私が運営する、はぴきゃりアカデミー(女性限定のキャリアの学校)の受講生の中には、アナウンサーやファッションデザイナー、公認会計士、建築士、そして看護師など、一般的に人気職業と言われる仕事をしている女性たちも多い。
「気づいたらこの仕事してましたー」なんてことは、ほぼありえない仕事。つまり、なりたくて努力して勝ち取った仕事のはずなのに、モヤモヤしてしまうのはなぜなのだろうか。 好きを仕事にする際に気をつけたい3つのポイントをまとめてみた。
3つのポイントで自分のこだわりをおさえる
1.「モチベーション」軸を知る 看護師ナツコのケース
さて、自分のこだわりを言語化するには、3つのポイントで見ていくといい。1つは「モチベーション」軸。自分がどんな時にうれしい、楽しいと感じるのか、内側からエネルギーが湧き上がってくることは何なのか。これを知るのに、これまでに興味を持った職業はヒントになる。
ナツコ(仮名)は、看護師になって10年目に当校を受講した。それでわかったのは、単に人助けをしたいのではなく、「誰かを助けている人のケアをしたい」というモチベーションのスイッチだった。原体験は同じく看護師だった母親の姿。患者さんや先生のために働く母親を心から尊敬し、母親のような人たちを応援したいと思う自分に気づいた。
そんな矢先に病院内で看護師のキャリアデザインを支援する動きが盛り上がり、ナツコに白羽の矢が立つ。大学院に入り、看護師の生涯キャリアについて研究することになった。
ドラマの主人公の職業でも何でも、もしピンときたら、その職業の中に必ず自分の価値観がくすぐられる何かがあるはずだ。動機は必ずしも「人のため」である必要はない。当校の修了生にも「とにかく注目されたい」「自分が成長したい」というモチベーションスイッチに気づき、それを満たす行動を起こしたことで幸せに仕事をしている女性はたくさんいる。
2.自分の「強み」を教えてもらう 編集者アカネのケース
こだわりポイントの2つ目は「強み」である。アカネ(仮名)は雑誌の編集兼ライターをやっていたが、マタハラで失職。紙媒体が低迷する時代の中で、まったく違う分野の仕事に飛び込む覚悟で当校に入ったが、結果的には自分の最強の強みが「書く」ことであると気づいた。だってアカネは書くことがまったく苦にならないのだから。そこで、「アウトドア×子ども×食」という3つのこだわりを「編集&ライター」で串刺しにしたところ、ワクワクする仕事が次々に舞い込んでくるようになった。
アカネのように、強みというのは自分で気づくのが難しい。それは自然にできてしまうことであり、自分では「大したことない」と思っているようなことだからである。自分の本当の強みを知るには、誰かに聞くのが一番である。あなたは「そんなことか…」とガッカリしてしまうかもしれないが、その原石を光らせるも放り投げるもあなた次第である。
3.自分に合った職場の人間関係を考える ファッションデザイナーカナのケース
こだわりポイントの3つ目は人間関係である。どんな人たちとどんな風に働きたいか、自分が生きる人間関係を明確化しよう。
アパレル企業でデザイナーとして活躍するカナ(仮名)は幼い頃から「みんなと仲良くしなさい」と、ことあるごとに母親から言われていた。みんなが集まって何かをしていても、自分が興味がなければその輪に入らないからだ。母親に注意されるうち、いつしかみんなと仲良くできない自分は欠陥があると思うようになった。
はぴきゃりアカデミーでは、仕事に求める人間関係について大きく3つのタイプがいると考えている。タイプ1は和気あいあいとした雰囲気の中でみんなと一緒に頑張りたいグループ。タイプ2はそれぞれ持ち場があってマイペースに仕事をしたいグループ。タイプ3は一目置かれる場所で尊敬できる人たちと仕事をしたいグループだ。
研修で「モチベーション」「強み」「人間関係」の満足度について現状のスコアをつけてもらうと、タイプ2のグループに属している人は職場の人間関係が10点満点中1点でも、その他の項目が高ければ総じて仕事の満足度が高かったりする。
前述のカナはまさにこのタイプ。決して関係構築が苦手なわけではなく、自分がそれぞれの意志やペースを尊重したいタイプなのだと気づいて楽になった。
逆に、この状況がタイプ1なら、即刻病んでしまうだろう。仕事の満足度を上げるのに、自分にとって優先順位が高い項目が何かを知ることも大切なのである。
結論 好きを仕事にするべきか?
ちなみに、自分のこだわりを見つけて転職するばかりが幸せに働く方法ではない。アメリカの心理学者、アンジェラ・ダックワースが書いた『やり抜く力』(ダイヤモンド社)によれば、どんな職種でも業務を追加するなどの工夫をすることで、今の仕事を自分の「興味」や「価値観」に合うように変えることができると説く。このように、今の仕事が自分の価値観につながるように、ささやかで意義のある変化を起こす働き方を「ジョブ・クラフティング」といい、グーグル社の社員向けにワークショップを開催したところ、参加者の仕事に対する満足感と仕事の効率が著しく向上したそうだ。この考え方を取り入れれば、日曜の夜に憂鬱になることもなくなるはず。
SNSなどで「好きを仕事に」という風潮を疑問視する投稿をよく見かける。「仕事なんだから“好き”とか必要ない」「好きなこと、やりたいことを見つけなければいけないと煽るのはどうか」など。
確かに一理あると思う。しかし、それは「料理が好きだからフードコーディネーター」といった仕事の選び方を指している場合に限る。
だって、自分の価値観に合った仕事は苦にならないから続けられる。好きこそものの上手なれで成果も出やすい。何より、誰でも「こだわり」は必ずあるので、焦る必要は一切ない。
最後に、好きを仕事にするべきか? 私の答えは間違いなくこれだ。
YES!
小さく働く。 戦略的キャリアダウンのすすめ
誰かの期待に応えるために、努力を怠らず働いてきた。それなりに評価もされているのに、自分に自信が持てない。仕事で幸せになれない。自分のやりたいことがわからない・・・。
働く女性に多い悩みの根幹にあるのは、「内的報酬」の観点が欠けていること。
日本初の女性向けキャリア転職情報誌の創刊編集長であり、働く女性10000人以上のキャリア相談にのってきた金澤悦子さんによる、女性が幸せになる働き方提案。