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ひとり暮しの手帖

2020.03.10 公開 ポスト

【体と心を整える】「睡眠」にまつわるメモ【再掲】山田マチ

「質のよい睡眠」を普段から気にかけている方も多いかもしれませんが、今はよく眠れることならなんでもして、元気な日々を過ごしたいもの。「健康」「美容」「防災」……ひとり暮らしを快適にするヒントをまとめた『ひとり暮らしの手帖』(山田マチ)から、一部を抜粋してお届けします。なにかと不安なこの時期だからこそ、リラックスして、自分にあった「快適」をどんどんとりいれたいものです。

*   *   *
 

 低反発の枕を使っています。冬の夜、遅い時間に帰り、すぐに寝ようとすると、寒さで枕がかっちこちになっています。板のようです。後頭部への枕の強い反発を感じながら眠ります。

 

 私を起こしてくれる人はおりません。暗い部屋だと永遠に眠りつづけてしまいそうなので、日当たりの良い部屋を選ぶようにしています。朝、太陽の光で強制的に自分の体を起こします。

 そばがらの枕が良いと誰かが私に言ったのです。昔ながらの、花柄のカバーに、白い綿の布がくるっと巻いてあるのが欲しいと思いました。たしかあそこに布団屋があったはずと出かけたら、知らぬ間に保険屋になっていました。買いそびれていたら、あれよあれよと、町の布団屋が店をたたんでいきました。日本から布団屋が消えてしまうのでしょうか。昔ながらのそばがらの花柄の枕がほしい方は、お急ぎください。

 目覚まし時計は、どこかの街の商店街のはずれにあった、時計専門店で買いました。棚はすかすかでした。どのように生計を立てているのか気になりつつ、黄色い目覚まし時計を買いました。ジリリリと鳴ったら上のボタンをバンッと押すだけの、ごくシンプルなものです。同じようなものがほしくて、ホームセンターやデパートで探すのですが、「ジリリリ」「バンッ」という仕組みの、何ともない目覚まし時計というものは、なかなか売っていません。あの時計屋さん、いつか行きますので、それまで頑張っていてほしいです。

 冬、部屋が寒すぎて、眠くもないのに布団に入ることがあります。お風呂でせっかく温まった体をキープしたまま寝たいのです。布団に入っていても、本、テレビ、ネット、ラジオ。エンターテインメントは無限です。良い時代です。

 外でみんなとわいわいお酒を飲んでいると、どんどん元気になっていくのに、部屋でひとりで飲んでいると、あっというまに眠くなります。同じお酒なのに、不思議です。

 夜は、照明をだんだん暗くしていきます。蛍光灯から電球色に、天井にぶらさがっているものから、間接照明に。このあたりでお酒の出番。最後は読書用の枕元の明かりに。自分で自分を睡眠に誘導していきます。

 誰に見られるわけでもないのでパジャマは何でもいいと思って、そのへんの量販店で安く買った適当なものを着ていました。最近、イギリスの体操着メーカーがつくる、ちょっといいスウェットを履いて寝てみたら、あららびっくり。大変に気持ちが良いのです。それでは上も、と思い、ちょっといいお値段のした長袖のTシャツを着て寝てみました。ノーストレス。ちょっとの贅沢でこんなに快適とは。またひとつ、大人になった気がしました。

 ふだんから、てぬぐいを使っています。よその家にお泊まりするときは、枕にてぬぐいをかけます。よだれで汚してしまう心配もないし、よく知っている匂いや肌触りなので落ち着きます。顔にシワもつきにくいです。

 すのこベットの上に敷布団を敷き、ベットパットをかけています。夏はしゃりしゃりしたタオル地、冬はふわふわの毛布風。どちらも好きなので、年に二度の取り替えの日は、うきうきします。

 ひとり暮しの小さな部屋では、掛け布団カバーの面積が、かなりの率を占めます。そうそう汚れたり破れたりするものでもないので、買うときは、好きな色や柄を厳選しましょう。

 不規則な生活です。睡眠時間はまちまちだし、朝は食べないし、夜は寝る直前まで食べたり飲んだりしているし、運動もほとんどしていません。役所から健康診断のお知らせがきたので、びくびくしながら病院に行ってみました。きっと怒られるんだろうなぁ、いやだなぁと思っていたのですが、すべての数値、問題なし。ザ・健康体。こればっかりは、産んでくれた親に感謝です。

 不規則な生活も、いざとなったら役に立つかもしれないですよ。日頃から規則正しく生活しているみなさんは、非常時に、たとえば避難所なんかで、いつもと同じ時間に寝られなかったり食べられなかったりしたら不安かもしれません。けれど日頃から不規則な私は、きっとダメージが少ないはずです。何かあれば活躍しますので、ふだんは多めにみてください。

 シングルベットで寝ています。あまり寝返りをうたず、まっすぐ寝るタイプなので、もうちょっと幅が狭くてもいいです。そうしたら、部屋がもっと広く使えます。今度の引越しのときに、試してみたいと思っています。

 部屋がちらかっていても、洗濯物が盛大にぶらさがっていても、テーブルの上に物が山積みでも、寝ちゃえば何も見えません。疲れていたら、全部見ないふりして、寝てしまいましょう。いったん寝て、元気になってからやりましょう。

 中学生のころに見たアニメ「魔女の宅急便」。主人公の少女キキが、突然魔法が消え、ほうきで飛べなくなってしまいます。夜、ひとり、草むらで、ほうきにまたがり、何度も飛ぼうとするけれど、飛べません。それは、そのころの私が夜見ていた夢といっしょでした。あれから20年以上たちました。最近は、はしごや棒の先っぽにつかまっていて、今にも倒れそうなんだけどぎりぎり倒れず、空中でふわふわしている、という夢を見ます。すっごくこわいです。

 若いころは、起きたら「いいとも」が終わっていて絶望、なんてことがありましたが、今ではそんなことはなくなりました。「いいとも」もなくなりました。うっかり朝ドラに間に合ったりします。早起き老人への道をじわじわと進んでいるのでしょうか。早起きに憧れる身としては、今後が楽しみでなりません。

 やなことがあったら、とっとと寝てしまいましょう。起きてひとりで考えていても、沼にはまっていくだけです。寝たところで、やなことはなくなってはいないけれど、前の晩よりも、多少やわらいでいるはずです。夜中にひとり悶々としても、ろくなことはありません。とっとと寝ましょう。

ジリリリと鳴ったら、バンっと押す。単純明快目覚まし時計。壊れなさそうなところが、気に入っています。

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ひとり暮しの手帖

これまでも、きっとこれからも、ひとり暮し。ここには、山田マチのひとり暮しのいろいろを書きつけます。
このなかのどれかひとつくらいは、あなたの心に届くかもしれない。届かないかもしれない。これは、ひとり暮しの山田の手帖です。
 

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山田マチ

著書に、短編集『山田商店街』、エッセイ『ひとり暮しの手帖』(幻冬舎)、絵本『どこどここけし』(こぐま社)、児童書「山田県立山田小学校」シリーズ、絵本『もしもだるまにであったら』(あかね書房)、絵本『てのりにんじゃ』(ひさかたチャイルド)などがある。

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