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インカメ越しのネット世界

2016.10.31 公開 ポスト

2回目の検索をしなければ安心できない私たちりょかち

最近、何でも価値が透けすぎてて、つまらない。

デートで連れて行くお店の話題で「そこは『食べログ3.0だからダメだよ』」というセリフを聞く。先輩が持っているリュックは、アマゾンレビューが異常に高くて人気だそうだ。そういえば友人が最近観た映画は、Twitterでいろんな人が絶賛してたみたい。

2回目の検索で“安心”したがる私たち

何かを消費する時、“2回”検索することが当たり前になろうとしている。

一回目は、「ほしいものの候補を探す検索」。
"世の中に「神楽坂 和食」のお店はいくつあるのか?"
"世の中の「リュック ネイビー」にはどんなモノがあるのか?"
"「今週 映画」だとどんなものが観られるのだろう?"
ということが知りたくて検索窓に尋ねる。

そこから私たちは、2回目の検索をするのだ。候補のそれぞれは「どんな評価をされているのだろう?」という検索。

そこで私たちは、「神楽坂のこのお店、美味しそうだけど評価が低い」、「このネイビーのリュックはあんまり人気がないみたいだ、レビューが少ない」、「この映画、観ようと思ってたけど星3つしかついてない」ということを知る。

私たちは、何かを消費しなくとも、消費しようとする対象のだいたいの価値を透かして見ることができるようになっているのだ。誰かが残したレポートや、レビューや、星の数で。

透ける価値と「面白い」への不感症

価値が透けるのは本来良いことだとは思う。生活はとても簡単で便利になる。ハズレは少なくなる。いつも美味しいごはんを食べられるし、いつも便利で使いやすいモノを手に入れられるし、いつも面白い映画を観られる。

いや、でも。それは本当なのだろうか。私はみんなのその「美味しい」や「使いやすい」や「面白い」さえ、疑っている。

本当に本当に、最近「美味しい」って感じたことあるの?
本当に美味しいって思ってる?
誰かが美味しいって言ってたからじゃなくて?
本当に面白いの?
どこがオモシロイと思った?
それって先週誰かが書いてた記事のセリフじゃない?

透けた価値が当たり前の世界で、集合知は正義になる。「食べログで評価されていないごはんやさんはダメ」「アマゾンレビューで評価が低いモノはダメ」「SNSで評判の悪い映画はダメ」。いつのまにか、ダメかどうか決めているのは自分じゃなくて、どこかで見た誰かの感想の群れだったりする。

そんな思いに流されて、私の部屋はいつのまにか「誰かの」お気に入りで溢れているのだ。

自分の「好き」は自分で決めろ

やっぱり、価値が透けるのってつまらない。透けた価値だけが正義なのはつまらない。本当は、自分が好きなものくらい、自分の感覚で感じたい。私が知りたいのは、本当に君だけが「かっこいい」と思えるものなのに。

私は最近、「ハズレ」を引きにくい今だからこそ、意識的に自分だけの好きを見つけなければならない!という意識にさいなまれている。

インターネットこそ、レビュー機能が加速度的に発達しているとはいえ、リアルな世界ではまだまだ「ハズレ」を引けるチャンスがある。たとえばコンセプト性の強い本屋さんなんかのレイアウトは、「本との出会い」「セレンディピティ」を促す仕組みに溢れていたりする。インターネットが他者からのレビューを発達させていくのと同時並行で、リアルな世界ではそれ以外の価値を模索したお店も現れているのだ。

「みんなが何を好きか」を知ることは大切だ。「自分が何を好きか」を知るのと同様に。だけど、みんなが何を好きでいるのかを知ることは、私たちよりもインターネットがずっと得意だったりする。

誰からも「いいね!」がつかなくても、「好き」に保証がついていなくても、あなたが好きならそれでいい。そして、そういうものとの出会いが自分だけの感性や価値観を形作っていくのではないかと私は思う。

自分の好きなものくらい、自分で決めなきゃダメ。他者からのレコメンドにポチらされてばかりじゃ、量産型の脳みそになってしまうよ。

 

■■■自撮り裏話■■■

よく見るとアイスが歪んでます

今や「加工は甘え」「加工するやつは顔のパーツをくれた親に謝れ」と強気の私ですが、初期は加工してました(土下座)。これなんか、顔の輪郭を削るためにアイスの造形が歪んでいます。ほら、アイスの左上……。こんな加工も、今やアプリ1つでできちゃうのでコワイですよね(利用アプリ:YouCam メイク

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インカメ越しのネット世界

某IT企業で働きながら、自撮ラー(自撮り女子)としてネットで人気急上昇中の「りょかち」が真面目にネット世界について語ります!

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りょかち

1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒。学生時代より、ライターとして各種ウェブメディアで執筆。「自撮ラー」を名乗り、話題になる。新卒でIT企業に入社し、WEBサービスの企画開発・マーケティングに従事した後、独立。コラムのみならず、エッセイ・脚本・コピー制作も行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎刊)。その他、幻冬舎、宣伝会議(アドタイ)などで連載。

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