バラエティ番組からインタビュー記事、そしてモーニングルーティーン動画まで、各所で疲れた我々を癒しまくってくれている阿佐ヶ谷姉妹のお二人。この度、おふたりのリレーエッセイをまとめた『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』が文庫になって登場です! 同居生活からまさかの……!? 展開を経て、今の生活ぶりを語って頂いた特別対談付き。ぜひぜひ店頭でお求めいただけたら幸いです。発売を記念して試し読みミニ連載をスタート!
この歳になってくると、服装についても、我が出てくるというか、凝り固まってくる所があると思います。
出来ることならオシャレになりたかったものの、四十数年生きてきてオシャレと呼ばれるには程遠い人になってしまいました。
季節もTPOも問わず、ネグリジェといい勝負ができそうな薄手のピンクのドレスを、常々着ている大人になるなど!
これも結局、オシャレでないからこそ、なのかもしれません。
衣装こそピンクですが、私服は寒色系が多め。こう書くと、他の色もまあまああるけど〜みたいな含ませ方ですが、実際は、白、緑、青、グレーしかなかったりします。
その限られた色をどう組み合わせて良いかわからず、とはいえあまりにも平々凡々の組み合わせも……などと悩んだ末に、上下とも緑の服をライブ会場に着ていって、「わあ、ミドリマンだ、ミドリマンが来た!」と流れ星のちゅうえいさんに、訳の分からないいじられ方をされてしまったり。
とにかく、オシャレというものをいまだわかっていないのです。
阿佐ヶ谷には、隣町高円寺と比べて、オシャレ女子が通う様なお洋服屋さんというのは極めて少なく、どちらかというと、私達よりも一、二段階ご年配の方向けの「洋品店」や「ブティック」が多い気がします。
そんな中にも、もしかしたら掘り出し物があるかもしれない、と時々覗いてみたりするのですが、そのお店を見るに、これは何色と言ったらよいのかわからない色ばかりが並んでいて。
ヨモギ色と灰色を混ぜた様な色や、黄土色にクリーム色を混ぜた様な色……とにかく、自然界に帰る前の色、と言ったらよいのでしょうか。人間もいつかは土に戻るのだから、徐々に身に付けるものもそのようにしていった方がいいのですよ〜と何かの啓示があったかのごとく、はっきりしない色ばかりが取り揃えられているのです。
そのようなファッションを空気のように自然に身にまとって歩く阿佐ヶ谷の先輩方を横目に、阿佐ヶ谷の町を歩くにつれ、私もこのような自然界に帰る色で揃えた方が、いやでもまだお迎えには早いし、いやいやでも、とますますオシャレとは何か、わからなくなってしまうのです。
私の比較対象として、一番身近にいるのがみほさんなのですが、みほさんは姉妹の中では「オシャレ」担当だと自負している所があり、私もずっとそう思っておりました。
私が着ている服を見て「うーんちょっと違う気が」とか、「その組み合わせはちょっとダサいんじゃないでしょうか」とか、ご意見番の様にアドバイスをくれる時があります。
でも、そういうみほさんを見るとほぼ、事務所でもらってきたTシャツにジーンズ、小学生が履くような靴下にスニーカー、という出で立ち。あれ、ちょっとおかしい、どの口がそれを言うのかしらと思ったりするのです。
ファッジですとか、オッジですとか、オシャレ雑誌を時折買ってきては熟読している姿を目にするのですが、そこで磨いたファッションセンスをあまり使っている節がないのです。
出かける時に、ふと着替えているのを見ると、大抵事務所のTシャツにジーンズ、西友で買った、小学生が体育の時に履くような白の靴下を履いているのです。
でも、冬場はさすがにTシャツというわけに行かないのでは?と思われた方、ご安心下さい。冬場は中にヒートテックの長袖シャツを着て、その上に事務所のTシャツを重ね、ジーンズか厚手のパンツ、そして西友の靴下に、ダウンジャケット。ヘアスプレーより、スタイルキープバッチリなのです。
あまりに服装を変えないみほさんに、どういう事なのか聞いてみると、「ライブやお仕事などに行く時は、実用的な格好にしているんです。動きやすい、脱ぎ着しやすい、十分でしょう」。
なるほど、と納得させられてみたり。
ではプライベートの時はオシャレをしているかと言うと、家にいる時は主に、先輩芸人ユリオカ超特Qさんのライブで購入した、正面に「らっしゃい」と書かれたアップルグリーン色のTシャツに、無印か何かで買ったストレートタイプのジャージでいるのです。
あれ、だから、おしゃれ担当はどこに行ったの、という感じです。
本当にたまにですが、お仕事先などで「今日お姉さん、オシャレですね」と誰かに言って頂いたりする事が。するとみほさん、隣で納得いかなさそうな顔してる時があります。
「こんなダサい人がオシャレって言われてるなんて」って思っているに違いない顔です。でも、その時のみほさんの格好は、事務所のTシャツにジーンズに小学生の靴下なのです。
そんなみほさんが、時々通信販売のサイトを見て、随分悩んでいそうな時があります。場合によっては二週間ぐらい悩んで、「探し疲れてしまいました。オシャレは果てしないんですよ」と言っている姿を見ると、私はオシャレなどあまり語らずに、黙々と生きていこう、と思ったりするのです。(姉・江里子)
阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし
40代、独身、女芸人ふたりの地味おもしろい同居生活エッセイ。
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