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今日から幸せになれるアドラーの教え

2016.04.30 公開 ポスト

自由に生きる人は嫌われる岸見一郎


 『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)が日本・韓国2か国で累計230万部突破など、今話題の<アドラー心理学>とはいったいどんな思想なのか?
アドラー心理学の第一人者・岸見一郎氏の原点ともいうべき『生きる勇気とは何か』、『人生に悩んだらアドラーを読もう。』の2冊同時発売を記念して、幸せに生きるためのアドラーの教えを抜粋して4回連載でご紹介します。
 第1回は、他者から嫌われるということについて考えます。


他者のイメージから自由になる

 人に合わせないというのは、人が自分について持っているイメージに合わせないということである。そのイメージとは、多くの場合、他者の自分への期待である。しかし他者が私の期待を必ずしも満たさないように、自分も他者の期待を満たさなくてもいい。人が自分について持つイメージから離脱したい。そうすることで、どれほど自由になれることか。

自立とは行動面だけのことをいうのではなく、このように、人が自分について持っているイメージから自由になることも意味している。とはいえ、そうすることによって、他者は自分のことをよくは思わないかもしれない。人から嫌われるということもあるだろう。そして、そのことを望まない人はあるだろう。しかし、誰からも嫌われないという人がいるとすれば、そのような人は、嫌われないために、他者が自分について持つイメージに合わせているからである。今いった意味で自立し、自由であるためには、自分のことを嫌う人がいるということは、自分が自由に生きているということの証であり、支払わなければならない代償であるといえる。

 しかし、よく考えてみると、人は自分について何も期待していないかもしれないのである。人から期待されていると思い込んでいるだけかもしれない。先に書いたように、私は高校生の頃、英語の先生に自分ができると思ってほしかった。そのために、先生からできないという評価を受けることを私は極度に恐れた。たしかに、私の方は、そのように思っていたのだが、先生の方は、私をできる生徒だと思っていたかはわからない。人は自分に何も期待していないという現実を受け入れることには勇気がいる。

 私も教師として自分が教えている学生が優秀であった時、そのことを喜んだのは本当である。そのこと自体は問題ではないだろう。しかし、時にそのような期待が負担になることはたしかにある。このことを思うと、他者が自分に期待していないとまで思わなくてもいいだろうが、他者が自分をどう思うかということから自由になりたい。

ありのままのあなたでいいのか
 さて、これまでのところで、自分を実際よりもよく見せる必要はなく、また、他の人の見方に自分を合わせる必要はないということを見てきた。しかし、それでは、今のありのままの自分であればいいかというと、ここには微妙で難しい問題がある。

 アドラーがこんなことをいっている。
 「もしも子どもを甘やかし、注目の中心に立つようにさせていれば、他の人によく思われるに値する努力を何もしないで、自分はただいるだけで重要だと自分のことを見なすことを教えたかもしれない」
 そのままのあなたでいいというようなことをいわれたら、何もしなくても、ただいるだけでいいのだと思う子どもがいるということになる。

 この問題については、視点を区別することが必要であり、どんな文脈でいわれているかを見極めなければならない。自分を実際よりもよく見せようとしている人があれば、あるいは、注目を引くために、問題行動をしている人があれば、まわりの人、例えば、家族は、その人に、そんなことをしなくてもいい、そのままでいい、といってほしい。
 なぜ子どもは自分をよく見せようとしたり、問題行動をするようになるかといえば、親が子どもの中に理想の子どもを見るからである。これは先の言葉でいえば、属性付与である。親が子どもに理想の子どもという属性を与えれば、子どもがどんなに努力をしても、親は子どもをいわば減点法で見てしまうことになる。親の期待に添えればいいということになるだろうが、親の期待に添えないと思った子どもは、それでも親に注目されたいのであれば、親を困らせるようなことをするしかない、と考える。そこで、親には、そのままの子どもを見てほしい。

 ただ生きているだけで、ただいるだけの子どもを零点としてイメージすれば、どんなことでもいわば加算法で見ていくことができる。あるいは、行為ではなく、存在そのものを受け入れるということもできる。そのままでいいとは、親子関係を例にとれば、このように子どもではなく、親の視点からいえることである。

 他方、本人自身は、そのままでいいかというと、今とは違うあり方を選ぶことが必要なことはある。しかし、そうすることができるためには、これまで見てきたように、実際よりも自分をよく見せようとすることはなく、他者の自分についての見方に合わせることはない。そのようなイメージから離脱するためには勇気がいるということを先に見たのだった。また特定の他者の自分についてのイメージではなく、世間的な価値観に照らして、自分のことを受け入れることができないということもあるだろう。その場合は、一般によしとされる価値観を疑ってかかればいいのである。

 このコラムは、『生きる勇気とは何か アドラーに学ぶ』より抜粋しています。詳しくは本書をご覧ください。
 第2回「人はこの性格で生きていこうと決める」は5月2日(月)掲載予定です。

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今日から幸せになれるアドラーの教え

『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)が日本・韓国2か国で累計230万部突破など、日本のみならず世界で話題の<アドラー心理学>。

第一人者の岸見一郎氏による、電子書籍『生きる勇気とは何か アドラーに学ぶ』『人生に悩んだらアドラーを読もう。』の2冊同時発売を記念して、アドラー心理学の思想をわかりやすく紹介いたします。

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岸見一郎

1956年、京都府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋古代哲学史専攻)。著書に『アドラー心理学入門』(KKベストセラーズ)、『幸福の哲学』(講談社)、『人生を変える勇気 踏み出せない時のアドラー心理学』(中央公論新社)、『老いた親を愛せますか?それでも介護はやってくる』『子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気』『成功ではなく、幸福について語ろう』(幻冬舎)訳書にプラトン『ティマイオス/クリティアス』(白澤社)などがある。共著『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)はベストセラーに。

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