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おっさん画報

2017.02.12 公開 ポスト

茅場町・長寿庵のカレー丼菅野完

 初めてカリフォルニアロールを食べたのはいつ頃だろう? 確かあれは、父が「珍しいものを見つけた」と土産に持ち帰ったのではなかったか。

 何しろはっきり覚えているのは、あの外観に衝撃を受けたことだ。巻き寿司のくせにご飯が海苔より外にある。寿司の端を見ればレタスの緑がのぞいており、鮭なのかなんなのかわからない赤い魚が中に巻かれている。今でこそなんとも思わないあの姿だが、初見の時には腰を抜かすほどに驚いた。

 次に覚えているのは、「美味い!」と思ってしまった自分の味覚だ。周囲の大人たちはまるでゲテモノを食べさせられたかのようにしかめっ面をしている。口々に「気持ち悪い」だの「こんなの食べられない」だのと言っている。しかし、酢飯とマヨネーズの取り合わせや、アボガドと魚肉のとろっとした舌触りなど、私には大層美味しく感じられた。「これならもっとたくさん食べられる」と言おうとしたが、今にも癇癪を起こしそうな大人たちの顔を見て、言うのをやめたのを記憶している。

 カリフォルニアロールだけでなく、今、海外では次々に新しい「和食」が生み出されているという。聞くところによると、寿司の酢飯をワインビネガーで作ったり、釜揚げうどんにブルーチーズをかけたり、巻き寿司一本をフライにしたりと、なかなか自由奔放らしい。

「それでは日本食のイメージが崩れる!」と、最近お役所は躍起になって「トンデモ和食」の撲滅に動いているそうな。農水省は平成28年から「海外における日本料理の調理技能認定制度」をスタートさせた。外つ国で働く日本食職人の技能を指導監督し、「正しい和食」を伝導していくと意気込んでいる。

 しかし、これは困ったことになった。

 なにせ私はカレー丼が大好きなのだ。

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おっさん画報

 「婦人画報」「家庭画報」はあって、なんで「おっさん画報」はないねん! 「昭和のおっさん」を自認する物書き・菅野完が、暮らしにまつわるアレコレ、気になる文物を、徹頭徹尾おっさん目線で語り尽くす。

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菅野完

著述家。1974年、奈良県生まれ。一般企業のサラリーマンとして勤務するかたわら執筆活動を開始。退職後の2015年より主に政治分野の記事を雑誌やオンラインメディアに提供する活動を本格化させる。同年2月から扶桑社系webメディア「ハーバービジネスオンライン」にて連載「草の根保守の蠢動」をスタート。同連載をまとめた『日本会議の研究』(扶桑社新書)は16万部を超えるベストセラーとなり、「日本会議ブーム」を巻き起こす。他の著書に『保守の本分』(noiehoie名義、扶桑社新書)、『踊ってはいけない国、踊り続けるために』(共著、河出書房新社)、最新刊は『日本会議をめぐる四つの対話』(K&Kプレス)。

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