2週間ほど前に、携帯電話をなくしてしまいました。
なくしたことに気づいたのはとあるライブが終わってすぐのこと。ポケットやカバンの中はもちろん、ライブハウスの客席やトイレなど、置き忘れたり落とした可能性のあるところをくまなく探しましたが見つかりません。
記憶を頼りに紛失した時間を推定したり、その場にいた人に聞き込みをしたり、ライブの映像や写真を見返したり、あらゆる手を尽くし、さながら探偵のように捜査をしたのですが、いまだに(これを書いている現在も!)見つかっていません。
この件で感情の多くを占めるのはやはり、携帯電話をなくしてしまった悲しみなのですが、頭のある部分では、捜査の過程でパズルのピースをひとつずつはめていくようなワクワクした気持ちを感じていたのもまた事実。予期せぬアクシデントが起きたときに、頭を使い、足を使い、自分の力で少しずつ解決していく体験はある意味、日常を逸脱したワクワクする冒険ではないでしょうか。
そのような一種の非日常を活字の世界で体験できるのが、今回ご紹介する7作品。ミステリーの名手7名が綴る、極上の推理小説作品です。
価格はすべて、わずか200円。ちょっとした空き時間に楽しめるお手軽さは、このシリーズならでは。なにより携帯電話をなくすという代償を払わなくても非日常を体験できるというところが素晴らしいですね。
さて、あなたはどの謎がお好みですか?(柳生)
退職まで3週間。15年前の未解決事件に一筋の光明
警視庁幹部職員であれば、誰もが晴れがましい気持ちで迎える退職記念式典。
だが長年、捜査1課で凶悪犯を追い続けた男――昨日まで警視庁本部捜査第1課のナンバー2だった星正一の胸は晴れなかった。
それは男の唯一の屈辱ともいえる未解決事件のせいだった。十五年前に起きたその事件では容疑者すら浮かばなかった。
完全犯罪など認めてこなかった最強の警視庁捜査1課――その信念さえ揺らぐ事件だった。
しかし、三週間前、事件解決につながるかも知れない端緒を掴んだ星は、迫り来る退職日を前に、激しい焦りを覚えていた。
犯人に迫れるか。だがその時間は余りに短く……。
圧倒的情報の量と質でエンターテインメントを描き続ける著者が初めて警視庁捜査1課をミステリーで描く、決定的警察小説!
出来心からの嫌がらせ。それがなぜこんな事態に…
少しでも虫が好かない相手に、私は嫌がらせの言葉を記した『スミレ色の手紙』を送る。
深い恨みはあるわけではない。うるさい親戚。学生時代の同級生。勤めていた頃の同僚。嫌みな上司。
先日は態度が悪かったコンビニの店員への手紙を注意深く作っている。
この手紙が大きな災禍となったのは、私の手紙を契機に隣の部屋に住む女が自殺したことからだった。その死に私は責任がない。そう考えていた、あの女が登場するまでは……。
読み切り作品。
「逃げ得は許さない」。無罪判決の下った事件を明晰な頭脳で再捜査する“死神”
一年前に起きた『星乃洋太郎殺害事件』で、逮捕された容疑者に無罪判決が下された。
時を同じくして、当事捜査に加わっていた大塚東警察署刑事課・大邊誠のもとに一人の男が現れる。男の名は、儀藤堅忍。
警視庁内にある謎の部署でひとり、無罪確定と同時に事件の再捜査を始める男だ。警察組織の傷を抉り出す再捜査に加え、その相棒に選ばれれば組織から疎まれ、出世の道も閉ざされることになる。その為付いた渾名は“死神”。
大邊は、儀藤の相棒に選ばれ、否応無しに再捜査に乗り出すことに――。「福家警部補」シリーズで話題の著者が放つ、新感覚警察小説。
読み切り作品。
グルメ刑事は謎を解明する。ギョウザを焼きながら
鹿野原市警察署刑事課強行犯捜査係に勤める僕は「刑事その五」と呼ばれている。
僕たちのボスが「刑事その一」と呼ばれているからで、他の意味はない。そんな僕の趣味は料理。
給料の大半は料理のために費やしているし、非番の時は、事件のことを忘れるためにも、一日中料理のことを考えている。
そんな今日の献立はギョウザ。ご飯は誰かと食べた方が美味しいから、友人で美人のノンコさんを誘った。そこへ先輩刑事の加藤さんも合流。
三人でギョウザを食べていると、ノンコさんが、彼女の友人が遭遇した笑い話として不思議な話を始めた。でもそれは僕たちが聞けば「立派な事件」だった……。
起死回生の大スクープに仕掛けられた、想定外のトラップ
俺は大手新聞社の地方支局に勤務する新聞記者。
そう言えば聞こえは良いが、最近ではうだつがあがらず、ライバルに出し抜かれて空回りばかり。そんな鬱屈した日々の中、俺はあの男と出会った。かつては大手新聞社のエースで、今はゴシップ記事で食いつなぐ男。負け犬。俺も最初はそうバカにしていた。
そいつのせいで俺は、記者生命すら危うくなるような事態に陥ってしまう。だがその事件の裏には想像すらできなかった悪意が眠っていた……。
横溝正史賞受賞作家が渾身の思いを込めて書き下ろす、ジャーナリズム・バディ小説!
読み切り作品。
守る者、守られる者、狙う者。すべての思いが交錯する
警察には頼れない、訳ありの政治家や実業家などを顧客に抱えるVIP専門の警備会社・ブラックホーク。
メンバーは、資格を剥奪されたプロボクサーや警察官、自衛官など一癖も二癖もある奴らばかり。
今回の警備対象者は、サイバーセキュリティーの専門家であるルイス・マッケンジー。
なぜ、彼は命を狙われているのか、警察に打ち明けられない秘密とは何なのか。不条理に立ち向かう男たちの姿を描いたミステリー。
読み切り作品。
「特殊警備隊ブラックホーク」シリーズ
→『標的』
→『ゼロデイ 警視庁公安第五課』
山間の平和なバーにあらわれた、とびっきりのイイ女
東京多摩地区の山間の、とある集落に『GSオジカ』というバーがある。
ガソリンスタンドの跡地を、ほぼそのままの状態で使用している風変わりな店。店主は過疎化と高齢化が急速に進む集落で唯一の三十代であり、高齢者のために日々の買い出しを請け負っている。
バーの客は殆ど常連で、たいした売り上げにもならない。店主はいつもギリギリの生活だ。ただし、よほど居心地が良いのかバーには妙な客が吸い寄せられてくることもある。
ある日、バーを訪れたのは「生きている場所が違う」と思えるほど綺麗な娘。だがその彼女は過去最大級の「ワケあり」だった……。
読み切り作品。
幻冬舎plus+編集部便り
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