イチロー、スティーブ・ジョブズ、羽生結弦……。一流はみな「ネガティブ思考」で成功した! ネガティブ思考がもたらすメリットを、科学研究結果をもとに分かりやすく解説した『一流は知っている! ネガティブ思考力』。
ネガティブなまま成果を出すことができる〈防衛的悲観主義者〉は、無理してポジティブ思考になる必要なし!「当てはまるかも……」と思ったみなさん、その力を存分に活かす方法を知らなきゃ損ですよ。
防衛的悲観主義者をポジティブな心理状態にさせると、かえってパフォーマンスが下がってしまう。つまり、ネガティブであるところにメリットがあるのであって、ポジティブになるとそのメリットが失われてしまう。
ノレムたちは、このようなネガティブ思考のもつポジティブ・パワーを証明するための実験を行っている。
実験に先立って、防衛的悲観主義の人たちを2つのグループに分けた。仮にそれをAグループ、Bグループとしよう(防衛的悲観主義とは、これまで実績があるにもかかわらず、将来のパフォーマンスに対してはネガティブな期待をもつ心理傾向を指す)。
Aグループの人たちに自分の課題のできを予想させると、かなり低い成績を予想した。それは防衛的悲観主義者なのだから、当然のことと言える。
Bグループの人たちには、「あなたの実力なら、きっとうまくやれるはず」と鼓舞することで、ポジティブ思考を吹き込んだ。それによって、Bグループの人たちは楽観的な気分になり、Aグループの人たちよりも良い成績を予想した。
では、実際の成績はどうなっただろうか。結果をみると、実際の成績は、Aグループの人たちの方が、Bグループの人たちよりも良かったのである。
ポジティブ思考を吹き込まれ、良い成績を予想したBグループの人たちの方が、Aグループの人たちよりも、実際の成績は悪くなってしまった。ポジティブ思考を吹き込まれることで楽観的な見通しをもち、自信をもって課題に取り組んだはずのBグループの人たちの方が成績が悪かったのだ。
これにより、防衛的悲観主義の人は、ネガティブなままでいた方が成果を出すことができ、ポジティブになるとかえって成果が出せなくなることが証明されたわけである。
ポジティブ信仰の弊害は、これまでにみてきたように、経験的に感じている人も少なくないはずだが、それが科学的にも裏づけられたことになる。
まさにネガティブ思考のポジティブ・パワーと言える。