近年、患者数が増え続けている「脊柱管狭窄症」。腰痛の老化現象と言われているこの症状ですが、これまで定説とされてきた型通りの治療法・対処法では、かえって状態を悪化させてしまうこともあるそうです。
「予約の取れない治療院」として有名なさかいクリニック院長、酒井慎太郎氏は、人それぞれに自分のタイプに合わせて適切に治療をしていけば、脊柱管狭窄症は完治させることができるとおっしゃいます。新刊『脊柱管狭窄症は99%完治する』は、そのそれぞれの原因や自分でできるケア方法を、タイプ別に解説した一冊です。
その一部を抜粋してご紹介しますので、お心当たりのある方は、ぜひご一読ください。
* * *
【腰痛ケース1】
朝、顔を洗うときに前かがみになると腰が痛みます。
「草むしりやお風呂掃除など、前かがみで作業をしていると、立ち上がるときに腰に強い痛みを感じます。整形外科を受診すると、脊柱管狭窄症という診断で、しばらく様子を見なさいと言われました。ただ、一向に痛みは取れません。とくにつらいのは朝。腰が張ってふとんから立ち上がるのもつらいし、洗面台で顔を洗おうと身をかがめると腰にズキンとする痛みが走ります。この毎朝の腰の痛み、何とかできないものでしょうか」(52歳・主婦)
【判定】
椎間板ヘルニアが強いタイプの脊柱管狭窄症
ヘルニア8:狭窄症2
このケースでは、椎間板ヘルニアの症状がかなり強く出ています。整形外科で『脊柱管狭窄症』という診断が下されたということですが、狭窄症の影響はほんのごくわずか。8:2くらいの割合で、椎間板ヘルニアのほうの影響が勝っているという状況です。
そもそも、「前かがみになると腰が痛くなる」のは、椎間板ヘルニアの大きな特徴です。腰痛は「前かがみになると痛いタイプ」と「体を後ろへ反ると痛いタイプ」に大別されるのですが、前者の代表選手が椎間板ヘルニアであり、後者の代表選手が脊柱管狭窄症なのです。
この方の場合、もともと椎間板ヘルニアの傾向があったところへ、少しずつ脊柱管の狭窄が進み始めたものと考えられます。おそらく、整形外科での画像診断の際、わずかに出ていたヘルニアが見逃され、わずかに狭くなってきていた脊柱管のほうが着目されたために『脊柱管狭窄症』という診断が下されたのでしょう。このように、「椎間板ヘルニアの症状が強く出ているのにもかかわらず『脊柱管狭窄症』という診断を下されている人」は、けっこう多いものなのです。
●なぜこの症状が起こるのか
この方は、朝、決まって腰の痛みがひどくなると訴えられていますが、これも椎間板ヘルニアの特徴的な症状のひとつです。通常、朝は椎間板の内圧が高く、内部での膨張プレッシャーが大きくなるので、よりヘルニアが神経に触れやすくなります。このため、起床時や起床後しばらくの間に痛みが出やすいのです。
また、椎間板ヘルニアの痛みは、体の重心のかけ具合で大きく変わるものなのですが、朝、起きたばかりだと、脳も体も完全に目覚めていない状態で、まだ腰への重心ののせ方がよくつかめていません。それで、寝ぼけまなこでふとんから立ち上がったときや洗面台で身をかがめたときなどに不安定なバランスで腰に体重をかけてしまい、「アイタタタタ……」ということになるわけです。
●すぐに症状を軽減させたいときの方法は?
では、こうした〝朝の腰痛〟を解消させるにはどんな方法をとればいいのでしょう。
私のおすすめは、起床時の『オットセイ体操』です。これはうつ伏せになって上体を起こし、オットセイのようなポーズをとるエクササイズ。朝、目覚めたときに、ふとんの上でこの体操を行なってみてください。
このように体を反らせると、腰の筋肉の緊張がほぐれ、腰椎関節の動きもよくなるため、椎間板の内圧を効果的に下げることができます。また、起きてすぐにこの体操を行なうと、脳も体もほどよく目覚めてくるため、立ち上がったときや体をかがめたときに、重心をのせるべき腰のポイントを間違えないようにもなります。 きっと、この体操を行なうのと行なわないのとでは、起床後の腰の痛み具合が大きく違ってくるはずです。
慣れるまでは少し痛く感じる場合もあるかもしれませんが、1〜2週間がんばって続けてみてください。継続するうちに、朝の腰痛に悩まされなくなるはずです。
【ココがポイント!】
朝の腰の痛みは、起床時の『オットセイ体操』で撃退しよう
●オットセイ体操
オットセイのように腰を大きく反らし、腰椎や筋肉の柔軟性を高めます。
とくに椎間板ヘルニアの影響が強いタイプに効果を発揮します。
1回1分が目安です。
オットセイ体操は、腰椎の健康キープの定番体操です。
ヘルニアと診断された方、過去に診断された経験のある方は、ぜひお試しください。
次回の更新もお楽しみに。