お笑い芸人ブロードキャスト? の房野史典さんは、歴史大好き芸人としても活躍中。
そんな房野さんが出した『超現代語訳 戦国時代』という本が大評判に!
歴史のエライ先生方が褒めてくださったり、ピースの又吉直樹さんも激賞して帯にコメントをくださったり。
本書がこのたび文庫化され、お手軽価格&コンパクトサイズで、お求めやすくなりました。
何より! 文庫化にあたり、あの河合敦先生が、巻末に文庫解説をくださったのです。
単行本発売当時のふたりの対談が、とっても面白いので、全3回、リバイバル掲載いたします!
ということで、第2回は歴史ミステリーです!
* * *
前回「歴史は人生や将来に役立つもの、人は過去からしか学べないんです」という河合敦先生の名言に、歴史の楽しさを再発見した『超現代語訳 戦国時代』の著者であるブロードキャスト!!の房野史典さん。
2回目は、歴史上の人物の中でも1、2を争う人気を誇る「坂本龍馬」の、超ビックリなエピソードが披露される授業から始まります!
* * *
坂本龍馬を殺したのは誰なのか?
房野 僕は小学生のときにゲームの『信長の野望』で歴史に興味を持ったんですけど、先生はどうして歴史に興味を?
河合 学校の先生になることは、中学生の時に、ドラマ『金八先生』を見て決めたんです。ベタなんですよ、たぶん何万人もいると思うんですけどね、そういう人(笑)。その金八先生が尊敬しているのが坂本龍馬だったので、高校生のときに司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』を読んで感激して、そこから歴史の勉強をしたいと思うようになりました。
房野 それって金八先生というより、ほとんど武田鉄矢さんじゃないですか!(笑)
河合 そうそう、だから武田さんのことも尊敬しているんです。お会いして握手したときは、感激しましたねぇ(笑)。ちなみに一番最初に歴史に興味を持ったのは、小学生のときに家の裏の畑から縄文式土器が出て。それがきっかけといえばきっかけですかね。
房野 それムチャクチャ面白いじゃないですか! 土器が出る家、普通あります!?
河合 僕の出身は東京の町田市なんですけど、町田は多摩丘陵にあって、縄文土器がものすごい出てくるんですよ。これを3000年、4000年前の人が作ったんだ……というのは面白かったですね。よく見るとね、みんな気づかないだけで、土器ってあちこちに落ちてるんですよ。貝塚の貝もけっこう落ちてますよ。
房野 ええっ! マジですか?
河合 ぜひ探してみてください(笑)。授業で、そういう土器を見せるとね、子どもは食いつきますよ。
房野 そうでしょうね! わかります。
河合 あとは江戸時代の本とか。
房野 江戸の本って、そんな簡単に手に入るんですか?
河合 ネットで買えるんですよ。1000円とか2000円くらいからある。ちなみに江戸時代の占いの本が一番安いんですよ。数が多いということは、江戸では占いの本が流行っていた、ということなんですね。読んでると笑っちゃうようなのもありますよ。「ほうれい線占い」とか見るとね、末広がりになってるほうれい線は出世するとか。あとは小指と薬指を見て、薬指の第一関節よりも小指が上の場合は出世するとか。
房野 うわ、僕、出世しねぇや……(笑)。でも昔の本を解読するの、難しくないですか?
河合 ああ、普通はそうかもしれないですね(笑)。
房野 やっぱりそうですよね(笑)。先生だから読めるんでしょうねぇ。でも興味あるなぁ。……ところで先生、龍馬がお好きってことは、一番好きな時代は幕末ですか?
河合 そうですね、幕末ですね。専門は近現代史なんですけど。戦国ももちろん好きですよ。
房野 僕も幕末好きで、超現代語訳でやってみたいなと思ってるんですけど、幕末の魅力ってどこにあると思われます?
河合 260年続いた幕府が倒れて、新しい政権ができて、外国からの侵略の危機もあって、急激に混沌とした時代が来る中で、キャラの濃い人たちがいろいろ登場してくる。それがやっぱり面白いですね。平和な世の中だったら絶対に登場してこないような人たちがいっぱい。例えば高杉晋作なんかは、平和な世の中だったらちょっとアブナイ人ですよね(笑)。房野さんは、幕末だと誰がお好きですか?
房野 僕は西郷隆盛ですね。最後が悲運で終わってるっていう、プラマイゼロ感も含めて。ちなみに龍馬って、どうして殺されてしまったんですか?
河合 先日あるテレビ番組で「誰が龍馬を殺したか」という短いVTRを作ったんですけど、そこでは、龍馬を殺したのは後藤象二郎だ、という説をとなえたんです。
※後藤象二郎(ごとうしょうじろう 1838~1897年)土佐藩出身の武士、政治家、実業家。山内容堂に大政奉還の建白をさせるなど、新政府樹立に貢献。大阪府知事や参議などを務めるが、征韓論で下野。その後、板垣退助らと自由党を結成して政界へ復帰、逓信大臣、農商務大臣などを歴任した。
房野 それは意外ですね!
河合 ええ、いろいろご批判もいただいたんですけどね(笑)。でも後藤の可能性が高いと僕は考えているんです。龍馬は、土佐藩の後藤象二郎を通じて、平和的に幕府に政権を返還させる「大政奉還」を進めさせていたんですね。これはすごい難しい仕事なんだけど、後藤が1867年の9月くらいから徳川慶喜側に一生懸命働きかけてるんです。でも、薩摩藩と長州藩は、「武力で徳川を倒すしかない!」と龍馬にプレッシャーをかけ始める。すると龍馬は、後藤に大政奉還を進めさせながら、ライフルを500挺くらい持って土佐藩の重臣のところへ行って、「これからは武力で倒幕ぜよ」ってことになり、後藤象二郎はもう土佐へ戻し、倒幕派の板垣退助を引っ張り出そうと言って、土佐藩を倒幕派の薩摩・長州と結ばせようと動いているんです。
房野 うわ、完全に二枚舌じゃないですか!
河合 結局、大政奉還は成功するんですけど、後藤にとってみれば非常に面白くない。裏切りですからね。実際に龍馬を殺したのは、佐々木只三郎をリーダーとする「見廻組」の人たちなんですけど、その佐々木のお兄さんが会津藩の人で、龍馬が殺される約1ヶ月前に、後藤はその人と会見してるんです。龍馬が殺されたのは京都の近江屋で、その10日前くらいから滞在していたと思うんですが、その情報はよほど近しい人しか知らないはずなんです。だからおそらく後藤が知り合いになった佐々木のお兄さんに「龍馬は近江屋にいる」と漏したのではないかと。そうすれば、あとは勝手に人が動く。なのでちょっと怪しいんじゃないかな、と思うんですよ。
房野 実行犯は見廻組なんだけど、裏で糸を引いていたのは後藤だと?
河合 後藤が情報を漏らして、そっちへ誘導したんじゃないかという気がしますね。ただいろんな人がいろんなことを言っているので、真相はわかりませんけど。
房野 おおお! こういう話が面白いんですよね! これこれ、こういう河合先生の授業を受けたかったんです!!
源頼朝は「マスオさん」である
房野 河合先生は学校での歴史の授業って、どうやって教えてたんですか?
河合 学校によって違いますね。定時制高校に勤務していたときは、とにかくわかりやすく教えるようにしていました。例え話をしたりね。よくやったのは、鎌倉時代の北条氏を『サザエさん』にたとえるっていうやつです。
房野 うわー、興味ある!
河合 源頼朝は伊豆に流されて、そこで北条政子と結婚するんですけど、父母はおらず一人で流されているんで「磯野家にお婿入りしたマスオさん」の立場ですよ。つまり政子がサザエさん。そうすると、波平は北条時政、カツオは政子の弟の北条義時、マスオさんとサザエさんの子どもがタラちゃんですが、これが二代将軍の源頼家になるんですね。頼家は結果的に時政に殺されるんですが、これを「サザエさん」でいえば、つまり、タラちゃんは波平に殺されるんですよ!
房野 あはははは!(笑) そうか、そうですよね! 超わかりやすい! こういう話をやってくれる学校の先生って、メチャメチャ少ないですよね。
河合 ただ、先生もだんだん年を取ってくると世代ギャップが出てくるんです。やっぱり50歳の先生は、15、6歳の子を教えられないですよ。僕も10年くらい前に授業で「長宗我部元親」って黒板に書いて「ちょうそかべもとちか、って読むんだぞ」って言ったら、女の子が「キャッ!」と叫んだんで、「どうした?」と聞いたら、「カッコイイ!」って。ゲームの世界ではイケメンなんだそうですね。でも、実際に残っている長宗我部元親の肖像画って、アホみたいな顔してるんですよ(笑)。
房野 アホて!(笑) それは『戦国BASARA』ですね。長宗我部は1、2を争う人気ですからね~。
河合 それから「水戸黄門は、ほんとは全国廻ってないんだよ」と言っても、ドラマの『水戸黄門』を知らない。「遠山の金さんの入れ墨は桜吹雪じゃない」という話なんてすると、「金さんって何?」となる。先生は、40歳くらいになると生徒と感覚が違っちゃうんで、授業で生徒に教えるのではなく、別の仕事をした方がいいのかもしれないなと僕は思いますね。
房野 はー、共通の話題がなくなっちゃうんですか……。
河合 そしてこれが進学校の授業だと、こんどは、センター試験の日本史の点数の平均をいかに上げるか、という授業になるので、たとえ話や面白い話をしても聞いてもらえないんですよ(苦笑)。ちなみに今のセンター試験って、近現代史が全体の4割出るので、小泉内閣くらいまでは必ず授業でやるんです。
房野 小泉内閣って、ついこの前の話じゃないですか! でもなんか、歴史が好きじゃない人がいるのって、暗記することがいやだったり、テストが負担になってるからってことに行き着くんじゃないですか?
河合 そうですね、暗記物でつまらないというふうになっちゃうんですよね。だから、つまらない暗記物を面白くするために、『超現代語訳 戦国時代』みたいな本を読んでほしいんです。若い房野さんみたいな人がこういう本を書いてくれるっていうのは、僕にとっても嬉しいんですよ。
房野 ムチャクチャ嬉しい……でもホントに、歴史を暗記物にしてほしくないですよね。
河合 歴史って、教科書に書かれていない「間」が面白いですからね。
房野 この本には「間」しかないです!(笑)
(取材・構成 成田全)
【房野のつぶやき】
坂本龍馬殺害の黒幕。北条氏の「サザエさん」のたとえ……。
次から次へと出てくる河合先生のお話は、歴史に興味がない方でも、のめり込む要素満載の話題ばかりでした。学生の頃に河合先生が教師だったら、どんなに授業が楽しかったことか…。
歴史のお話が楽しすぎただけに、学校の実情と、先生と生徒とのジェネレーションギャップについては、興味深いトピックスでした。
河合先生曰く、「つまらない暗記物を面白くするために『超現代語訳 戦国時代』みたいな本を読んでほしいんです」。宣伝のようになってしまいますが、いや、間違いなく宣伝ですが、この本、一度覗いてみてはいかがでしょう?
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東大卒の某人物も「こんなに頭にすんなり入ったことがない」と大絶賛したという、驚愕のわかりやすさ&面白さ。
NHK大河ドラマ「真田丸」でも大人気の「真田三代」のほか、歴史好きにはたまらない人選と人物描写で、読ませます。
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