シャッター商店街の問題を入口に
「コミュニティデザインの現場から見える、日本の問題点は何ですか」――このコラムを執筆するにあたって投げかけられたテーマの一つだ。
僕が携わるコミュニティデザインという仕事は、簡単に言うと「地域の課題を地域の人たちが発見し、解決するお手伝いをする」職業だ。2005年に立ち上げたstudio-L(スタジオ・エル)の仲間たちとともに、今は全国で約50のプロジェクトに携わり、問題解決のお手伝いをさせてもらっている。そうした現場で感じる社会の課題がいくつかあるので、これから何回かに分けて書き綴ろうと思う。
最近、「中心市街地活性化推進委員会」という霞ヶ関の会議に呼ばれることになった。この会議には、内閣官房や経済産業省や国土交通省のスタッフ、大学教授や商店街振興組合の方々が出席している。コミュニティデザインにとって、商店街や中心市街地というのは大切なテーマのひとつなので、今回はそのことについて書いてみたい。
ご存知のとおり、地方都市の中心部にある商店街は全国的に衰退しつつある。ものすごく頑張っている人たちがいる一部の例外を除き、元気がない。また、商店街だけでなくデパートも弱っていることが多い。すでにデパートが撤退してしまったという地方都市の中心部も多い。さらに郊外型の大型ショッピングセンターもかつての勢いを無くしている。20年ほど前にオープンした郊外型ショッピングセンターのいくつかは、すでに撤退したり空き店舗が多くなったりしている。最近では、郊外型の大型ショッピングセンターが駅前などに進出するようになってきた。京都駅の南側にも大きなショッピングセンターが誕生した。
今の10代、20代は、郊外型の大型ショッピングセンターで買い物したがらない人が多い。インターネットにつなげばお店はいくらでもあるから、わざわざ車で郊外まで行って、広い店内を歩き回って買い物するというスタイルが面倒になってきているらしい。服はZOZOTOWNで、日用品は楽天で、本はAmazonで買うという。大型ショッピングセンターに入っている若者向きの店舗にはあまり興味を示さない。こうした危機感から、大型ショッピングセンターは駅前に出店するようになったのかもしれない。今の若者が以上のような状態なのだから、今後数十年のうちに、車に乗って郊外の大型ショッピングセンターへ買い物に行くというライフスタイルは衰退するのかもしれない。こうした危機感から郊外型のショッピングセンターも新たな手を打とうとしているのだろう。
都市構造の変化という観点からすると、これまで広がってきた都市が今後は徐々に縮小することになるだろう。これから日本の総人口は減っていく。世帯数も減る。それに合わせて、大きくなってきた都市も、今後は小さくなっていかなければならないだろう。都市が大きいまま人口や世帯数が減れば、密度がスカスカになる。電気も通信も下水も、広がった都市の隅々まで通したまま、内部がスカスカになっていくというのは極めて効率が悪い。市民の税金が伸び切ったインフラの維持に使われてしまうと、ほかに使うべきことに使えないということになりかねない。だから極端に言えば、これから100年かけて、都市の外側をかつてのように農地や自然に戻すことを目指す時代がくるといえよう。
そんななか、弱りつつある「商店街」について考えてみたい。商店街についての一般的な意見は以下の2つに大別されるだろう。1つは「弱っているものは放っておけばいい。郊外の大型ショッピングセンターへ買い物に行っていればいいじゃないか」という意見。もう1つは「まちの中心に歩いて行けて『こんにちは』『最近、顔見せへんかったやん』などとコミュニケーションできる商店街がないと不安。だから今のうちになんとかしないと」という意見だ。
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