近年、患者数が増え続けている「脊柱管狭窄症」。腰痛の老化現象と言われているこの症状ですが、これまで定説とされてきた型通りの治療法・対処法では、かえって状態を悪化させてしまうこともあるそうです。
「予約の取れない治療院」として有名なさかいクリニック院長、酒井慎太郎氏は、人それぞれに自分のタイプに合わせて適切に治療をしていけば、脊柱管狭窄症は完治させることができるとおっしゃいます。新刊『脊柱管狭窄症は99%完治する』は、そのそれぞれの原因や自分でできるケア方法を、タイプ別に解説した一冊です。
その一部を抜粋してご紹介しますので、お心当たりのある方は、ぜひご一読ください。
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【腰痛ケース6】
夜、腰が痛くて横向きじゃないと寝られないのですが……。
「腰痛が悪化してくると、夜、仰向けで寝ることができません。仰向けだと痛みがひどく、横を向いた姿勢でないと眠れないのです。整形外科を受診したところ、脊柱管狭窄症という診断。医師から『体を丸めたほうがいい』というアドバイスをもらったので、夜も横を向いて体を丸めて寝るようにしています。ところが、このところ、前よりも症状が悪化してきたような気がするのです……。いったいどうしたらいいのでしょう」(65歳・自営業)
【判定】
混合タイプの脊柱管狭窄症
ヘルニア5:狭窄症5
最初に言っておくと「体を丸めて寝たほうがいい」という医師のアドバイスは正しくありません。椎間板ヘルニアにしても脊柱管狭窄症にしても、腰痛を防ぐには仰向け姿勢で寝るのを基本にするのが正しいのです。
多少痛くても、腰のためには仰向けでまっすぐ寝るほうがいい。この方のように、体を丸めて横向きで寝ていると、かえって状態を悪くしてしまう場合もあるのです。とりわけ椎間板ヘルニアがあると、体を丸めた寝方は症状悪化につながりやすくなります。この方の場合も、おそらく脊柱管狭窄症という診断は出ていても、椎間板ヘルニアを合併している混合タイプなのでしょう。だから、横になって体を丸めて寝ているうちに症状をひどくしてしまったのかもしれません。
●なぜこの症状が起こるのか
「痛くて仰向けでは寝られません」と訴えている方に、「それでも仰向けで寝てください」というのは酷なことかもしれません。しかし、長い目で見れば、仰向けで寝るほうが、治りも早いし苦労せずに済むのです。
なぜなら、〝仰向け寝〟は、人間が寝る姿勢の基本形であり、荷重のかかり方がもっとも自然で負担が少ないから。専門的には『ゼロ・ポジション』というのですが、背骨や骨盤はもちろん、体の重みが各関節に正しく無理なくかかるのです。横向き寝になると背骨も曲がるし、骨盤の左右どちらかに体の重みがかかり、どうしてもアンバランスになって関節に負担がかかってしまいます。そこへいくと仰向け寝は、人体力学の点から言ってもバランスがよく、関節への負担がたいへん少ないわけです。
つまり、一時的に痛いのを我慢しなくてはならないとしても、「関節に無理のかからない正しい姿勢」で寝るのを習慣づけてしまうほうが、長い目で見ればおすすめなのです。
もちろん、寝ている間中、一晩ずっと仰向けでいなくてはならないわけではありません。寝返りは打っていいですし、むしろ、頻繁に寝返りを打って姿勢を変えるくらいのほうがいいのです。寝返りを打つと腰周りの筋肉を使いますし、体のバランスをよくする整体のような効果も期待できます。
ただ、いろいろ姿勢が変わったとしても、最終的には仰向けという基本形に戻ることが大事。私の患者さんにも、仰向け寝にしたことで脊柱管狭窄症の症状がラクになったという人が数多くいらっしゃいます。ぜひみなさんも仰向けを基本にして寝るようにがんばってみてください。
●すぐに症状を軽減させたいときの方法は?
どうしても仰向けになると痛いという場合は、就寝の際にうつ伏せ寝の姿勢からスタートすると、あとから仰向けになったときに比較的ラクになります。たとえば、ふとんに横になる際にまずはうつ伏せになり、枕部分にタオルなどを敷いてひじを立てて、スマホを見たり本を読んだりしてみてはどうでしょう。30分ほどこうしたポーズをとっていると、腰の筋肉が適度に伸展するため、仰向けになった際に腰に痛みが出にくくなるのです。
睡眠時の腰痛にお悩みの方は、実践してみるといいでしょう。
【ココがポイント!】
うつ伏せからスタートすると、仰向け寝がラクになる
●うつ伏せ寝
うつ伏せの状態でしばらくいることで、腰の筋肉が伸展し、仰向け寝がラクになります。
できれば睡眠時は、仰向けで寝ながらたくさん寝返りを打つのが理想です。
横向きでないと眠れないという方は、ぜひお休み前にこの『うつ伏せ寝』をお試しください。
『脊柱管狭窄症は99%完治する』からの抜粋は今回で終わりです。この続きは書籍でお楽しみください。