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かけこみ人生相談

2016.11.23 公開 ポスト

第79回

「理由もなく会社がつらいのです。なぜなのでしょうか」回答「あなたには“こうありたい”という欲望がありません。唯一自覚できる“つらい”という感情をご自身にぶつけ、他の感情を引き出そうとしているのです」橋本治

今回の回答は、橋本治さんです。

◎相談 vol.79(竹糸・会社員・23歳・男性・東京都)

 今は会社が理由もなくつらいのですが、元をただせば何につけてもつらいという感情を抱いてしまうことについて、ご相談させて頂きたく投稿いたします。

 私は23歳で、この春から社会人になりました。世間的には羨まれる学歴から羨まれる会社に入ったと自負しております。また会社も、学生時代の友人の話と比較すると、比較的に労働環境の良い所に入ったと思われます。極端な残業はなく(毎日2~3時間程度)、ハラスメントなどもありません。嫌いな上司・腹が立つ同僚というレベルならば居ますが、そういうものだという理解はしております。

 一方で、自分は恵まれているなと頭では思いつつも、どうしても会社が嫌でたまらなく、酒の摂取量は増える一方です。「何が嫌なのだろう」と考え、思いつくことは些細なことばかりで、「自分は根性なしなのか」と思う毎日です。本当に理由もなくイヤでたまらない、としか表現ができません。

 元を辿ると、学生時代からそうなのでした。1年後に受験があれば1年間その受験に怯え続け(受験は十分人生における重大イベントとは存じますが、そうはいっても私の思考の全てを支配するほど重要なイベントとは思えません)、成績が壊滅的に悪い等の特段理由もないのに「つらいなあ」と思うだけで日を過ごしました。

 大学院時代も同様でした。その時には「自分は無収入でただ学んでいるというこの不安定な日々を憂鬱に思っているのだ」と自らを納得をさせていたのですが、社会人として給料を頂ける生活になった以上、その理屈は通用しません。

 もうただ、つらいからつらいのだとしか思えません。私は、なぜ、こんなにもつらいのでしょうか。

 

◎お答えします(今回の回答者 橋本治)

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橋本治『橋本治のかけこみ人生相談』

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橋本治

1948年東京生まれ。東京大学文学部国文学科卒業。小説、評論、戯曲、古典の現代語訳、エッセイ等、多彩に活動。『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)等、著書・受賞歴多数。

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