

TBS系情報番組「王様のブランチ」でもおなじみ、“マコト先生”。
早稲田大学の市川真人先生より、幻冬舎文庫の創刊20周年を祝って、とても素敵なメッセージが届きました。
読んでみたら、単なるお祝いメッセージではありませんでした!
出版界における文庫とは。幻冬舎文庫の歩み。――などなど、読み応えたっぷりです!
* * *
「幻冬舎」の誕生から、二十年以上経った今も克明に思い出せるのは、五木寛之・北方謙三・篠山紀信・村上龍・山田詠美・吉本ばななの名前が並んだ新聞の全面広告が(まだカラーの少ない頃で、モノクロだったはずですが)、色鮮やかに記憶に刻まれたためでした。石原慎太郎『弟』や郷ひろみ『ダディ』をはじめ、スキャンダラスなベストセラーが次々生まれたこともあって、その名前と出版物は、華やかな大手や重みのある老舗とも違う、芸能とも色濃く結びついた破天荒さと妖艶さとともに、ぐんぐん頭角をあらわしていったのです。
そんな幻冬舎でも、文庫の誕生時にはずいぶん苦戦していました。そもそも「文庫」というスタイルには、(1)「文庫(ふみくら)」という語に由来する、優れた作品のアーカイヴの役目、(2)コンパクトなサイズで価格も抑えた普及版の役目、という二つの柱がありました。この路線を作ったのは、古典の必読書をシンプルな形式で刊行し、人々の文化や生活を向上させようとした岩波文庫(一九二七年創刊)と、日本の名作を中心にエンターテインメントや翻訳まで翼を広げた新潮文庫(第一期 一九一四年創刊)でした。両社は、幻冬舎文庫が生まれた一九九七年には膨大なアーカイヴを持っていましたし、講談社や角川書店も、自社の出版物を数年後に文庫化するスタイルで、充実したラインナップを構築していたのです。
ところが、当時最後発だった幻冬舎には、当時そうした蓄積がまだありませんでした。最初の六十二点には、一九九三年の創立から三年強の成果をかき集めたものに、他社の書籍の文庫化や書き下ろしが少なからず交じっています。加えて、書店の棚にたいてい著者名順に並ぶ単行本と違い、レーベル別に並ぶ文庫の棚は、しばしば陣地争いのようになります。二大老舗に加えて講談社や角川、それに集英社、文春、中公、筑摩……と群雄割拠するなかに割り込んで行くのは、人気作家や実力派を擁した企画や編集と、営業の強さにも定評があった幻冬舎とはいえ、そう簡単ではなかったことでしょう。
そんな幻冬舎文庫を特徴づけたのが、岩波や新潮とは違うエンターテインメント中心のラインナップと、「アウトロー文庫」などのジャンル性の強いサブ・レーベルでした。創刊時の六十二点にも五点の同文庫が含まれて、団鬼六が五木寛之・青山圭秀とともに三人だけ大活字になっていたものです。任侠ものやポルノもむろんありますが、団鬼六の将棋評伝、浅田次郎の賭博エッセイに梁石日のルポ、宮崎学や『薔薇族』編集長の回想録、AV男優・加藤鷹の人生論に、元祖パチプロ田山幸憲のパチンコ日記……と、目録には「濃い」タイトルが並びます。そこには、幻冬舎文庫がそれなしでは生き残れなかった「野蛮さ」が今でも漂っているようです(「あ~わ」までが並ぶ著者記号に、「犬」という項目があるのも幻冬舎文庫ぐらいですが)。
創刊から二十年目を迎え、62点だったラインナップは2964点を超えました。純文学から時代小説やミステリーなどのエンターテインメント、随筆・コミック・実用書まで、幻冬舎文庫の扱うジャンルが他のどの文庫よりも幅広いのは、「後発」として成長の期間が過ぎ、熟成期が訪れたことの証であるでしょう。
次の二十年、幻冬舎文庫はどんな成熟を見せるのか。そこに、どんな野蛮さがなお息づいてゆくのか――そんなふうに成長を見守ってゆくことができる「文庫」があることは、ぼく自身にも同時代の読者たちにとっても、とてもさいわいなことだと思います。
市川真人(文芸評論家・早稲田大学准教授)
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