「それには、絶対触れるな……その場からすぐに離れて、どんなことがあっても人を近付けるな。今すぐに警察に連絡しろ!」
電話越しに聞こえる、切羽詰った自衛官の声。今回、僕はひょんなことから、命の縮む思いをすることになるのです――。
ある日、僕が自主的に見つけてきたネタを、喰始社長に披露したときのことです。いつものごとく永遠とも思えるダメ出しの後、半泣き状態の僕を見かねた喰社長、助け舟つもりで新しいお題を出してくれました。
「優勝してきなさい……どんなことでもいいから」
どんなことでもいい? 今まで、数々のハードな指令を出し続けていた喰さんも、流石にネタが尽きたのでしょうか。
でも、社長の口から発せられたその軽い一言が、僕達にはとてつもない試練となるのです。この日から僕は、何かの大会で優勝するその日まで、全国を駆け回ることになりました。
奈良の鹿煎餅飛ばし大会。
岩手の卓袱台返し世界大会。
青森のスコップ三味線大会。
山形のサクランボの種飛ばし大会。
広島の下駄飛ばし大会。
――これらの大会についても、いずれ話す機会もあるかもしれませんが、今回は、千葉の成田夢牧場で毎年開催される「穴掘り世界大会」に参加した時のお話をしたいと思います。
穴掘り世界大会のルールは単純明快。制限時間は30分で、最大6人編成。多くの参加者は5人ひと組で参加するのですが、その間、ただただ人力だけを頼みに穴を掘るだけ。最終的に一番深く穴を掘ったチームが優勝です。そして、表彰式が終わったら、掘った穴を自分達で埋めて帰ります。
世界大会といっても、ただ穴を掘り、そして後始末をして帰る、そんな大会に集まる物好きがそれほどいるとは思いませんでしたが――なんと、今回259チームが全国から集まって来る知る人ぞ知る有名な大会だったのです。しかも、集まったチームのほとんどが、水道工事、ガス工事、電気工事などに従事している、穴掘りのスペシャリストの方々で、いうなればプロフェショナル。
この大会では、毎年3メートルを越える記録が続出するそうです。3メートルということは、底に降りたら、一人では上がれません。たった30分で3メートルも掘れるものなのか?
過去12回を数える大会での大会記録、すなわち世界記録は、3メートル85センチ!
その時、地面からは地下水が湧き出たそうです。
ここまできたら、穴掘り大会ではなく、もはや井戸掘り大会です。
しかし、社長からの指令は、なんでもいいから優勝しなさい、というもの。チーム編成には細心の注意を払って仲間を選びました。
「チーム・コラアゲン」を紹介します。
キャプテンは僕、コラアゲンはいごうまん。構成員はワハハ本舗の若手から――現在は解散してしまいましたが――ラジー・クイーンの三人。
その中の二人、マンボウ君とキッド君はなんと、芸人をしながらリングに上がっている、西口プロレスの現役レスラーでもあり、体力は折り紙つきです。
しかし、もう一人の男に一抹の不安がありました。それは……チェリー吉武。 震災のボランティアの話にも登場しましたが、体力はあるのですが、頭が残念な男でして……何をしでかすか未知数なのが悩みの種でした。
ここから先は会員限定のコンテンツです
- 無料!
- 今すぐ会員登録して続きを読む
- 会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン