ドラマ「真田丸」。終焉にむかってますね!
豊臣が徳川に負けてしまうことは誰でも知っていますから、滅びゆく姿がどんなふうに描かれるのかを、切ない気持ちで見ている人が多いことでしょう。
女性の存在がしっかり描かれているのが、とても印象的だった今回ですが、歴史に詳しい房野さんは、これをどう観たのでしょうか!?
* * *
幻冬舎plusさんで「東大生も唸った! 超現代語訳・戦国時代」という記事を書かせていただいている、房野史典と申します。いつもご覧いただきありがとうございます。初めての方は、ここを訪れていただき、ありがとうございます。
最近では、大河ドラマ「真田丸」の解説を書いているのですが、あと数回で終わってしまうと思うと、切なくて寂しくて…。
”ロス(真田丸ロス)”が確定しているので、胸を締め付けられる思いでこの記事を綴っている次第でございます。
それでも書きます。
今回の「真田丸」のタイトルは「反撃」。
”真田丸(砦だよ)”の活躍によって、「大坂冬の陣」の勝利をゲットできた、豊臣陣営。
豊臣の中では、このまま和睦(仲直り)をして徳川とのケンカを終わらせようとする意見が浮上します。
しかし、ここで和睦すれば徳川の思うツボだと、真田幸村(堺雅人さん)は断固反対し、頼みの綱である淀殿(竹内結子さん)の力を借ります。
淀殿の”鶴のひと声”で、徹底抗戦の道を選んだ豊臣軍でしたが、徳川軍が放った大砲が、大坂城に命中。その際、淀殿の侍女(姫のお世話をする人)が、何人も亡くなってしまったのでした(ややこしいと思うので、詳しくは前回の記事を是非コチラから!)。
侍女が亡くなるのを目の当たりにした淀殿は、心が折れて、徳川との和睦を選びます。通説でも、「徹底抗戦を叫んでいた淀殿が、徳川の大砲きっかけで和睦に傾いた」となっています。
高慢な女が現実と向き合ったら、チョロいもんだ――、みたいに伝わっていますが、ドラマ「真田丸」では、少し様子が違いました。
幸村の胸の中で、淀殿はこんな風に漏らすんです。
淀殿「茶々(淀殿のこと)を叱ってください。あれほど和睦はしないと言っておきながら…」
というように、怯えた心情を吐露しています。
秀吉が亡くなったあと、豊臣家を守るため気丈に振る舞ってきた淀殿。政治のトップとしての立場と、目の前の恐怖を回避したい思いの間で、葛藤があったと考えるのが自然かもしれません。
いつの間にか、強さを誇示しなければならなくなった女性――。
しかし、ひと皮向けば、子を想う母であり、”死”というものから解放されたい女性――。
三谷さんがドラマで描く淀殿は、これまでの”悪女”のイメージから少しズレたところに設定されており、あくまで一人の”女性”として描かれているような気がしました。
話は進み、
「和睦をするには手紙のやり取りではなく、交渉の場を設けるのが最善だ」
という運びになります。その場に向かったのは、
豊臣側 常高院(お初。はいだしょうこさん)。大蔵卿局(峯村リエさん)
徳川側 阿茶局(斉藤由貴さん)。
(ドラマでは豊臣側に、きり(長澤まさみさん)が同席しています。で、史実では、徳川側に、本多正純(伊東孝明さん)がいたとされています)
阿茶局の出す好条件に機嫌を良くした大蔵卿局が、ホイホイと要求を呑んで、”真田丸”の取り壊しと、二の丸、三の丸(お城の区画エリアとお考え下さい)の取り壊し、お堀の埋め立てを了承してしまいます。
大蔵卿局の正義感が間違った方向に働いてしまったわけですが、とともに、阿茶局の交渉の巧みさが、バチン! と合体して、豊臣家の大ピンチを招いてしまったのでした。
ドラマでは、大蔵卿局の勇み足感がクローズアップされていますが、豊臣側としては、
「徳川が世の中を支配することはすでに決定しているから、どんな条件を出されようが、あとで痛い目を見ないためにも了解しないわけにはいかない」
という認識があったと言われています(他にも理由があるんですが、詳しくはこの記事を最後までご覧ください!)。
史実でもこの交渉はまとまっていますから、阿茶局は本当にドラマのような感じで相手を懐柔していったのかもしれません。相当優秀なネゴシエーターと言えると思います。
そして、今回もロマンを感じさせる場面が——。
一つは、堀田作兵衛(藤本隆宏さん)が、牢人たちに、真田幸村の人物像を尋ねられた時のことです。
幸村のことはよく知らないと答えます。ただ父・昌幸(草刈正雄さん)のことは知っていると。そして、毛利勝永(岡本健一さん)から「昌幸は裏切り者で有名だった」と中傷を受けると、すかさず作兵衛はこう返します。
作兵衛「とんでもない誤解じゃ! 安房守(昌幸)様は、生涯を賭け、武田の領地を取り戻そうとされていた。信玄公への忠義を死ぬまで忘れなかった。そのためにはどんな手でも使った…。卑怯者の汚名も着た。源次郎様はその血を受け継いでおられる。あの方は! 太閤殿下(秀吉)のご恩に報いるためには何でもする! そういうお方じゃ。わしに言えるのはそれだけじゃ」
いいセリフでした。幸村を讃える言い回しが、作兵衛の真田家への忠誠心と共に表現されている、すごく沁みるセリフでした。
その幸村。大阪城のお堀が埋められることが決定したことにより、勝てる見込みはないと、初めて弱気な姿を見せます。他の牢人たちにも
幸村「全ては私の力不足だ…。申し訳ない」
と、頭を下げます。
その後、「ここまでじゃ」と、家の者に語る幸村。
しかし、その背後を見つめながら、妻の春(松岡茉優さん)が呟きます。
春「殿…、皆様が……」
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