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福沢諭吉の『学問のすゝめ』

2016.07.07 公開 ポスト

福沢諭吉の『学問のすゝめ』 政治編(1)

徳川幕府から明治政府への大転換。でも庶民の大多数は「へー、そういうことなの?」という程度橋本治

好評発売中の橋本治著『福沢諭吉の『学問のすゝめ』』から、一部を抜粋してお届けする、試し読み第二弾。7月10日(日)の投票日までは、「政府と国民」の黎明期に関する解説を少しずつご紹介します。そもそもの始まりはこんなふうでした。

 明治維新政府というのは、徳川幕府を倒すことに功績のあった人間達の作った政府で、彼等はそれまでほとんどなんの意味もないような存在だった「天皇」をかつぎ出し、天皇に承認されるような形で「政府」を始めました。その時代の変化は、国民にとって「へー、そういうことなの?」という程度のものです。

 国民にとって、とりあえず「時代の変動」は関係のないもので、だからこそ新しく出来上がった「政府」だって、当座は関係のないものです。だから、「議会を作れ、俺達も政治に参加させろ」という声なんかは上がって来ません。それも当然だというのは、当時の国民がそんな「方法」のあることを知らないからです。

 徳川幕府の時代と明治政府になってからとでどう違うのかということは、普通の国民にはよく分かりません。明治になって新しい西洋風の建物が出来たことは大きな違いですが、「目に見える違い」以外のことはよく分かりません。だから福沢諭吉は、

《然(しか)るに幕府のとき、政府のことを御上様(おかみさま)と唱え》として、旧幕府時代の悪口を『学問のすゝめ』の中に強調して書くのです。

 

 諭吉は旧幕府の何が一番ダメだったと思っていたのでしょう? 政治編(2)に続きます。 明日7月8日(金)公開。

関連書籍

橋本治『福沢諭吉の『学問のすゝめ』』

君も賢くなれる、と諭吉は言った――。で結局、何を学ぶのか? いまだにベストセラー!!(当時20万部、岩波文庫71万部) 感動!興奮!泣ける!! 橋本治の熱血講義 全十七編のうち「初編」(冒頭たった10ページ)だけ読めばいい。 超有名なのに、みんな実は内容をよく知らない、 『学問のすゝめ』の魅力とは― 自由とは? 平等とは? 明治政府って何やるの? 天皇ってどんな人? 藩と国はどう違う…?

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福沢諭吉の『学問のすゝめ』

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橋本治

1948年東京生まれ。東京大学文学部国文学科卒業。小説、評論、戯曲、古典の現代語訳、エッセイ等、多彩に活動。『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)等、著書・受賞歴多数。

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