上司への報告、部下への指示、クライアントへのプレゼン、新商品の売り出し、入学・入社面接、司会やスピーチ、飲み会・合コン……日常生活のあらゆる場面で役に立ち、一生の武器になるのが「一言力」すなわち「短く本質をえぐる言葉で表現する能力」。
コピーライターの川上徹也さんが、「一言力」を「要約力」「断言力」「発問力」「短答力」「命名力」「比喩力」「旗印力」の7つの能力に分析し、どんな人でもすぐ、「人の心をグッとつかむ一言」が言えるようになるノウハウを伝授します。今回は「発問力」についてです。
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■人には「答え」を探す習性がある
「一言力」に必要な能力の3番目は「発問力」です。
誰かに何かを「問いかける」「語りかける」「質問する」という能力です。
「質問」と「発問」は似ていますが、あえて違いを言えば、わからないことを聞くのが「質問」で、語りかける側が問いをつくるのが「発問」です。
短く効果的な「問いかけ」ができると、あなたの言葉は相手の心の奥底まですーっと入っていきます。広告のキャッチコピーに「問いかけ型」が多いのも、この性質を利用したものです。
ではなぜ「問いかけ」は、人の心を刺すのでしょう。
それは、人は問いかけられると「答え」を探す習性があるからです。
人にはこのような習性があるので、企画書やプレゼンの冒頭で問いかけるのは効果的なのです。
本のタイトルや雑誌の見出し、広告のコピーで問いかけが多く使われるのも、そのためです。
■ドキッとする問いかけをする
まず効果があるのは、受け手がドキッとする問いかけです。
広告では、消費者をドキッとさせることで注目を集めた名コピーがいくつもあります。
2016年8月、3年間の休業に入った渋谷パルコ。
80年代のパルコの広告は消費者をドキッとさせる刺激的なものが数多くありました。
1985年のパルコの広告は以下のような問いかけをしました。
昨日は、何時間生きていましたか?
改めてそう問いかけられると「本当の意味で何時間生きていただろう」とちょっと考えてしまいますね。コピーライターは仲畑貴志。
■親身に語りかけて問いかける
相手に対して親身に語りかけて問いかけるという手法も効果があります。
これは読み手が思わず「はい」と答えてしまうような、語りかけ問いかけをすることが重要です。
例えば、あなたが40代・50代男性向けのビジネス誌の編集者で、何か特集記事を考えているとします。どのように語りかけたら、読者が興味を持ってくれる見出しがつくれるでしょうか?
例えば、以下のように。
職場で「こんな部下」に困っていませんか?
お腹まわりの脂肪、気になっていませんか?
最近、体力がちょっと落ちてきたと思いませんか?
遠く離れた実家の両親のこと、心配じゃありませんか?
いずれも、その年代であれば「はい、います」「気になってます」「思います」「心配です」と答えたくなる人が多いでしょう。
受け手が思わず「はい」と答えたくなってしまうような語りかけをすると、「これは自分に対して語りかけられている」と感じます。
その結果、中身も真剣に読んでもらえるようになります。
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■ターゲットを絞って提案する
相手に対して何かを提案して問いかけるという手法もあります。
その場合、ターゲットを絞って呼びかけておいてから提案すると、さらに効果的です。
ターゲットの絞り方は大きく以下の3つがあります。
①属性で絞る
「性別」「年齢」「職業」「居住地」「所属先」「所有物」「身体的特徴」で絞る
②内面的要素で絞る
「悩み」「価値観」「願望」「思想」などの要素で絞る
③行動的要素で絞る
「用途」「利用目的」などの要素で絞る
例えば、スポーツクラブのチラシのキャッチコピーで考えてみましょう。
①属性で絞る
50歳以上の品川区在住の女性の方にグッドニュース
②内面的要素で絞る
最近、どうもカラダの切れが悪いなと感じるあなたへ
③行動的要素で絞る
会社帰りに荷物を持たずにジムに寄りたいあなた
このようにターゲットを絞って呼びかけてから、「運動の習慣をつけませんか?」「ジムに通いませんか?」など、行動を促すフレーズを入れていくと、その対象者には提案が届きやすくなります。
■「問題を解決する力」より大事な「問題をつくる力」
いろいろな問いかけのテクニックを見てきました。
ちゃぶ台返しをするようですが、問いかけの本質はテクニックではありません。
「発問力」とは言い換えると、「問題をつくる力」です。
今までの日本では、「問題解決できる力」が重視されてきました。
学生時代しかり。社会人になってからもそうです。
しかしそれだけでは、一定レベルのところまではいっても、イノベーションを生むような大きな成果は期待できません。
ましてやAI(人工知能)が普及していくこれからの時代において、問題解決能力はあ
まり意味をなさなくなる可能性があります。
いかに「いい問いかけができるか」という、「発問力」が問われるのです。
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*次回は1月17日(火)に掲載予定です。
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