「本を読んで笑う人なんているんですか?」
ユーモアミステリーの旗手である東川篤哉さんから打合せ中に飛び出した一言。一瞬の、目が点状態からすぐに、そりゃ笑います! なんなら声だして笑いますよ! と答えたものの、ご本人からは疑わしそうな目が向けられるばかり。そんな視線に耐えながら、本作の読みどころをお伝えします。
その1、溝ノ口の街の魅力がたっぷり。
東川作品の多くは実在する街を舞台に描かれます。今作の舞台は、溝ノ口! ピンとこない方に説明すると、溝ノ口は、立川~川崎を結ぶJR南武線の武蔵溝ノ口駅と渋谷~中央林間を結ぶ東急田園都市線の溝の口駅を有するターミナル。地元の愛称「ノクチ」から命名された商業施設「ノクティ」が駅前のシンボルです。全国的な知名度はなくとも、ポレポレ通りや赤提灯の飲み屋街など魅力がいっぱい。セレブな二子玉川、おしゃれな自由が丘、住みたい街ランキング急上昇の武蔵小杉など沿線都市とのライバル関係にもご注目ください!
その2、毒舌お嬢様とヘタレ30男の名コンビ。
両親が名探偵という探偵一家に育った天才少女有紗と、犯罪以外は何でも引き受ける「なんでも屋」の良太。ひょんな誤解から始まった二人の関係は、まるで王様と侍従(笑)。そんな二人の姿が、今冬、テレビ朝日系ドラマスペシャルにて実写化決定。有紗役に本田望結さん、良太役に田中圭さんなど、超豪華俳優陣! ロリータ服に身を包む、リアル美少女探偵の姿をお見逃しなく!
その3、往年の名作ミステリーネタ発掘。
文庫化にあたり、解説をご執筆下さったオリオン書房の高橋美里さん。デビュー作からの東川作品ファンであり、大のミステリーファンでもある高橋さんが、作中にちりばめられた名作ミステリーのネタ元作品を紹介してくださいました。そちらも、ぜひお楽しみに!
著者は笑わずとも、読者のみなさまには、謎解きと共に、周到に仕込まれたユーモアの数々を、大いに笑ってお楽しみいただければ幸いです。
(第一編集局 大野里枝子)
コミカライズ版編集者から一言!(幻冬舎コミックス 藤田みちよ)
読んですぐに、漫画化したい! と思うほど登場人物が魅力的で、頭の中では既に作画の森さんの描く有紗と良太が動き出していました(笑)。原作の有紗の可愛さ&容赦無さ、良太が振り回される姿が楽しすぎて、森さんと見せ方を沢山話し合ったのも貴重な思い出です。溝ノ口周辺を取材して資料を集めたり、小説では描かれていない細かい設定や街並みも必見。ぜひコミカライズ版でチェックしてみてください!
(「小説幻冬」2016年12月号より)
担当編集者は知っている!!
「どうしてこの本を書いたのか」を語る著者インタビューや、立ち読みページ、担当者が語る編集秘話等々。新刊のとっておきオモテ話・ウラ話をご紹介します。