私の大好きな友達の一人に、スケッチブックで会話する子がいる。ちなみに彼女は日本人。いつもスケッチブックをカバンに忍ばせていて、最初は口頭で会話していても、「うーん、ちょっと待って下さいね、こういうことなんです」と言って、カバンからそれを取り出して絵を描き出す。私は「なるほどなるほど。私は今その絵の左側が大事だと思っていて……」と続ける。
その彼女は「わたし、ことばで話すのが苦手なんです」と言う。
「りょかちさんはいいですよね、ことばにするのが上手」と言ってくれる。
だけど実は、私も話すのが苦手だ。もっと正しく言うならば、口頭でのコミュニケーションが苦手。書くのも得意だとは言い切れないけれど、文章を書いて人とコミュニケーションをとるほうがずっとラクだ。だから2人の話が熱を帯び出すと、私は彼女のスケッチブックにことばを書き出す。彼女はそれを絵に取り込んでくれる。
言語はそれぞれ「性格」をもっている
複数の言語を話せる人なら感じたことがあるかもしれないが、「言語」には特色があるらしい。日本語ってこういう性格をもっているよね、とか、英語ってはっきりした表現が多い、とか。
その友人と話していると、私もそれと似たようなことを思う。彼女のコミュニケーション(イラスト)と、私のコミュニケーション(テキスト)には特色がある。
彼女の得意なイラストのコミュニケーションは、普段の口頭でのやりとりよりも「ローデータ」な感じがする。情報量が多い。抽出されていない、脳みその中のデータそのままな感じ。だけどだからこそ、より一層伝わる。
私が得意なテキストのコミュニケーションはそれに対して、より抽出されたデータだ。
脳みその中のデータを既存の「ことば」に変換して相手に投げる。「ことば」はみんなの脳みその中身を交換しやすいように、意味のコアな部分をシンボル化したデータだから、とっても軽くて使い勝手が良い。既存のものを組み合わせるだけなので人の知識やPCの中にもそれらを伝えるための素材が揃っていて、口頭でもメールでもいろんな手法で送ることが出来る。
ただ、コアな部分だけ抽出したデータだからこそ、余白が削ぎ落とされてしまう難点がある。「正しい言葉が見つからないけれど、なんか違う」みたいなこのエラーを、人は「ニュアンスが違う」というのかもしれない。(つづく)
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