「堀江貴文ゲーム業界に参入スペシャル」第二回は、制作中の人狼ゲームアプリの具体的な内容や、このゲームでやろうとしていることから、人狼ゲームというプラットフォームが持つ面白さの秘密まで、「モノづくり」のエキスパートたちの見解として語られます。
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アナログ感を大事にするアプリを
斎藤 今回のアプリの特徴はなんですか?
堀江 世の中に人狼のアプリはすでにいくつもあるんですが、ありそうで意外にないのが、全員のスマホアプリがネット経由で同期している、というものなんです。
横澤 今世の中に出てるものはアプリをインストールした一台を全員で回覧しながら、ですもんね。でもアナログゲームってのは、人間の感情みたいなものが入ってくるから、それをデジタルにしようとすると複雑で難しくなりすぎる傾向ってありませんか?
堀江 なので僕らが作っているものは「会話を妨げる機能は入れてはならない」です。例えば全員が一台ずつスマホを持って遊ぶから、メンバー間で筆談が出来るんだよね、でも、それはあえてカットしました。
横澤 それは会話を妨げるから?
堀江 そう。アプリのAIがゲームマスター役をするんですが、彼が色々喋り過ぎるのもカットしました。アナログ性をとても大切にしなきゃいけないということで。その代わり、スマホならではのものってあるじゃないですか。例えば、「私は占い師です」とカミングアウトする時に、カミングアウトボタンっていうのがあるんですよ。そこ押したら、全員のスマホが「プルッ」と震えたりとか。つまりカミングアウトというのは、このゲームのクライマックスであると位置づけ、そういう時は演出装置としてスマホを使おうと。あと、リアルタイムで表示されるイイネ、ヨクナイのボタンも付けました。例えば、「こいつ言ってること何か怪しいな」と思ったら「ヨクナイネ」が集まる。
斎藤 人狼とかって、企業研修に使ってたりしますか?
堀江 ありますよ。結構あります。普通にやってます。
斎藤 それはどういうところを見るようになってるんですかね?
プレイヤーの性格が見えるゲームは良いゲーム
堀江 僕は実際にそういう研修に参加したことがないんで分かんないんですけど、少なくともリーダー性はあからさまに出ますね。リーダーが処刑されると、致し方なく、残った参加者の中で一番仕切れる奴が、彼なりのやり方で仕切り始めるんですよ。
斎藤 次のリーダーが生まれてくるわけだ。
堀江 ええ、しかし比較的まともなことを言う人が次に殺されたりするんですよ(笑)。
横澤 仕切り屋が殺されていくっていう傾向ですね。うるさい奴から。
堀江 賢い人狼役の人は、そういう流れを見るんですよ。簡単に言うと「こいつはうるさいから殺しとこう」と。
斎藤 あ、そうか、誰が人狼か分かった上で見てると、確かに頭の良さとか分かるかもね。
堀江 頭の良さも分かるし、あとフェアネスとかも分かるし。
横澤 したたかさとか。
堀江 あとルールの習熟度の早さとか。
斎藤 こいつは頭良過ぎてあぶないな、みたいな。会社ごと騙されるんじゃないかとか。
堀江 本当に人間の本質が出ますよ。
斎藤 やっぱり、人間の本質とか性格が出るのが良いゲームだと僕は思うのね。逆に、性格が出ないゲームって云うのはつまんないゲームだと思う。
AIと人狼の未来
堀江 僕はアプリの中に、BOTとして、プロと一緒にプレイができる機能は入れたいなあと思ってますね、将来的には。
横澤 AI的な、遊べるプレイヤーみたいなことですね。
堀江 そうです、そうです。実際、人狼を、AIで人間と対抗してやろうというプロジェクトもありますし。
横澤 それこそ、もう余白ですよね。余白であって、ネットとリアルのハイブリッド。
堀江 面白いことに、今って、ネットからリアルへの時代なんですよね。リアル脱出ゲームが、その典型だと思うんだけど。僕、リアル脱出ゲームやるまで、脱出ゲームの存在を知らなかったんですよ。元々Webゲームじゃないですか。それをリアルでやったら面白いじゃんってところで始まったのがリアル脱出ゲーム。あれ、凄い勢いで普及したじゃないですか。ただ、リアル脱出ゲームは毎回毎回、シナリオとか作んなきゃなんないから大変なんですけども。
斎藤 作家が毎回、知恵絞って。
堀江 かなり大変らしいですよ。
斎藤 生身の参加者によってゲームが変わる面白さ。
堀江 今、改めて、みんなリアルな場をちょっとずつ求め始めているんですね。だからこれから、リアルなニュータイプの雀荘って出てくると思いますよ。煙草の煙がもわもわしてて賭け麻雀やってそうな旧来の雀荘じゃなくて、ニュータイプの。たとえぱ純粋に競技麻雀をしにくる、ランキングを競う場所。そういうのが全国にわーっと出てくるような気がしますね。ポケモンGOもそうじゃないですか。あれは、位置ゲームの正解がこんなところにあったんだと思って、ちょっと感動したんですけどね。これまでは技術的にも難しかったのかもしれないけど、CGM(Consumer Generated Media)と位置情報を組み合わせて、成功させた一つの例じゃないですか。これから雨後の筍のように出てくると思いますけど。
横澤 あれも、新しいプラットフォームですよね。あれIP変えちゃったら色んなことが出来るわけでしょう。
堀江 「妖怪ウォッチ」とか、そのまま丸のまんま乗るし、ドラクエとかもそうですよね。
横澤 皆でパーティー組んで、じゃあ熱海行こう、みたいな。熱海の洞窟行こうぜ、みたいなことになりますよね、絶対。
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人狼ゲームアプリの話は、アナログゲームとデジタルの融合のための秘訣を経て、人狼ゲームというプラットフォームが持つ面白さ、人間の性格が出るゲームでなければならないこと、そして人工知能の話へと進みました。生身の人間をつなぐ装置としてのデジタル、デジタルネットワークに性格付けするための人間性、人狼ゲームは、その両者の余白を行き来します。
余白の力 ~二人の異能が語る無の中に有を見出す手法~
『ザ・タワー』や、喋る人面魚育成の『シーマン』をはじめとする新機軸のゲームを作り続けてきたゲームクリエイター斎藤由多加氏と、『ニコニコ動画』の全企画を起ち上げてきたプロデューサー横澤大輔氏。この二人のカリスマの頭の中を赤裸々に公開する!(構成:納富廉邦)