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女の数だけ武器がある。

2017.02.18 公開 ポスト

「品のよさ」は容姿のマイナスを打ち消すペヤンヌマキ

ブス、地味、存在感がない、女なのに女が怖い……コンプレックスだらけの自分を救ってくれたのはエロの世界だった! 女性AV監督、映像ディレクター、劇作家・演出家として多彩に活躍するペヤンヌマキさんのコンプレックス克服記『女の数だけ武器がある。』が2月7日発売になりました。生きづらい女の道をいかに歩んできたのか――? 今回は、40歳になって綴った「文庫版書き下ろし」より一部を抜粋してお届けします。

「品がある」はどんな年齢にも対応できる

 40歳。これからの人生を生きていく上で、自分の理想の姿をどう設定したらいいのでしょう? 社会的地位、お金、家庭、子供……現状持っているもので他人と自分を比べると、ないないづくしで愕然とします。若さもどんどん失っていく中で、これから自分はどうなっていきたいのか、未来の自分の理想像を描くのはとても難しく感じます。

  40歳を迎える直前、そんなことばかりをぐるぐる考えて、自信を失いかけていた時に、私のことを「品がある」と褒めてくれた友達がいます。その言葉は、今の私を丸ごと肯定してくれる言葉でした。

 この本のはじめに「ブス」という言葉は女にとってあらゆる要素をマイナスに変えてしまうと書きましたが、「品がある」という言葉はあらゆる要素をプラスに変えてくれます。

「品があるブス」

 どうでしょう?「ブス」という言葉の破壊力をかなり打ち消していませんか? なんだかブスじゃない感じがしませんか? さらに「品がある」という言葉はどんな年齢にも対応できます。

「品があるオバサン」「品があるお婆ちゃん」

 なんだか素敵な人が頭に浮かびますよね。

 そう考えると、これから年齢を重ねていくうえで、「品がある」って最強なのでは? と思うのです。

 お金があろうがなかろうが、結婚していようがいまいが、子供がいようがいまいが、顔が整っていようがいまいが、若かろうが若くなかろうが、「品がある」人というのは素敵です。しかも「品」というのは年齢を重ねれば重ねるほど、如実に現れてきます。年齢を重ねると、その人のこれまでの生き方や心の有り様が、人相や醸し出す雰囲気に現れる。それが「品」というものだと思います。私が好きな人にはみんなどこか品があります。

 今の私に品があるとしたら、私のこれまでの生き方は間違っていなかったんだ、そう安心することができた。その言葉のおかげで私は失いかけていた自信を取り戻すことができたのです。

 人としての「品」だけは失わずに生きていきたい。どうやったらそれを失わず生きていけるのでしょう? これまで自分が大切にしてきたことを忘れずにいればいいのかな。自分の感覚を信じて生きていけばいいのかな。そう思えることができました。

 人は、今の自分のことを肯定できる言葉があれば、それだけで救われる。「品がある」という褒め言葉。そんな素敵な言葉で、私のことを肯定し、救ってくれた友達。そんな人がいてくれて私は幸せだと思います。そういう人をこれからも大切にしていきたい。また私もその人にとってそういう存在でありたい。

 ところで、私はよくファミレスで書き物をしているのですが、隣に座った人の会話が面白かったりすると、思わず聞き耳を立ててしまいます。ある時、私の隣でかなりお年を召された女性二人が楽しそうにお茶をしていました。二人の会話は「あなた、今日のお洋服素敵ね」「今日のあなたも素敵よ」から始まって、「あなたが付き合っていたあの男は素敵だったわよね」「あなたの男も素敵だったわ」「あなた、これまで素敵な人生歩んできたわね」「あなたこそ素敵な人生歩んでいるわ」と、素敵からの素敵返し、素敵のオンパレード。お二人ともご主人とは死別されて今はそれぞれ一人で暮らしているようで、家に帰る時間を気にすることもなく、延々6時間にもわたってお互いを讃え合い続けていました。

「私あと4年で90だけど、まだまだ欲望はあるわよ。綺麗になりたいと思うし、ボーイフレンドも欲しいと思うし」

「あんなにセクシーな男性を初めて見たわ、素敵だわ。でも素敵って感じられる私がいいのよね。感じられない人もいるんだから。そういう人はかわいそうよね。私は本当に素敵なものを素敵って感じることができるからこの歳になっても輝いていられるのよ」

“素敵”という言葉に満ち溢れているお二人の話を聞いていたら、私までも素敵な気持ちになれて、思わず仕事そっちのけで聞き入ってしまったのでした。

 そしたら、「あなた、もしかして私たちの会話が面白いと思って、さっきから聞いているんじゃない?」と86歳のご婦人が私に話しかけてきました。私の盗み聞きはどうやらバレバレだったようです。86歳、恐るべしです。てっきり怒られるのかと思いきや、「私たちの話って面白いでしょう? どんどん聞いてもらって構わないわよ」とのこと。人生の大先輩は懐の深さが違いました。そしてお二人とも気品に満ちていました。

 素敵なものを素敵と感じて、素敵なことをどんどん口に出していく。そんな「品のある」女性になりたいし、素敵な仲間とお互いの人生を讃え合う女子会が、いくつになってもできたらいいなあ。心からそう思うのです。

***
◎40歳になったペヤンヌマキさんの新連載「40歳から何始める?」もお楽しみください。

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ペヤンヌマキ

1976年生まれ、長崎県出身。早稲田大学在学中に、劇団「ポツドール」の旗揚げに参加。卒業後はAV制作会社に勤務。現在はフリーの映像ディレクターとしてAVやテレビドラマなどを手がけるほか、演劇ユニット「ブス会*」主宰の劇作家・演出家として幅広く活躍中。著書に『女の数だけ武器がある。』がある。

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