近年、患者数が増え続けている「脊柱管狭窄症」。腰痛の老化現象と言われているこの症状ですが、これまで定説とされてきた型通りの治療法・対処法では、かえって状態を悪化させてしまうこともあるそうです。
「予約の取れない治療院」として有名なさかいクリニック院長、酒井慎太郎氏は、人それぞれに自分のタイプに合わせて適切に治療をしていけば、脊柱管狭窄症は完治させることができるとおっしゃいます。新刊『脊柱管狭窄症は99%完治する』は、そのそれぞれの原因や自分でできるケア方法を、タイプ別に解説した一冊です。
その一部を抜粋してご紹介しますので、お心当たりのある方は、ぜひご一読ください。
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【腰痛ケース2】
車を運転して30分もすると、お尻や腰が痛くなってきます。
「私は仕事の営業で車を使うことが多いのですが、30分くらい運転すると、いつも決まって右の腰やお尻、右太ももの外側にかけてがズキズキ、ジンジンと痛くなります。整形外科を受診すると、脊柱管狭窄症という診断でした。このまま悪化したら、仕事に支障が出てくるのではないかと思うと心配でなりません。いったいどうしたらいいのでしょう」(54歳・会社員)
【判定】
椎間板ヘルニアが強いタイプの脊柱管狭窄症
ヘルニア7:狭窄症3
『脊柱管狭窄症』という診断が出ているようですが、この方も狭窄症とヘルニアの混合タイプ。現われている症状は、間違いなく椎間板ヘルニア特有のパターンです。車の運転など、長時間座り続けることで片側の腰や足に症状が出るのは、ほぼヘルニアによる症状と見て差し支えありません。車の運転以外にも「映画館で2時間座っていられない」「デスクワークを長く続けることができない」「長時間の会議が苦痛だ」といった訴えをする人もいらっしゃいます。
なお、腰だけでなく、お尻や太ももの外側に症状が出ているとのことですが、これは椎間板ヘルニアによって坐骨神経痛が現われていることを示しています。坐骨神経痛は椎間板ヘルニアでも脊柱管狭窄症でも両方とも現われますが、ヘルニアが原因の場合はお尻の外側や足の外側、つま先、かかとなどに症状が出る傾向があり、脊柱管狭窄症が原因の場合は、お尻の中央や足の内側、ひざ下全体に症状が出る傾向があります。このため、お尻や足のどの部位に症状が出ているかによって、ある程度腰痛の原因を絞り込むことが可能なのです。
●なぜこの症状が起こるのか
この方の場合、腰椎の椎間板の右側に小さなヘルニアがあって、右のお尻や右足方面に向かう神経を刺激していると考えられます。ヘルニアは前かがみ姿勢で悪化しやすいのですが、運転中はどうしても前かがみにならざるを得ないため、長時間ハンドルを握っていると、飛び出したヘルニアが神経に触れて、右側の腰や足に症状をもたらすことになるのです。
ですから、運転中の腰痛を防ぐには、姿勢やハンドルを握る時間に十分に気をつけることが大切になります。
●すぐに症状を軽減させたいときの方法は?
まず、運転時の姿勢ですが、シートをリクライニングさせて運転するのはNG。なるべくシートを起こし、骨盤をまっすぐ立たせ、背筋を伸ばしてハンドルを握るようにしてください。それと、シートが低いのもよくありません。座布団などを使ってなるべくイスを高くして運転するようにしましょう。さらに、坐骨神経痛がある人の場合、シートの座面が硬いとお尻やひざ裏が刺激されて症状が増す傾向があるので、お尻の下やひざ裏が当たる部分にやわらかいタオルなどを挟んで運転をするのもいいと思います。
また、症状を悪化させないためには、長時間の運転を避け、小まめに休憩をとることが重要です。休憩の際は、車から降りて体を伸ばし、軽いストレッチをするようにしましょう。 そして、この際にぜひ行なっていただきたいのが『仙腸関節ストレッチ』です。
これは、痛みがある側の腰を後ろから押して、固まってしまった骨盤の仙腸関節の動きをよくするためのストレッチ。これにより仙腸関節の動きがよくなると、腰椎椎間板にかかっていたプレッシャーが軽くなり、椎間板ヘルニアの症状が軽減されるのです。
私の患者さんの中にも、「このストレッチを行なうだけで、運転中の痛みやしびれがおさまる」という人が少なくありません。とくに長く運転する場合は、サービスエリアなどでの休憩時に必ず行なうよう習慣づけることをおすすめします。
【ココがポイント!】
運転時の腰痛に悩んでいる人は『仙腸関節ストレッチ』を習慣に
●仙腸関節ストレッチ
仙腸関節の調子を取り戻すための簡単ストレッチ。
外出先でもできるので、長時間の運転やデスクワークの休憩時、腰痛症状がひどくなったときなどに行なうのがおすすめです。
腰痛は、長時間同じ姿勢でいることで症状が悪化することもあります。
外出先でもできる仙腸関節ケアを、ぜひお試しください。
次回の更新もお楽しみに。