世間を震撼させ続けている欠陥マンション問題。その裏には複雑かつずさんな不動産業界の病理がありました。それを踏まえた上で、どうすれば安全な住まいを獲得できるのか。まずは日本特有の「新築信仰」を捨てることが大事だと『新築マンションは9割が欠陥』の著者・船津欣弘氏は言います。
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ここまで、建築業界の構造的問題や悪しき習慣により、偽装や不正が繰り返されてきた実態をお伝えしてきました。これからマンションを購入しようと検討している方にとって、不都合な真実だったのではないかと思います。私が今までに検査したマンションでは、ほぼ100%、なんらかの不備や欠陥が見つかっています。これが現実なのです。新築マンションを購入するということは、こうしたリスクを背負うこともセットでついてくるのだと、まず認識ください。
気をつけて頂きたいのは、「いまが買いどき」というセールストークに惑わされないことです。消費税の引き上げや、地価の上昇傾向、また低金利も重なっている昨今、
「地価も上がっていますので、さらに地価が上がる前のほうがおトクです!」
「金利が低い、いまが買いどきです!」
「消費税も上がります!」
「賃貸マンションの家賃は捨てるようなものです!」
このようなセールストークが繰り広げられていると思われますが、どんな時でも「いまが買いどき」と言われますので気をつけて下さい。
しかも、最近のマンション市場はバブル期の再来かと思うほど価格が高騰しているという問題もあります。東京オリンピック開催後は一転、価格下落の予測も出ていますので、やはり私は「いま新築マンションを買うのはやめたほうがいい」と言いたいです。どうしても持ち家が欲しいという方は、中古マンションを検討してみてはいかがでしょう?
中古物件の大きなメリットは、すでにその建物が存在しているので、実際の住環境を現実的視点で確認できる、ということがまず挙げられます。また、維持管理状況が確認できるのも中古のメリットといえます。維持管理がしっかり行われてきたマンションはそれだけの「実績」があるわけですから、資産価値から見ても魅力的であり、その後も価値が下がる可能性は小さいかもしれません。
これらを踏まえて、不動産業者的観点からお勧めするとしたら、次のような条件を挙げたいと思います。ベストは、
●2003年~2005年竣工(築11~13年)で、なおかつ大規模修繕を実施済み
の物件です。
2003年~2005年頃は、後の2006年~2007年の不動産プチバブルといわれていた時期に竣工したマンションに比べ、地価も平均工事単価も低かったため、全体的に割安と言えます。つまり販売時の価格が同じであっても、専有面積が広いマンションが多いということです。ただ、この時期の建物ですと大規模修繕をまだ実施していない可能性もあります。その場合、
●2000年以前に竣工した物件で、築年数を気にするのであれば、1回目の大規模修繕を実施済み物件(築16年程度)
●築年数を気にしないのであれば、2回目の大規模修繕を実施済み物件(築20年程度)
も候補に挙がります。
大規模修繕実施後がおすすめなのは、施工不備などが補修されている可能性が高いこと、そして、次の大規模修繕実施時期までは時間がありますので、修繕に必要な足場が立てられてバルコニーに洗濯物が干せない、などの制約が当面発生しないからです。
新築マンションは9割が欠陥
社会を震撼させている欠陥マンション問題。
国内有数の大手デベロッパーやゼネコンが手がけているにもかかわらず、なぜ欠陥はなくならないのか。
ずさんすぎる現場の実態に業を煮やした建築検査のプロである著者が、5月30日発売の新書『新築マンションは9割が欠陥』でその病理を紐解いていきます。
ここでは、書籍から一部を抜粋し、複雑に絡み合った欠陥マンションの要因を明らかにすると同時に、本当に賢いマンション購入についてもご紹介します。