外出をなるべく控え、人との接触も減らし…そんな日々が続けば、不安やストレスが増すのは当然のこと。そんななか、たとえば手間と時間をかけて、日常とあえてゆっくり向き合ってみる。衣・食・住、日々の生き方…丁寧な暮らし、心を守るヒントをあなたに。
* * *
世界最高齢、88歳のモデルであるダフネ・セルフさんを知っていますか? 最愛の夫の死後、70歳でファッション誌「VOGUE」に復帰し、一流ブランドのランウェイで今も活躍されています。シワもシミもあるけれど、20代の頃より楽しいと語るダフネさんの『人はいくつになっても、美しい』より、ありのままの自分を愛するための言葉をお届けします。
人生はいつも自分の思い通りにいくとは限らない
私は、モデルの仕事で大切なのは、楽観的でいることだと思っています。カメラの前に立つまで何が起こるかわからない、それがモデルの世界です。
ひょっとすると、明日には地球の裏側でロケをしているかもしれないし、何事もなかったように家で暇を持て余しているかもしれない。
土壇場で仕事がキャンセルになることも、予算の関係でまったく違う段取りになることも、そんなの日常茶飯事です。
ちょっとくらい面の皮が厚いほうが、この世界ではいい。私はそう思って、ここまでやってきました。
オーディションに落ち続けることもあるし、やっとの思いでつかんだ仕事が、一瞬にしてなくなることもある。いちいち落ち込んでいたら、とても務まりません。
実際私も、「顔が気に入らない」の一言で、いくらがんばっても仕事を断り続けられた時期がありました。子どもを産んだあと、モデルに復帰しようとしたときの話です。
当時脚光を浴びていたのは、ミニスカートブームの火付け役であるツイッギーやジーン・シュリンプトンで、私は彼女たちのように、中性的な魅力は持ち合わせていなかったからです。
でも、それは別に私が悪いわけじゃない。
歳を取りすぎていると言われても、顔が時代遅れだと言われても、私はめげませんでした。
だって、別に私という人間を否定されたわけじゃありませんから。
要は、相手のニーズに自分がマッチしなかっただけ。さっさと忘れて次へ進もう! そう思っていました。
人生は決して自分の思い通りにいくものではないと、私はこの仕事から学びました。でもだからといって、落ち込むことはないのです。
だからこそ、私たちは強くなれるんですもの。
それに、自分の力が及ばないことをくよくよ悩んでも、いいことは一つもありません。
物事を真剣に受け止めすぎない鈍感さ。そんないい意味での楽観主義は、きっとモデルの仕事だけでなく、いろんな場面で自分を救ってくれると思うのです。