近年、患者数が増え続けている「脊柱管狭窄症」。腰痛の老化現象と言われているこの症状ですが、これまで定説とされてきた型通りの治療法・対処法では、かえって状態を悪化させてしまうこともあるそうです。
「予約の取れない治療院」として有名なさかいクリニック院長、酒井慎太郎氏は、人それぞれに自分のタイプに合わせて適切に治療をしていけば、脊柱管狭窄症は完治させることができるとおっしゃいます。新刊『脊柱管狭窄症は99%完治する』は、そのそれぞれの原因や自分でできるケア方法を、タイプ別に解説した一冊です。
その一部を抜粋してご紹介しますので、お心当たりのある方は、ぜひご一読ください。
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【腰痛ケース3】
歩き始めて数分もすると、足と腰がしびれてきます。
「私は健康のため、日々なるべく歩くように心がけています。ところが最近、歩き始めて数分も経つと、足と腰がしびれてくるようになってきました。右足にも左足にもジリジリとしびれる感じがあって、とくに右は痛いと思うくらいの症状があります。立ち止まって休んでいるとおさまるのですが、再び歩き始めると、やはりだんだんしびれてくる……。これがウワサに聞く脊柱管狭窄症という腰痛の症状なのでしょうか」(63歳・主婦)
【判定】
混合タイプの脊柱管狭窄症
ヘルニア5:狭窄症5
この方のように、足腰のしびれや痛みから、休み休みでないと歩けなくなる症状は『間欠性跛行』と呼ばれていて、脊柱管狭窄症の特徴的な症状のひとつとされています。
ただし、間欠性跛行は椎間板ヘルニアでも起こります。とくに、脊柱管狭窄症と椎間板ヘルニアの混合タイプの人は、歩行時に間欠性跛行が現われやすく、どちらか一方の足により強い症状を訴える傾向があります。この方も足のしびれ方からすると、おそらく混合タイプでしょう。
混合タイプで間欠性跛行が現われている場合、脊柱管狭窄症の症状が強いのか、椎間板ヘルニアの症状が強いのか、どちらなのかをよく見極めながら、治療を進めていく必要があります。そして、治療を進めながら、できるだけ〝歩くこと〟をやめないようにがんばっていかなくてはなりません。
間欠性跛行の症状は、「痛いから」「しびれるから」といって歩かずにいると、どんどん進んでいってしまいます。だから、「歩くことで治していく」というくらいの気持ちを持って、多少つらくとも日々歩き続けていく姿勢が求められるのです。
●なぜこの症状が起こるのか
背中を反らして歩いていると、どうしても脊柱管に圧がかかり、スペースが狭まって中の神経が圧迫されやすくなるもの。歩き続けるうちに足や腰がしびれてくるのは、基本的にこの神経圧迫が原因です。
ただし、それならば背を丸めて歩けばいいのかというと、そうでもありません。後でご説明しますが、私の長年の治療経験上、脊柱管狭窄症の人も〝なるべく正しい姿勢〟で歩くほうが治りが早いのです。とりわけ、脊柱管狭窄症と椎間板ヘルニアの混合タイプの人は、いい姿勢を意識して歩くほうがいい。症状がつらくなってきたら休憩を挟んで構いませんので、できるだけ正しい姿勢で歩くように普段から習慣づけてください。
●すぐに症状を軽減させたいときの方法は?
では、間欠性跛行が出ているときに、姿勢よく長く歩き続けるためには、どんなコツを身につけていればいいのでしょう。
こういう場合におすすめなのが『靴ひも&背伸びストレッチ』です。これは、歩き続けてしびれや痛みなどの症状が出てきたときの休憩時に行なうストレッチ。まず、いったん腰を落とし、片方の靴ひもを結び直すような格好をして十分に背中を丸めます。そして次に、体を起こし、天に向かって斜め45度の方向へ思いっきり体を伸ばすのです。
つまり、このように体を「丸める/伸ばす」を数回繰り返すことによって、脊柱管のスペースを広げ、神経圧迫をゆるめることができるわけです。体を屈伸させると足腰の血液循環が促されるので、この点もしびれや痛みを軽減させることにつながります。
私の患者さんにも、この『靴ひも&背伸びストレッチ』を取り入れたことで長く歩けるようになったという方が少なくありません。みなさんも、ぜひ試してみてください。
【ココがポイント!】
間欠性跛行がある人は『靴ひも&背伸びストレッチ』がおすすめ
●靴ひも&背伸びストレッチ
長く歩いていると、足腰がしびれて歩けなくなる……
ちょっと休むとまた歩けるようになる──
そういう症状を抱えてお悩みの方は、休憩時にこのストレッチを行なうのがおすすめです。
腰痛は、痛みがあってもできる限り歩くことが解消への近道です。
間欠性跛行がある方は、『靴ひも&背伸びストレッチ』を、ぜひお試しください。
次回の更新もお楽しみに。