世界を飛び回る旅作家、小林希さん。訪れた国は50カ国、著書も多数ある旅のプロが選ぶ、今まで出会った中で人とイイ関係を結んでいる猫とは……?
文化や生活は違っても、猫を可愛がる気持ちは万国共通なんですねぇ。猫作家としても活躍されている小林さんが撮る、ほっこりした写真にも注目です!
No.1 イタリア ブラーノ島
それぞれの家の壁に赤やピンク、青など色を塗ったカラフルな街並のブラーノ島。昔、家を出て漁に出た夫が遠くからでも自分の家がわかるようにと、妻たちが塗ったのだそう。観光客の少ない静かな裏路地を歩いていた時のこと。どこからか猫が現れて、ちょっとの迷いも見せずに赤橙色の壁の家へ向かって行きました。慣れたように緑色の窓の下にくると「ニャー」とないたのか(その声は私には聞こえなかった)、中から住人の女性が出てきました。そして、猫は得意のジャンプで窓から中へ。この島の猫たちもまた、自分の帰るべき家の色が分かっているかのように見えました。
No.2 ドイツ ディンスビュール
ドイツ南部の中世の面影が残る小さな町ディンケルスビュール。100年ほど続く歴史ある老夫婦経営の可愛らしい宿があって、宿の看板猫のモーリィはオーナーのおじいさんの最愛の孫のように溺愛されています。ゲストの私にモーリィの好きな遊びを披露しようと一生懸命。毛糸玉で遊ぼうとするのですが、よく見ると、おじいさんがモーリィに遊んでもらっているみたいで、思わずクスクス笑ってしまいました。
No.3 ペルー クスコ
アンデス山脈の標高3400メートルにある古代インカ帝国の首都だったクスコで、可愛らしい黒猫がインディヘナの女性と遊んでいる所に出くわしました。私が近づくと、女性は笑顔で「ボニート(かわいい子でしょ)」と言って、手持ちの布をひらひらさせて、再び猫と遊び始めました。おそらく、その布は観光客への売り物だと思う……。でも、仕方がない。猫を遊ばせているつもりが、いつの間にか遊んでほしくなってしまうのは、どこの国でも同じなのです。
No.4 キューバ ハバナ
トロピカルな楽園キューバの首都ハバナは、スペイン人によってつくられた古いコロニアルな建築が印象的です。その街中を年代物のクラシックカーがガタガタと音を立てながら走り、道の傍らではキューバ人のおばあさんと白茶トラ猫がゆったりとした時間を送っています。まるで、おばあさんのお話につきあってあげているような健気な様子が、とても微笑ましく映りました。
No.5 ルーマニア シナイア
ルーマニアのなかで最も美しいルネサンス様式のお城、ペレシュ城があるシナイアは、標高が900メートルほどの位置にあるため夏でも涼しいです。ペレシュ城を見学し、壮麗な美しさに圧倒され呆然としながらの帰り道。はっと目が覚めたのは、目の前にたくさんの猫たちがいたからです。傍には猫の面倒をみるおばあさんが愛おしそうに猫たちをなでてやり、チュッとキスをしていました。猫たちの甘えたい気持ちがこちらにまで伝わってきました。
そんな光景をみながら、豪華絢爛なお城もいいけれど、やっぱりこういう瞬間に出会いたくて、旅をしているんだよなあ、と改めて得心しました。