欲しいモノがなくなっている時代。
そのなかで潤っているビジネスは何か?
人はどこにお金を落としているのか?
坂口孝則さんは、この問いを電子書籍『日本人はこれから何にお金を落とすのか?』のなかで読み解きました。今回は、完全書き下ろしの内容の冒頭部分をご紹介します。
(*電子書籍は、Amazon Kindle、楽天Kobo、iBooks Store等の各電子書店でもお求めいただけます)
誰かの語る「人生の質を高める工夫」にお金を使う
ある奇妙なうわさが、どこからともなく聞こえてきた。
誰でも確実に大金持ちになる方法があるという。
FXか、それともアフィリエイトか、株式の自動売買システムか。または、いま流行のせどりか。これまで無数のビジネスモデルが喧伝されては、多くの失敗者を生んで、また次の流行が誕生してきた。
「宗教ビジネスなんだ」
新興宗教を立ちあげるというのか?
「いや、フェイスブックとかツイッター、メールマガジンとか見てみろよ」
たしかに、いま私のフェイスブックでは、フォローしたひとたちがオススメする記事や商品が次々に流れてくる。さらに、私がもともと一人のみから購読していた有料メルマガも、いまでは10人を超える。平日、最低でも2通は有料メルマガの最新号がメールボックスに届く。
よく、「モノからコト」に消費が推移している、とひとびとは語る。しかし、それはほんとうだろうか。私には「モノからコト。そして、コトからカタ」あるいは「モノからコト。そして、コトからヒト」に移行しているように思えてならない。「カタ」とは、誰かが語るライフハック=人生のクオリティを高めるための工夫。世界の見「方」だ。そして、なによりそれを語る「ヒト」そのものが消費されている。
なるほど、その意味で、私はもはや10人もの教祖の信者なのかもしれない。クレジットカードの明細をみたとき、無数の無形物に支払っているとわかり驚愕する場合がある。
ライブ・コンサート、トークショー、有料メルマガ、サロン……。また、モノであっても、どこかの有名人が推薦したり、そのひととのつながりを得るために購入したりする機会が多い。「宗教ビジネス」とまではいいすぎかもしれない。ただ、単純に家電とクルマを購入して満足する時代では、たしかにない。
しかし、ときに新たな消費のみが世界を覆うといっている論者がいるものの、それは極論で、私たちは生きるためのパンはいまだに購入している。トイレットペーパーも買う。シャンプーも買う。それは物体の形をとる、たしかなモノ、商品だ。
かつて、すべての商品は記号であると語った論者がいた。センス、アート、個性……。現代では、それらを表す記号を商品に求めるらしい。だから、記号消費と呼ぶ。しかし私が注文したコピー用紙は、たしかに実用を求めてのものだ。昨日、購入したミカンは記号ではなく、しっかりと味のするものだった。
私は製造業の工場で働いていた。製品が記号として消費されているって? 当時の私はとても信じられなかったに違いない。毎日のように品質監査で取引先に出向いていた。不良品を集計しては改善状況を把握した。客先は品質問題で細かなクレームを入れてきた。トラブルであちこちを駆け回った。その記憶からは、記号ではなく、具体的機能のみが重要だった。
そういうことではない。記号消費論者はそういうだろう。ファッションなどの分野で記号消費が進んでいるのです、と。なるほど、もちろん消費が変化した領域があるのは間違いない。それは否定できない。
では、変わったところと、変わらないところはどこなのか。
そして、「宗教ビジネス」という言葉を使いたくなるような、私たちが求める「つながり」の正体はなんだろうか。
***
つづきは、電子書籍『日本人はこれから何にお金を落とすのか? 』をご覧ください。
幻冬舎plus+編集部便り
幻冬舎発のオリジナル電子書籍レーベル。
電子書籍ならではのスピードと柔軟性を活かし、埋もれた名作の掘り起こしや、新しい表現者の発掘、分量に左右されないコンテンツのパッケージ化を行います。
これによって紙に代わる新たな表現の場と、出版社の新たなビジネスモデルとを創出します。
- バックナンバー
-
- 筋トレ、内職、裸踊り…ペヤンヌマキの40...
- 映画に出てくる犬だけをレビューするコミッ...
- 1冊108円の作品も!オリジナル電子書籍...
- 野宮真貴、燃え殻、横山剣が「大人」を語る...
- はあちゅうが語る、「自分」を仕事にするた...
- ブログ、mixiで最初は書いていたふたり...
- 45歳まではまだまだイケると思ってた
- 野宮真貴、ジェーン・スーが語りあう、自分...
- 会社員の経験をフリーランスで生かす仕事術
- はあちゅう、ヨッピーによる『会社員の経験...
- 気鋭の学者、作家たちが、「結婚」と「出産...
- 今宵の晩酌は<牡蠣しゃぶとマグロのづけ>...
- 味覚の記憶と、冬の家飲み。矢吹透とラズウ...
- 場所に縛られない暮らしと、男性小説家の目...
- 焼き鳥の串外しはNG?世の中の「普通」を...
- 家飲みの醍醐味と、お金の仕組み。ラズウェ...
- 日本会議、ネトウヨ、フィクションとノンフ...
- デマ、ヘイト、不寛容…世界の現状と、メデ...
- 離婚した母たちが語る新しい家族のかたちと...
- 「幻冬舎plus+」レーベル創刊1周年!...
- もっと見る