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バイリンガルニュースMamiの文字おしゃべり

2021.03.04 公開 ポスト

<売るためにジェンダーが使われる>

女の子はピンク、男の子はブルー、のなぞ【再掲】Mami(Podcast「バイリンガルニュース」MC)

最近、ランドセルの色は自由度が増してきましたが、子ども服の色はあいかわらず、女性と男性で一定の傾向があるように見受けられます。しかしこの風習(?)、じつは歴史が浅いって知っていますか? 東京育ちのバイリンガルMamiさんの記事を再掲します。

(写真:iStock.com/GeorgeRudy)
 

先月、友人と横浜でランチしました。生後5ヶ月の赤ちゃんも連れてきて会わせてくれて、めちゃくちゃかわいかった!

ランチのあとにデパートで赤ちゃん服を買うというので、一緒についていくことに。誰かに出産祝いを買うとき以外、赤ちゃん服売り場に行くことなんてないので、私にとってはかなり新鮮。「えっこのジーンズ1万5000円!?私が今履いてるやつより高いんだけど!」「使ってる布めっちゃ少ないのにねー」と、おばちゃん的発言を飛ばしながらプラプラ。

彼女は自分の赤ちゃん用にちょうどいいサイズのズボンを探していたのだけど、60cmのズボンがなかなか見つからず、いろんなお店を見てまわることに。(どうでもいいけど、赤ちゃん用だと「パンツ」より「ズボン」のほうがなぜかしっくりくる。笑)

そこで私も一緒に60cmのズボンを探すことに。赤ちゃんは男の子なんだけど、売り場全体的に女の子用の洋服のほうが多いというか、種類が豊富な印象。その上、60cmのズボンというのがなかなかない。探して探して、やっとあった!と思ったら、真ん中に小さなリボンがついている。私はいつもの適当さを発揮して、まあ本人は気にしないだろうし男の子だってリボンぐらいついててもいいじゃないか、と思ったけど、友人に「女の子用はさすがにだめ」と却下されました。笑

小さいリボンがつけられてしまっているがために、せっかく見つけたこのズボンは買えない。サイズはぴったりなのに。誰がわざわざリボンつけたんだ・・・リボンさえなければ・・・そもそもリボンは女の子だけのものって誰が決めたんだ・・・不便すぎる・・・と文句を垂れる私を尻目に淡々とズボン探しを続行する友人。

ふと見渡すと、目に入る子ども服のほとんどが、「男の子用」と「女の子用」ではっきり分かれていました。もう色からして全然違う。女の子はピンク・赤・白などを基調に、レースや花柄やリボンがついていて、男の子はブルー・グレー・緑などに動物や車や英字がプリントされている。

大人の世界では、スタイルの差はもちろんあれど、一般的に色や柄にここまでくっきり分かれた男女差ってなかなかないし、むしろここ数年ジェンダーニュートラルが流行しています。私がよく買いに行くお店はモノトーンが多くて逆にピンクの洋服は見たことないぐらいだし、うちの夫の買い物に付き合って男性もののお店に行けば、ピンクから紫から様々な色の洋服があって、最近は花柄の男性服だって珍しくない。

大人は男女関係なく好きな色・好きな柄を着ているのに、子どもには生まれた瞬間から「性別に適した(と誰かが決めた)特定の色」があって、お店から「はいこれはピンクだから女の子用ね、フリルもつけときました」みたいに決められている不思議。

人生経験がほんの数ヶ月〜数年しかなくて、まだ自分の好きな色や自分に似合う色がわからないうちって、むしろ色んな色を試してみるのに一番適した時期なんじゃないか、と思うのだけどどうなんだろう。

そもそも女の子がピンクで男の子がブルー、みたいな風潮っていつから始まったものなんだろう?と疑問に思ったので調べてみると、メリーランド大学の歴史学者Jo B. Paolettiという人が、まさにこの問題について何十年も調査していました。(http://www.smithsonianmag.com/arts-culture/when-did-girls-start-wearing-pink-1370097/

調査によると、18世紀ごろまでは汚れても漂白できるという実用的な理由から赤ちゃんや子どもは基本的に白い服を着ていたそう。19世紀半ばから子ども服にパステルカラーが登場しますが、1918年に出版された子供服の業界誌には「男の子はピンク、女の子はブルーというのが一般的に浸透している決まりです。理由としてはピンクははっきりした強い色で、ブルーは繊細で可憐な色だから。」と書いてあり、なんと今とは真逆(!)だったことがわかります。

ほかにも「金髪の赤ちゃんにはブルーが似合い、茶髪の赤ちゃんにはピンクが似合う」とか「青い目の子にはブルー、茶色い目の子にはピンク」とすすめている文献もあり、そうした色々なマーケティング戦略を経て、1940年代にやっと「女の子はピンク、男の子はブルー」が言われ始めます。がしかし、1960年代半ばから時代はウーマンリブに突入し、その結果、男女兼用で着られるジェンダーニュートラルな子ども服が流行。

その後、80年代を通して妊娠中の超音波検査が浸透し、出産前から赤ちゃんの性別がわかるようになったこともあり、性別によって分かれた商品のほうが売れるため、「女の子はピンク、男の子はブルー」が復活。

日本の子ども服業界は欧米ほどウーマンリブの影響を受けなかった可能性大なので、日本では80年代以前も「女の子はピンク、男の子はブルー」をやってたかもしれないけど、そうだとしても戦後からならまだたった二世代の話なのでおどろき。自分が生まれたときにすでに存在してた価値観や固定観念って、あたかも人類歴史上ずっと続いていることかのように感じちゃうから、実は全然違ったとわかるとおもしろい。

人間は2歳ぐらいから性別という概念を認識しはじめると言われています。その過程で、周りの大人、メディア、広告、おもちゃ業界、洋服業界など、様々な要素から影響を受けて、それぞれの性別へのイメージが形成されていく。例えば女の子用おもちゃはパッケージがピンクばっかりとか、女性向け広告にピンクが多いとか、お兄ちゃんはピンク着てないけど自分はピンク着てるなど、日々目にするものからいとも簡単に、大人が作り上げた「女の子=ピンク」が吸収されていきます。

ラトガース大学の研究(http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.2044-835X.2011.02027.x/abstract)では、「2歳半になると女の子はピンクのものへの好みが強化され、逆に男の子はピンクのものを避けるようになる」という結果が出ており、2歳半の段階ですでに「女の子=ピンク」という先入観を持っていることが明らかになりました。マーケティング戦略が、人間の特定の色へのイメージや性別への固定観念を幼児期から潜在的に左右しているというのは・・・個人的にはやだ。笑

さて、これを日本に持ち込んだ欧米では、性別の固定観念を子どもに植え付けるのをやめよう!みたいな議論が増えていて、子ども服もジェンダーニュートラルを扱うブランドが続々登場し、2年前ぐらいからそれに関する記事もよく見かけるようになりました。日本に持ち込んどいて「やっぱこれよくないわ」って自分だけやめる方向にいくのやめてー責任持って日本も連れてってー!と日本人としてはツッコミたくなるけど、これは実は色んな面でよくあること。

「女の子はピンク、男の子はブルー」問題、気にしない人ももちろんいるだろうけど、よくよく考えると色に性別を紐付けるって謎だし、消費主義以外に特にメリットも感じない。二、三世代続いているこの風潮、このまま何世代も特定の業界がごり押しし続けるのか?それとも日本でも多くの消費者が疑問を呈しはじめるのが先か・・・?気になります。

関連書籍

Mami『バイリンガルニュースMamiのもっと文字おしゃべり』

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バイリンガルニュースMamiの文字おしゃべり

Podcastの大人気番組「バイリンガルニュース」のMamiが、声ではなく文字でおしゃべり。みんなの興味や考えが広がるきっかけになればいいなあ、という思いをゆるーくこめて、気になりイシューを紹介していきます。人生初のコラムだよ! Yayyyy!

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Mami Podcast「バイリンガルニュース」MC

1986年東京都生まれ。帰国子女ではなく、東京育ちのバイリンガル。2013年5月から、友人のMichaelと2人で英会話Podcast「バイリンガルニュース」を始める。世界中から2人がピックアップしたニュースを、ユニークなバイリンガル会話方式で無料配信しPodcast1位の大人気番組に! いつも阿佐ヶ谷のMichael宅で収録しており、独特のゆるーい雰囲気が魅力(放送中に荷物が届いたり、くしゃみしたり)。各エピソードの文字起こしテキストアプリも評判! ウェブアスタで相談エッセイ「バイリンガルニュースMamiのお悩みシェア」を連載中。http://www.webasta.jp/serial/onayami-share/
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