母娘のバトルが話題のドラマ「お母さん、娘をやめていいですか?」。毒親ではないけれど、束縛や干渉が面倒くさい母親に悩む人たちも多いのではないでしょうか。このドラマに監修協力した信田さよ子さんそして、朝倉真弓さんの著書『逃げたい娘 諦めない母』から、母に感じるストレスを解消する行動習慣を4回にわたってご紹介します。
その場しのぎの「ごめんなさい」は命取り
母との関係に悩む娘の話を聞いていると、必ずといっていいほど出てくるのが「母が弱さを見せたときに強い罪悪感にさいなまれる」という感情です。
娘が大人になればなるほど、母は年を取っていくもの。その過程で母の心身が弱っていくのを感じ取った瞬間、弱らせたのは自分なのではないかという自責の念に駆られる人が多いようです。
たとえ母が「あなたが○○してくれないから」などと不調を娘のせいにしてきたとしても、それを真に受ける必要はありません。母親は自分の操縦下にあるはずの娘が想定の範囲を超えて強く出ると、あえて弱さを見せて様子をうかがってくることがあります。
そんなときに、母に対して安易に「ごめんね」という言葉をつかってはいけません。
母親の不調は過ぎ行く年月のせいであり、決して娘のあなたのせいではないからです。
結局のところ、母の不調は母の問題ですし、娘の不調は娘の問題であり、誰のせいでもないのです。
幼いころから必要以上の〝ダメ出し〟をされて育ってきた人は、すぐに「ごめんなさい」と言う癖を持っています。謝罪すればその場が収まるということを無意識のうちに学び、自分を守る術として身につけてしまっているのです。
確かに社会生活を送るうえでは、必ずしも自分が悪いわけではないけれど、即座に謝ったほうがお互いにすっきりすることもあるでしょう。
けれど、考えてみてください。取引先の人や顧客のクレームなど、その後何度もやりとりが発生するであろう重要な相手に対しては、悪いことは悪いと認める潔さとともに、悪くないことに対しては安易に謝罪をしてはいけないというのが一般的な考え方ではないでしょうか? それなのに条件反射で謝罪をしてしまったばかりに、深刻なもめごとに発展するケースは枚挙にいとまがありません。
もし、母親が体調の悪さを訴えてきたとしても、「お母さん、大丈夫? 体調が悪いのね。じゃあ、どうしましょう? いつもの薬は手元にあるのかしら?」と答えましょう。そして「母の体調の悪さは心配だけれど、その元凶は自分ではない」という姿勢を貫くことが大切です。
娘がこうした毅然とした態度を取ることに関して、非情だと言う人もいるでしょう。
しかし、非情になるということは、母を見捨てることではありません。むしろひとりの人間として尊重していることの表れです。娘として、見守る以外どうしようもできないことだってあるのです。その場しのぎに条件反射のような薄っぺらい謝罪を口にするほうが、よっぽど非情ではないでしょうか。
母から「やさしくない」と責められるのなら、心の中で「私、やさしい娘じゃありません」と宣言しましょう。
「やさしい娘」を脱して「しあわせな娘」になりましょう。
次回は、2月25日公開予定です。この連載は、『逃げたい娘 諦めない母』の試し読みです。