私が運営する、はぴきゃりアカデミー(女性限定のキャリアの学校)の受講生の中には、アナウンサーやファッションデザイナー、公認会計士、建築士、そして看護師など、一般的に人気職業と言われる仕事をしている女性たちも多い。
「気づいたらこの仕事してましたー」なんてことは、ほぼありえない仕事。つまり、なりたくて努力して勝ち取った仕事のはずなのに、モヤモヤしてしまうのはなぜなのだろうか。
職種とやりがいはイコールではない
答えは、やりがいとは職種名ではわからないものだからだ。同じ職種名であっても、会社規模や社風、扱う商品やサービスやその対象によって、仕事内容はまるで異なる。どんなになりたかった仕事でも、目の前の仕事内容が自分の価値観とずれていれば満足は得られにくい。
「営業」という仕事で考えてみよう。扱う商材が物なのかサービスなのか、顧客が法人なのか個人なのか、新規開拓がメインなのか既存顧客がメインなのかなど、営業と一口に言ってもそれを構成する要素によって、同じ「誰かに何かを売る」という目的であっても、仕事内容は千差万別であることは想像がつくはずだ。
仕事内容が違えば、当然得られるやりがいも変わる。それなのに「人と話すのが好き!」という理由だけで、とりあえず営業職に就くからややこしくなるのだ。お客さんと対面しない営業だってあるというのに。
自分のこだわりと仕事の間にズレを感じる 女子アナ・マミのケース
マミ(仮名)がアナウンサーを目指すきっかけとなったのは大学2年の時。同じ大学の先輩がアナウンサーに合格したことを知り興味を持った。実は小学生の頃に発音障害があり、話し方教室に通っていた時に「伝える」ことの楽しさを体感したことも影響した。
興味の赴くままに学業の傍らアナウンサー学校に通い、厳しい就活戦線を勝ち抜いてアナウンサーになった。就職したのは東日本大震災の爪痕が残る東北地方の放送局だった。大きな組織とは違い、原稿を読むだけでなく記者として取材に行くこともあり、次第に「伝えることで誰かの助けになりたい」という使命感を持つようになった。しかし、「言われたことをやればいい」という風土の中で、次第に組織とのずれが生じ始める。
アナウンサーとして、別の組織に移ることも考えてはみたが、なぜか違和感があった。そんなわけで、当校の門を叩いたのである。
講座を通じて彼女のこだわりを言語化していくと、「世の中へ向けて発信したい」「伝えることで、社会的に弱い立場にいる人や困っている人の力になりたい」「みんなで何かを成し遂げたい」という3つの軸が見えてきた。アナウンサーとして転職することに違和感を感じていたのは、伝えることは好きだが、本当に自分がやりたいのは表現することではなく、「みんなで何かを発信することで、困っている人の役に立つこと」だったからなのだと気づいた。
自分のこだわりが生かせる仕事を探す
自分のこだわりが見えたら早い。職種ではなく、3つのこだわりを実現できそうな仕事へのアンテナを張っていると、ほどなくとあるPR会社との出合いがあった。この会社が目指しているのは、送り手側の思いや情熱といった背景をストーリー仕立てにして発信することで意義ある商品やサービスを必要な人に伝えること。ここなら自分軸が生かせると感じて転職を決めた。
花が好きだから「花屋さんになる」というのは早計である。自分で飾るのは好きだが、それは自由にアレンジできるから楽しいのであって、実は人からのオーダーに応えるのが苦痛なのであれば、花屋で仕事をするのは辛いだろう。
「好きを仕事に」とは、ただ好きなことを仕事にするのではなく、自分の価値観=こだわりが生かせる仕事に就くことなのである。
7月3日公開の後編では、自分のこだわりを捉えるための3つのポイントを紹介します。
小さく働く。 戦略的キャリアダウンのすすめ
誰かの期待に応えるために、努力を怠らず働いてきた。それなりに評価もされているのに、自分に自信が持てない。仕事で幸せになれない。自分のやりたいことがわからない・・・。
働く女性に多い悩みの根幹にあるのは、「内的報酬」の観点が欠けていること。
日本初の女性向けキャリア転職情報誌の創刊編集長であり、働く女性10000人以上のキャリア相談にのってきた金澤悦子さんによる、女性が幸せになる働き方提案。