を見出す手法~
『ザ・タワー』や、喋る人面魚育成の『シーマン』をはじめとする新機軸のゲームを作り続けてきたゲームクリエイター斎藤由多加氏と、『ニコニコ動画』の全企画を起ち上げてきたプロデューサー横澤大輔氏。この二人のカリスマの頭の中を赤裸々に公開する!(構成:納富廉邦)