「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」
これはかの有名な孫子の兵法の一節です。
医学部受験者にとっては、敵とは志望校合格のための課題であり、己とは自分の実力です。
難関といわれる医学部合格のために無駄と無理のない勉強法とは何か。
「逆転合格の武田塾」を設立し、「医学部受験に特殊なことは何もない」という林尚弘さんによる著書『医学部受験の真実』より、参考書だけで医学部に合格できる、最短ルートの勉強法をご紹介します。
第3回は合格のための科目別勉強法について。
<点数が稼げる、選択科目の選び方>
自分の得意分野を選ぶのは当然だが、点数が稼げる教科なのかどうかを見極めておく必要もある。例えば、数学が得意だったら物理を選択科目にするべきだという説があるが、必ずしもそのとおりとはいえない。
物理と生物に、どういう違いがあるのかというと、最も大きな違いは、物理がハイリスク・ハイリターン科目で、生物はローリスク・ローリターン科目であるという点だ。
合格点を取るだけだったら、生物のほうが勉強量も少なくていいし、楽に点が取れる。しかし生物で超高得点ないし満点を取ろう、点数を稼ごうと思っても、至難の業だ。
逆に物理ならば、とことん勉強すれば満点が狙える科目だ。ただし、物理を極めることができなかったら、他の科目の足を引っ張ることになる。さらに物理の勉強は、生物を勉強するよりも遥かに、演習に時間がかかるものである。
このように選択科目によって、それぞれの特徴がある。受験生一人ひとりが、志望校の出題傾向と今の自分の到達点から、選び抜くことが必要だ。
例えば、生物以外の英語と化学で合格点を稼げるレベルに到達しているならば、無難な生物で構わない。しかし英語が苦手だったりして、理科科目で点を稼がなければならない状況ならば、あえて物理を選択して、高得点を叩き出さなければならなくなる。
このように物理と生物は、科目自体の特徴が異なるので、好き嫌いだけでなく、他教科とのバランスを考えながら選択することが必要になってくる。
<出題傾向を見極め、受験対策を考える>
なお、化学は基本的に、大半の医学部受験生が勉強する科目だが、異常なまでに難しい科目だ。難関大学にありがちな難易度の高い入試問題が、とてつもなく膨大な問題量で出題されることがある。
さらに実験考察といって、問題文が長く、それを読みながら理解して解いていくという、生物の設問に見られるような出題のされ方をすることもある。
どちらも難しい化学の入試問題だが、解答の仕方がまったく違う。大学ごとに、この二つの出題傾向に特徴があるので、受験する大学の出題傾向に沿った受験対策が必要になってくる。
前者の、計算などの量が多い出題傾向の入試問題への対策としては、簡単な問題集をいかに速く解くかという訓練が必要であり、逆に後者のように長い文章による設問で、考えさせられる出題傾向の入試問題に対しては、難しい参考書をじっくり読み込むような対策が必要になってくる。
このように化学については、各大学の出題傾向によって、取るべき受験対策がまったく違ってくることがある。志望校の過去問を確認して、併願する大学も、似たような出題傾向の大学を選ぶことが必要かもしれない。
<小論文も、志望校別に準備する>
医学部受験には、小論文と面接が付きもののように語られる。確かに、事前に設問の内容を予測して、それなりに自分の考えをまとめておくことは必要になる。ただし医学部受験の小論文だからといって、必ずしも医学部系統の出題がなされるとは限らない。
例えば、順天堂大学医学部医学科で過去に出題された小論文の設問は、写真とそのタイトルが与えられて、「この写真を見て、どのように思うか800字以内で述べなさい。」だった。
最難関大学の医学部では、医学に関する考察、最近の医療を巡る時事問題や研究成果について出題されることもあるが、色濃く「医系小論文」という特徴を持った設問は稀にしか出ない。
出題されるテーマよりも、受験する大学によって、小論文がどのような設問形式で出されるかの概要を、念頭に置いておくことが大切になる。これは、面接試験にも共通していえることだ。
なお、武田塾では、小論文に対する学習指導にも力を入れているが、主には添削方式による指導だ。小論文の書き方には、押さえるべきポイントはもちろんあるが、志望校別に一人ひとりの現状に照らして、最善の道を探るしか、指導方法はない。
第4回「私大医学部と国公立大学医学部では月とスッポン」は7月6日(水)公開予定です。
医学部受験のウソとホント
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